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第9話 ダンジョン町へ出発




『ステータスデバイス』の取扱説明書を読んで、色々と操作していると俺の左隣から声をかけられた。


「本田さん、本田さん」

「……中川さん?」


そこにいたのは、中川明日香だ。

自分の座っていた席から椅子をわざわざ持って、俺の隣まで来ていた。


「ちょっと気になったんですけど、何故それで、バッグの写真を撮っているんです?」


どうやら俺が、自分のショルダーバッグに『ステータスデバイス』をかざしているところを見て、写真を撮っていると勘違いしたようだ。


「これ写真を撮っているわけじゃないんですよ。

この『ステータスデバイス』の取扱説明書に、無限鞄の表面についているこの魔石にかざすと記録してくれるんですよ。

そうすることで、この『ステータスデバイス』で位置を確認できるようになるんです」


俺は、取扱説明書に書かれていた情報を説明する。

この『ステータスデバイス』は、地球のスマフォを参考にしているだけあって結構便利にできていた。


自分のステータスを確認できたり、魔道具限定だが位置情報を確認できて、忘れ物を知らせてくれたり、あとは方角の確認や、ギルド登録証明カードの代わりになったりする。



後『ステータスデバイス』を確認したとき、俺のステータス表示の職業に『ガンナー』というのが記載されていた。

いったいいつの間に記載されたのか全く分からない……。


『ガンナー』とは、おそらく銃使いの事だろう。

スキルとかいまだに無いのに、職業だけが増えているとは……。



――――コンコンッ。


そうこうしているうちに、ドアがノックされ先ほどの女性が顔をのぞかせた。

教壇の前にいるグングニルへ、出発時間を知らせてきたのだ。


「よし!時間だ!

彼女の入ってきたドアから出て、お前たち七人で協力してダンジョン町を目指せ!

いいか?必ず、七人全員で行動するんだぞ?」


そう忠告して、俺たちにドアから出て出発するように促す。

俺たちは、もう一度自分の荷物などを点検し『魔導銃』を装備し外へ向かう。


外へ出るドアの前には、グングニルに時間を知らせに来たショートのかわいらしい女性が立っている。

着ている服は、銀行の受付の制服のようだ。



「こちらをどうぞ」


そう言って、ドアから出ていく俺たちに小さな布の袋を渡してくれた。

受け取って、中を確認するとお金が入っている。


「これは、初めてここに着た地球人に渡しているお金です。

銀貨五枚程度ですが、必要になるかもしれませんから受け取ってください」

「あ、ありがとうございます……」


そうお礼を言って、俺は右前のポーチにしまう。

そして、そのままドアを出て俺たちはダンジョンへと足を踏み入れた。




▽   ▽    ▽




地球人たち七人が出ていったドアが閉まると、講習会が行われた会議室にはグングニルと、時間を知らせに来た女性の二人だけになる。


「ようやく出発されましたね、マスター」

「ここではマスターと呼ぶなって言っておいただろう?」

「そうでしたね……」


グングニルは、ため息を吐いて教壇の上に置いていた資料をまとめる。

トントンときれいにそろえると、女性に渡した。


「拝見します。

……グングニル様、あと何組の地球人たちの講習会をなさるんですか?」

「あと一組で終わりだ。

さっきの組の時と同じように準備をして、人数がそろうまで待つだけ」


実は、このクレスバールのダンジョンには地球人が多く入ってきていて、本田誠司達を含め全部で百人を超えている。

一番長い間、この世界にいる地球人で六年目だ。


ただ、長い時間をこの世界で過ごすのと借金を返済し終わるのとはイコールではないし、まして大成しているというのも違うのである。


悲しいかな、この世界で地球人は『俺tueee』ができないのだ。



「ところでマスター、さっきの七人はどうです?

ダンジョンの最奥まで行けそうですか?」

「ケーニー、お前分かってて言っているだろう。

地球から来た異世界人たちは、必ず『三十階層』で何故かつまづく」


「まさに、魔の三十階層ですね」


ケーニーの嬉しそうな表情に、少し複雑な思いのグングニルは苦笑いを浮かべた。

そう、地球人たちは何故か三十階層から先へ進むことがない。


三十階層手前で、借金を完済しているからかと思ったが実はそうではないらしい。

二十九階層にある、ダンジョン町の探索ギルドに問い合わせてみたが、向こうも不思議に思っていたそうだ。


三十階層から先に行かない地球人たちに、何かあるのか聞いてみたことがあったが、なぜか全員口を閉ざす。

他の探索者は、つまづくことなく先の三十一階層に進んでいるのだ。


「なぜ三十階層から先に行かないのかわからんな……」

「う~ん、地球人にしか分からないものがあるのでしょうか……」


……二人で考えても、答えなど出てくるわけない。

グングニルは、そう思考を切り替えて次の講習会の準備をすることにした。


あいつらが進んでいけば、いずれ三十階層の謎もわかるかもな。


「ケーニー、いつまでも考えてないで荷物を持ってこい」

「ご心配なく、私の『アイテムボックス』に入れてあります」

「なら、それをさっさと出せ!」


グングニルがケーニーを叱り、慌てながらケーニーは『アイテムボックス』から物資を出していく。

次の地球人たちが、この会議室にそろうまでに準備を終わらせておかないとな。


ダンジョン探査で借金返済をしようとは、いったい誰が最初に考えたんだ?







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