第89話 参加の是非
「それで、どないする?」
探索ギルド近くで、女性陣と合流後近くの食堂へ移動しテラス席で食事をしながら話し合うことになった。
今回のギルドからの救援要請は、住民の避難誘導を手伝えというものだが場所はおそらくすでに戦場となっている街中だ。
「私たち『戦乙女の盾』は、参加するつもりよ」
「そらまた何で……」
「『ニベランチェ』には、私の妹が住んでいるんです。だから、何としても……」
ジャスミンさんは、パーティーメンバーの参加を表明。
高橋健太が理由を聞くと、パメラが自分の妹を助けるためと説明する。
もともと、パメラの妹はパメラと二人で冒険者をしていたそうだが、ジャスミンさんのパーティーに入ったことをきっかけに探索者へ鞍替えしこのダンジョンへやってきたのだとか。また、パメラの妹さんもパメラと同じようにこのパーティーに入ったが、戦闘で大きな傷を負ってしまい戦線を離脱。
今は、『ニベランチェ』の町にある『戦乙女の盾』の拠点の管理をしている。
「ジャスミンさんたちの拠点って、ダンジョンの外にあったんですね」
「ええ、ここに拠点を移すつもりだったんだけどいいのが無くてね。
ならば自分たちで作ればって考えて、もうすぐ完成ってところでこの件でしょ?
メリルも、こっちに呼んでおけばよかったわ……」
伊藤拓也が、ジャスミンさんの拠点がダンジョンの外に会ったことに驚いていると、ジャスミンさんからここに拠点を移すつもりだったことを聞きさらに驚いた。
あ、後、メリルという名前がパメラの妹の名前だそうだ。
「私たちはどうする?ギルドの要請に参加する?」
田辺美咲が、『魔導ガンナーズ』はどうするのか高橋健太に質問する。
リーダーの高橋健太は、まだ少し悩んでいるようで俺たちにも意見を求めた。
「みんなはどないや?参加したいんか?」
俺はその質問に、真剣に考えてみた。
まず、探索者ギルドの要請では、『ニベランチェ』の町で逃げ遅れている住民の避難を手伝ってほしいというもの。
戦闘に参加してほしいということは書いてないが、すでに街中でも戦闘が始まっているなら当然避難誘導している俺たちも戦闘に参加することがあると考えていい。
で、問題はここからだ。
俺たちは、敵といっても人相手に戦えるのかって話だ。
『ニベランチェ』の町へ攻め込んだガルシアラ公国軍の兵士たち。戦士や剣士、魔法使いに弓兵などなどいろいろな兵士が戦っているがガンナーはいないらしい。
まあ、ガンナーという職は地球人限定らしいからな。
この魔導銃も、もとは地球人の錬金術師が造り上げた物らしいし。そう考えると、市街戦で魔導銃を使っての戦闘となる。
「う~ん、市街戦か……」
「あ、あのさ、町の人たちが避難できるまで停戦ってできないのかな?」
「停戦?住民を避難させるために?」
「う、うん、どう、かな?」
恐る恐る質問したのは、杉本美月だ。
確かに、住民が避難できるまで停戦を話し合うのもいいだろうが、街中が混乱している今が攻め時と判断したのだろう。
相手側も、この機を逃せば援軍到着で負けてしまうかもしれない。だとしたら、ここは住民の避難を待つよりもせめて町を占領を選ぶか……。
「たぶん、それは無理ね」
「そ、そんな……」
ジャスミンさんが、杉本美月の意見をバッサリと切った。
そして、理由も俺が考えているものと大体一緒で杉本美月も落胆している。
すでに賽は投げられたのだ、後戻りはできない。
どうするべきか、悩んでいると見知った連中が探索者ギルドから出てきた。
「高橋さん、あの人たち……」
「ん?……あれって、杉本はんたちを捨てていったあいつらかいな」
「捨てていったって……」
高橋健太よ、他に言い方があるだろうに。
でも、確かに、あの連中は杉本麻美と杉本美月をこのダンジョン町で捨てたサバイバル仲間たちか。
あいつら、ダンジョンオオカミにボコボコにやられてから姿を見なかったけど、まだこのダンジョンにいたんだな……。
「いよいよ、俺たちの力が発揮される戦いだ。
市街地戦、魔導銃を持つ者にとってこれほど恵まれた戦場があるだろうか……」
「それに、傭兵として雇ってもらったしな」
「この支度金を使って、武器やらなにやら必要なものをそろえるぞ!」
「「「「おおっ!」」」」
食堂のテラス席にいた俺たちに気づくこともなく、連中は魔道具専門の武器屋へ走っていった。
今の会話から、どうやら連中も『ニベランチェ』の町の避難誘導に参加するらしい。ただ、戦闘する気満々のようだったが……。
「雇ってもらったって聞こえたけど、どこが雇ったんだ?」
「それに傭兵って……」
伊藤拓也と大塚詩織の質問は、エルフのナディアが答えてくれた。
「おそらく雇ったのは、フォルディール王国だろう。
王国には、奴隷に落ちたガンナーの部隊が存在するらしいしな。
それと傭兵は職種の一つで、金をもらって国の戦いに参加する者たちのことだ」
「ということは、あいつらガンナーとして戦争に参戦する気か」
「無茶なことを……」
俺があいつらの目的を察すると、伊藤拓也がつぶやく。
確かに、無茶なことだよな。
あいつらも俺たちも日本人だ。地球では、平和ボケの日本人といわれるほど戦争に疎くなった者たちだ。
そんな日本人が、ゲーム感覚で戦場に行ってみろ、大変な目にあってしまう。
物理的に大変になるよりも、精神的に大変になると思う。
俺も戦争に参加したことないし、戦場に立ったことすらない。だからこそ、戦争体験者たちの話を聞いて物理的よりも精神的に大変になるだろうと予想する。
……やはり、俺たちの参加は見送ったほうがいいかもな。




