第81話 戦い終わって
『ウォーターバースト』が命中すると、魔物のジャイアントダンジョンアケロンの全身が一瞬で凍り付く。
高橋健太の対物ライフル型の魔導銃から打ち出された、冷凍光線の余波で直接受けるよりも影響が大きかったようだ。
「凍ったで!」
高橋健太に言われるまでもなく、俺たちも確認する。
そして、完全に凍った始祖鳥もどきの魔物は、飛び上がった距離を勢いよく落下し地面に落ちて砕け散った。
砕け散った破片が散乱する中で、大きなエメラルドの魔石が現れると散乱する破片が光に変わり跡形もなく消えていく。
俺たちの中で、ボスを倒した喜びが湧き上がってくるが、それを現実に戻したのは田辺美咲の悲鳴だった。
「きゃあああ!」
「何や?!」
悲鳴の聞こえたほうへ視線を向けると、無数のダンジョンアケロンに攻め込まれて田辺美咲は魔物の攻撃をまともに受けて後ろに飛ばされたようだ。
「美咲ちゃん!」
「ダメ!これ以上は対処できない!!」
小西葵が田辺美咲を心配して叫び、中川明日香は休む暇なく攻撃していたが倒しきれないダンジョンアケロンが横を突破していく。
俺はすぐに、散弾銃型の魔導銃を向けて『ウォーターバースト』をまとまって襲いかかってくる魔物へ向けて撃ち込む。
『ギュゲエエェ!』
『ギャガアアァ!』
まともに受けた魔物は何体か衝撃を受けて倒れるが、所詮は勢いのある水に過ぎず、すぐに襲い掛かってくる。
そこで、俺は魔導銃の属性魔石を交換後、薬莢を交換し再び魔物へ向けて撃ち込む。
『『『ゲギャギャギャギャギャ!!!』』』
『サンダーバースト』を受けた魔物は、衝撃とも思える電撃を受け煙を上げてその場に停止し光とともに魔石に変わっていった。
だが、喜んでもいられない。
襲いかかってくる魔物は、次から次へと押し寄せてくる。
俺と高橋健太が戦闘に加わったことで、小西葵と中川明日香に余裕ができた。そこで、倒された田辺美咲の側へ近づく。
「美咲ちゃん、大丈夫?!」
「……だ、大丈夫。ジャスミンさんの支援魔法のおかげでね」
「よかった……」
小西葵が、田辺美咲の体を確認する限り骨折の類もないし、どこか傷を負っているわけでもないようだ。
本当に、魔物が衝突した衝撃で飛ばされただけのようで安心する。
「……」
「美咲ちゃん?」
飛ばされたときに手放してしまった自分の魔導銃を拾い上げると、すぐに弾倉を入れ替え戦闘準備を整える。
それを見て、小西葵が声をかけた。
「休んでいる暇ないよ、葵ちゃん。
みんな戦っているんだよ、動けるようになったんならみんなを助けなきゃ」
「美咲ちゃん……」
力強く言う田辺美咲に、小西葵は感心し賛同する。
「そうだよね、私ももう一度戦うよ!」
田辺美咲と小西葵はお互い頷きあい、魔導銃を構えみんなの元へ戻る。
その二人を、複雑な思いで見ていたのが中川明日香だ。
「若いっていいな……」
そうつぶやくと、自分の魔導銃の弾倉を変え準備を整えてみんなの元へ戻った。
今も襲いかかってくる魔物を倒しきるために……。
▽ ▽ ▽
「……終わった」
全員で戦ってわずか十分ほどしかたっていなかったが、戦っている俺たちには一時間程に感じていた。
おかげで、体力的にも精神的にもものすごい疲労感だ。
モンスターハウスの中はびっしりと魔石が転がっていて、まるで宝石の床があるようだ。それもエメラルドの宝石だ。
ダンジョンアケロンという始祖鳥もどきの魔物は、エメラルドグリーンの色をした魔石だった。
「つ、疲れた……」
「パメラ、ノエル、お疲れさま。二人のおかげで、かなり戦いやすかったわ。
クリスとアイリスもお疲れ。二人の魔法にも助けられたわ。
ナディアもの弓も、本当に助かったわ。お疲れ様……」
ジャスミンが、『戦乙女の盾』のメンバーに声をかけ労っていると、高橋健太も同じように俺たち『魔導ガンナーズ』のメンバーを労ってくれた。
「本田はん!ホンマありがとう。
本田はんの作戦がなかったら、今頃どうなっていたか……」
そう言って、俺の手を取りお礼と労いの言葉をかけてくれた。
確かに、ホッとするんだけどどこか大げさじゃないか?と思ってしまう。これは、言葉の違いからか?
少し休憩し、魔導銃の弾倉などを入れ替えて次に備え終えると、魔石回収の仕事が待っている。
無限鞄から、無限布袋を取り出すと地面に落ちている魔石を一つ一つ拾っていくのだ。
地面いっぱいに落ちている魔石を拾うのは、大変な作業ではあるがこの魔石一つ一つがお金に変わるのだと思うと、少しだけ体力が戻る。
最後に一番大きい、ジャイアントダンジョンアケロンの魔石を布袋に入れるとモンスターハウスの真ん中に宝箱が二つ出現した。
「宝箱が出現したということは、ボスクラスの魔物で間違いないようですね……」
「あれだけ大変だったんだもん、特別報酬が無いとガッカリしちゃうよ」
「みんな頑張ったしな……」
宝箱の出現に、ナディアが自分の持論に確信すると楓が文句を言う。
そして、伊藤拓也がみんなの戦いぶりを思い出し、一言呟いた……。
「……それよりも、あの見学者は何?」
「え?」
俺が、モンスターハウスの入り口を指さすとそこには、何人もの人がこちらを見ている。他のみんなも気づいていたようだが、あえて無視していたみたいだ。
本気で気づいていなかったのは、妹の楓だけのようだ……。




