第76話 戦力強化の名のもとに
探索者ギルドの会議室で、分配金を受け取りダンジョンの外から来る王女様一向についての諸注意を聞いた後、俺たちは魔導銃専門の武器屋に来ていた。
中川明日香たちの魔導銃を新調するためだ。
この間の、フレイムドッグ戦で考えたんだろう。自分たちには、圧倒的に火力が無いと。
「いらっしゃいませ~」
相変わらず、軽い店員のあいさつを聞き店内へ入る。
今回、中川明日香たちが購入する予定の魔導銃は、取り扱いがしやすく軽くて威力のあるものという条件があった。
その条件を満たすものをと考えるならば、短機関銃型の魔導銃がいいのではと勧めて、短機関銃型の魔導銃が並ぶ棚の前へ移動する。
短機関銃、所謂マシンガンというものだろうか?
両手で持ってダダダダッ!って感じか。
マフィア映画なんかでは、よく見る銃であるが取り扱いはどうなんだろうか?
魔導銃は基本、銃のような反動はない。
そのため、扱いやすいと言ったら、魔導銃のすべてが扱いやすいということになるのではないだろうか?
「どう?短機関銃型の魔導銃は」
中川明日香、田辺美咲、小西葵の三人は、いろいろな形の短機関銃型の魔導銃を、構えては感触を確かめ次の魔導銃に手を伸ばして選んでいた。
また杉本美月は、母親の杉本麻美に勧められた狙撃銃型の魔導銃のコーナーへ、母親と一緒に移動している。
母親と同じ魔導銃を試してみたいらしい。
妹の楓と大塚詩織は、最初にもらった自動小銃型の魔導銃のもっといいヤツを狙っている。とはいえ、貰った分配金も返済へ大半を回したおかげで選べる魔導銃も限られてくるだろうから、そういい物は選べないだろうな……。
高橋健太や長谷川大輝たちは、予備の弾倉型魔力タンクの購入だけで済ませるらしい。もっと今ある魔導銃を、使えるようにしたいんだとか。
「決めたわ、これにする。
これが一番取り扱いやすいし、戦えそうだもの」
「私も、これがいいわ」
「私も、これでお願いします」
中川明日香が決め、田辺美咲、小西葵が同じものを選んだ。
彼女たちが選んだのは、短機関銃型の魔導銃『МP5モデル』という比較的新しいもののようだ。
展示棚の説明書きにも、当店で制作者にお願いしたオリジナルだそうで下層のダンジョン町の魔導銃専門の武器屋でも扱っていないらしい。
「え~と、当店オリジナルの魔導銃!ブレット系魔法の魔法陣を刻印しているため、連射と威力は店長おすすめ!
予備弾倉を二十付けて、今なら金貨六十枚です!!」
俺が説明を読んで、中川明日香たち三人の顔を見ると、少し顔が青くなっているが購入の気持ちは変わらないようだ。
しかし、予備弾倉二十ついて金貨六十枚か。
周りの短機関銃型の魔導銃の値段を見ると、本当にお安くしてあるみたいだな。
その後、レジカウンターで支払いや取り扱いに関しての軽い説明を受けていると、店の前の通りが騒がしくなる。
このダンジョン町のどこにこれだけの人が、という人々が通りに集まり一台の馬車とその馬車の左右を走る馬に乗った騎士を歓迎していた。
「もしかして、あの馬車に乗っているのがギルドの言っていた王女様かな?」
「これだけの歓迎を受けているんだもの、間違いないわね……」
支払いと説明を聞き終えた、中川明日香が俺と一緒に通りの見える窓の前で人々の歓迎の中を走っていく馬車を店内から見ていた。
確かに、豪華な馬車だ。王族が乗っているって一目でわかるな。
「ね、お兄ちゃん」
外の大通りを眺めていると、俺の後ろから楓に服の端を掴まれて呼ばれる。
その表情から、何かお願いがあるのだろう。
「ん?どうしたんだ?」
「ちょっと、相談にのってほしいんだけど……」
「……分かった」
楓に案内され、俺は自動小銃型の魔導銃の並んでいる棚ではなく、自動拳銃型の魔導銃が並んでいる棚へ案内された。
そして、そこには大塚詩織もいて、俺に会釈する。
「で、どんな相談なんだ?」
「うん、実は私たちの今の戦い方を、いろいろ詩織ちゃんと話し合っていたんだ。
それで、直接攻撃をメインにするんじゃなくて間接攻撃をメインにできないかなって……」
「間接攻撃?」
魔導銃の攻撃は、ほぼ直接攻撃だ。
これで間接攻撃をと考えるなら、俺の持つ『壁魔法』とかを使ったものになるけど……。しかし、それは攻撃ではないしな……。
「あの、それでこんなものを見つけたんです」
「……これって!」
「はい、『空間ランス系魔法』の魔導銃です。
この魔導銃で撃った場所に、ランス系魔法を出現させる罠系の魔法だと思うんですけど……」
そう、これは罠系魔法の魔導銃だ。
罠系魔法の魔導銃で代表的なものは、落とし穴を作り出す魔導銃だが、これは地面から槍を出現させるものから派生したものだろう。
だが、これは……。
「だけど、これはかなり扱いの難しい魔導銃だぞ?
何せ、何もない空間に向かって撃てば射程距離いっぱいでランス系魔法が出現する。ほら、ここに射程調整のダイヤルまでついた代物だ。
……使いこなせるのか?」
大塚詩織は、頷いて答える。
楓は、俺たちのやり取りを見ているだけだが心配しているのはその表情から分かる。意外と友達想いなんだな。
「……で、相談というのは値段か?」
「はい、私の手持ちではかなり足りないものなので……」
「わ、私も貸せるほど、持ってないし……」
……はぁ、この魔導銃があれば戦力強化にはなるな。
しかも罠系の魔導銃なら、使いようがあるだろうし……。
「分かったよ、少し融通する。
その代わり大塚さん、ちゃんと使いこなすこと、いいね?」
「「はい!ありがとうございます!」」
楓と大塚詩織の感謝の言葉が、はもって響いた。




