第73話 実態
探索者の女性を襲っていた男たち三人を取り押さえ、ジャスミンがもっていたロープで縛って放置している。
「は、離せ!」
「ダンジョン内で何をしようが、自由なはずだろうが!」
「ク、クソッ!」
見張りとして、高橋健太と長谷川大輝が、自動拳銃型の魔導銃を持って立っていた。
俺と妹の楓、それに伊藤拓也の三人は、気配ゴーグルをつけてこの場所に魔物などが近づかないように探っている。
そして、後の女性たち全員で被害にあった女性のケアをしていた。
名前や何故ここにいるのかとか事情を聴きながら、なるべく優しく接している。
そんなみんなのやさしさに触れ、女性は泣き出すこともあった。
そんな光景を見ていると、ここに縛られて座らせている男たちに腹が立つ。
しかも、こいつらが、俺たちと同じ日本人だということも……。
「それにして、あんさんら何やらかしてんの?」
「……お前、関西人か?」
「そうや。それに、これでも三十四や。あんたらより年上やで?」
男たちは、高橋健太の見た目から二十歳そこそこだと思ったらしく、驚いている。
……実は、このダンジョンに来た時よりも俺たちは全員が若返っていた。
何故若返ったのかわからなかったが、仮説は立てられる。
それは、おそらくレベルで上がった体力が原因ではないかと思う。
それを証明するように、今まで出会った地球人の日本人が年下と思えるほど見た目が若かったのだ。
もちろん、限度はあるようだが若返ることは悪くはないように思えた。
「あ、あなたたちも、このダンジョンに来たなら、俺たちの気持ちもわかるだろ?借金返すために、毎回毎回魔物と戦って、魔石を集めて……」
「でも、魔石は安く買い叩かれるし、日々の宿代や食事代で全部飛ぶ」
「俺たち、ここに来て半年になるけど、借金どころか今の生活だって大変なんだ!息抜きぐらいさせろって思うだろ?」
……何言ってんだ、こいつら。
半年このダンジョンにいて、まだ借金を返済できていなかったのか?
変だな……。
「何言っとるんや、あんたら。
借金なんて、俺たちとうの昔に完済しとるで?」
「う、嘘だ!」
「……あんたたち、こっちに来て何年目だよ。
何年もこのダンジョンにいないと、完済なんて無理だろ……」
俺たちは、このダンジョンに来て約一か月ってところか。
でも、確かに完済するまで時間がかかるって、今まで知り合った人たちも全員そんなこと言っていたな……。
「それに、何だよその銃は……」
今度は、長谷川大輝が持っている散弾銃型の魔導銃に目が行ったようだ。
あからさまに、苦虫を噛み潰したような顔になっている。
「お前らだけ、チート武器でも貰ったんじゃねぇのか?
だから、借金も完済できたんだろ!」
「教えろよ!その銃の入手方法を!!」
……チート武器って、この世界にチート装備なんてあるのか?
いや、そもそも、俺たち地球人が装備できるチート武器が存在するかも怪しいんだが……。
「あんたら、何言うてんねん。
こんなもん、町の魔導銃専門の武器屋行ったら、ぎょうさん置いてあるがな……」
「あ、あんな高いもん、俺たちに手が出るわけないだろ!
お前らはどうやって入手したんだよ!盗んだのか?!」
「アホか!ダンジョン探索しとったら、宝箱見つけてそれで買うたんや!
盗んだりするかいな……」
そうか……。そういえば俺たち、ダンジョンの隠し通路をみつけては、そこにいた強い魔物を倒して宝箱に入っていたお金を手に入れていたな。
今考えてみれば、あれって毎回隠しボスを倒していたってことなのか……。
そう考えれば、あの宝箱の中身の金額にも納得だ。
「クソ!くそ!クソ!!……前はうまくいったのに……」
「……何やて?」
「前襲ったときは、うまくいったんだよ!
俺たちもこういうことでストレス発散しないと、精神がもたないんだよ!」
こいつら、前科があったのか?!
もう救いようがないな……。
「……サイテー」
楓も、今までの会話を聞いていたんだろう。
汚物を見るような目で、男たち三人を見ている。
そこへ、ジャスミンが近づいてきて高橋健太に声をかけた。
「ケンタ、私たちは彼女を送っていくわ。
彼女のパーティーが、この階層にいるみたいなの。事情を話して保護してもらうわ」
「ほんなら、俺たちはこの三人を探索ギルドに連行するわ。
確か、ダンジョン内での強姦は犯罪認定されるんやったな?」
「ええ、ギルドで犯罪奴隷に落とされて、強制労働五年だったはずよ。
報酬ももらえるはずだから、受け取るといいわ」
高橋健太は、よく知っていたな。ダンジョン内での犯罪でも奴隷落ちするって。
ギルドからもらった冊子を、よく読んでいたってことだな。
ジャスミンたち『戦乙女の盾』のメンバーが、被害女性を連れて行く。
まあ、『戦乙女の盾』は全員女性だから、被害女性も安心だろう。
で、俺たち『魔導ガンナーズ』は、この犯罪者三人を連れて戻ることに。
俺と高橋健太、伊藤拓也に長谷川大輝で回りを固め、楓たち女性たちには、魔物たちの相手をお願いした。
仲間の女性たちが、この犯罪者たちに危害を加えないようにするためにこの布陣にした。何せ、みんなの目が今にもこいつらをボコボコにしそうで怖いんだよな。
こいつら三人も、彼女たちのにらみに怯えているようだし……。
とにかく、何事もなくギルドに着けばいいのだが……。




