第69話 炎の魔物 下
『ガアッ!グアアァッ!!』
左後ろ足が完全に凍結し、動かせないフレイムドッグは高橋健太を睨みつける。
しかし、高橋健太はその睨みを無視して次弾装填のためか魔導銃の上にあった弾倉を外し、新しい弾倉を取り付け魔導銃から出ているレバーを手前に引く。
「ケンタ!来るぞっ!」
「大丈夫や!」
盾を構えたパメラの言うとおり、動けないフレイムドッグは口を開け炎を吐こうとするが、その前に右側から衝撃が腹部に当たり、叫び声が出てしまった。
『ガアアァッ!!』
よろけるフレイムドッグが、衝撃を与えた正体を見るため視線を向けた先にいたのは、魔導銃を構えた長谷川大輝だ。
ポンプアクションで次弾を装填しながら、側にいる俺に愚痴をこぼす。
「氷のドリルが効かないっス!どんだけ固いんっスか!」
「たぶん、着弾する前に少し溶かされたんだろ?
それよりも、高橋さんのその魔導銃、何ですか?!」
「これか?後で説明したるわ!
それよりも、たたみかけるでぇ!」
『フリーズチェーン!』
先ほどまで、伊藤拓也にポーションを飲ませていたアンジェラが地面を叩きながら魔法を唱えると、フレイムドッグの周りの地面から氷の鎖が飛び出し、フレイムドッグに絡みつき動けなくした。
「今よ!!」
動けなくなったフレイムドッグを確認したジャスミンの合図で、俺たちは一斉に攻撃する。それも全員が遠距離からの攻撃だ。
回復した伊藤拓也と長谷川大輝のドリル魔法は、高橋健太の冷凍光線で凍らせた左後ろ足に集中攻撃し、ヒビは入るものの砕くまでには至らない。
それほどまでに、三メートルはあるフレイムドッグは固いのか?!
さらに、ジャスミンの支援魔法で『戦乙女の盾』の物理攻撃者たちに氷属性の付与をしているが、それもフレイムドッグの堅い体に阻まれ、致命傷を与えていない。
中川明日香、田辺美咲、小西葵、杉本美月、鈴木桜子、楓、大塚詩織の七人の攻撃は、初期魔導銃のためダメージすら通っているようには見えない。
そんな状況を見て、手詰まり感を覚える俺は攻撃をためらっていた。
そこへ、俺の後方から乾いた衝撃音が聞こえた。
――――――パシンッ!
俺が振り返ると、そこには狙撃銃型の魔導銃を構えた杉本麻美が狙っている。
さらに、後方からフレイムドッグの叫びが響いた。
俺は再び、視線をフレイムドッグに戻すと血を吐きながらのた打ち回るフレイムドッグがいる。
何が起きたのか見逃してしまった!
しかし、この杉本麻美の一撃が切っ掛けとなり次々とみんなの攻撃が通るようになる。
高橋健太たちが攻撃していた左後ろ足が砕け、中川明日香たちの攻撃がダメージを与えるようになり、パメラとノエルの刃がフレイムドッグの喉を切り裂く!
ナディアの放った矢が、フレイムドッグの右目を射抜き大きくのけ反らさせる。
俺はここがチャンスとばかりに、フレイムドッグに近づき散弾銃型の魔導銃で『フリーズショット』を近距離から切り裂かれた喉めがけて撃ち込んだ!
甲高い破砕音を響かせ、フレイムドッグは一瞬動きを止めたかと思うと光に包まれ魔石へと変化していった……。
▽ ▽ ▽
所々焦げた服をそのままに、その場に座り込みようやく息をする。
ダンジョン三階層の地面は芝生の様になっているのに、なぜここは土がむき出しなのか?その答えは、あのフレイムドッグの炎によって焼かれたためだろう。
そんなことを考えていると楓と大塚詩織が声をかけてきた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「本田さん、何ともありませんか?」
最後の最後で、フレイムドッグに一番近づいた俺を心配して声をかけてくれたのか。
俺はゆっくり立ち上がると、笑顔で二人に答えた。
「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとうな」
「ほんまや、いきなり近づくんやから心配するがな……」
高橋健太が近づいてくると、その後ろから伊藤拓也とアンジェラさんが近づいてくる。さらに次々と俺の周りに近づいてきて、労いの言葉をかけてくれた。
そして、ジャスミンさんがフレイムドッグの魔石を持ち上げると、みんなの視線をくぎ付けにした。
「大きな赤い魔石ですね……」
「こんな抱えるほどの魔石が、ダンジョン三階層で手に入るなんて信じられないわ……」
見習い魔法使いのアイリスが、その大きさに感心していると、エルフのナディアが、信じられないと驚いている。
そこへ、ジャスミンさんの説明が入る。
「そうね、このダンジョンでフレイムドッグは三十二階層の魔物だからね。
通常のダンジョン探査で、こんな浅い階層で遭遇することはないわ」
そんなフレイムドッグを倒すことができた俺たちは、運が良かったのだろうか?
しかし、今は気になることがあるのだ。
俺は、二メートル近くある魔導銃を肩にかけた高橋健太に、その正体を教えてもらうべく近づいた。
「で、何ですか?その光線銃は……」
「光線銃っスか?」
「ちゃうちゃう、これは金貨八十枚もした対物ライフル型の魔導銃や!」
対物ライフル型?!
それで、二脚が付いているわけか。撃つ時も低く構えていたし、パメラさんの盾の後ろに隠れていたしな……。
「いやでも、冷凍光線って!」
「ああ、あれはこの魔導銃の特徴や。
通常はこの薬莢型の魔力タンクを使うんやけど……」
そう言って取り出した薬莢型魔力タンクは、単一電池二個分ぐらいの大きさだ。
俺たちの使っている、散弾銃型の魔導銃の薬莢型魔力タンクよりもデカい!
「魔力次第ではビームのように撃つことができるんや。
で、その時使ったんが、この弾倉型魔力タンクや。これ一つでビーム一発分や。何とも、贅沢な使い方やろ?」
詳しい説明を聞くと、この対物ライフル型の魔導銃は『線状放出系魔法』の魔法陣が刻まれているそうで、レーザーを撃てるように設計されたものだそうだ。
ただ、通常は光線銃のような短いもので、『アロー系魔法』の見た目と大差ないらしい。そのため、二種類の魔力タンクを使い分けることにしたそうだ。
しかし、これもまたロマン系魔導銃というわけか……。




