第66話 ドリル魔法
「詩織ちゃん!そっち、ゴブリン二匹行ったよ!」
「任せて!」
――――――パッ!パッ!パッ!パッ!
自動拳銃型の魔導銃を構えた大塚詩織は、四回引き金を引くと二匹のゴブリンの額と胸にそれぞれ『ファイアーアロー』を命中させ倒している。
ダンジョン三階層の床に倒れたゴブリンは、すぐに光り魔石へと変わる。
……さすがに、本場で訓練を受けた人は違うな。
「やったね!詩織ちゃん!」
「楓ちゃんも、一匹倒したじゃない!」
「えへへへ」
褒める大塚詩織に、褒められて照れる妹の楓。
これが、昨日、初めてゴブリンと戦い、キャーキャー言いながら怖がっていた二人とは思えない変わりようだな……。
今、俺たち『魔導ガンナーズ』と『戦乙女の盾』の合同チームは、ダンジョン三階層に来て探索を再開している。
「タクヤ、この壁何かありそうだよ」
「それなら調べてみよう。隠し通路があるかもしれない……」
アンジェラさんと伊藤拓也が、通路の壁を手で触りながら調べている。
『戦乙女の盾』のアンジェラさんは、いつもこうゆう探索を担当していたそうで、隠し通路などを見つけてはパーティーで調べていたみたい。
今回はそれに、伊藤拓也が付き合っている。
「ほんなら、俺たちは少し休憩といきますか」
「そうですね、今のうち休めるときに休んでおきましょう」
両パーティーリーダーの意見が一致したところで、一旦休憩となる。
俺は、その場に座り無限鞄から水筒を取り出すと一口ドリンクを飲んだ。するとそこへ、長谷川大輝が近づいてくる。
「お疲れさまっス、本田さん」
「長谷川君も、お疲れ。
それより、昨日の件でしばらく封印するの?」
「……あ、例の魔導銃っスか?『ドリル魔法』の」
昨日の魔導銃専門の武器屋で、伊藤拓也と長谷川大輝が購入した『ドリル魔法』の散弾銃型の魔導銃だが、どうしても試し撃ちがしたかったらしく、ジャスミンさんたちと合流して次の日の予定を決めた後、楓と大塚詩織の初戦闘を兼ねてダンジョンの二階層に潜ったのだ。
そして、ゴブリンとの初戦闘は、楓にはかなりのショックを与えたようで、ゴブリンを見てキャーキャー大騒ぎしたり、その他の魔物を見ては俺の後ろに隠れていた。
そんな楓とは対照的に、大塚詩織は訓練を受けていただけのことはあり、最初のうちはゴブリンに怖がっていたもののすぐに覚悟を決め、自動拳銃型の魔導銃で狙って倒した。
そんな大塚詩織の姿を見て、何かを感じ取ったのか涙目になりながらもゴブリンを自動小銃型の魔導銃で倒すことができた。
これで、楓も大塚詩織も次の日からの三階層は大丈夫だろうと思っていたのだが、問題が発生した。
それは、長谷川大輝と伊藤拓也の試し撃ちで発覚した『ドリル魔法』だ。
この『ドリル魔法』、どんな魔法か見ていた俺たち全員が驚いた。
何せ、撃った本人である長谷川大輝も伊藤拓也も驚いていたほどだ……。
魔物のゴブリンを五匹発見すると、まずは長谷川大輝の散弾銃型の魔導銃を構えて狙いを定め、引き金を引く。
――――――パシンッ!
すると、散弾銃型の魔導銃特有の何かを叩く乾いた音が発生し魔法が発動。
魔導銃の先端に魔法陣が浮かび、火炎放射器のような火が出現するとそれが渦を巻くようにドリルの形に変化する。
そして、その場で回転をし始め、ドリルの形が三角錐の形になったところで勢いよく相手に向かって発射した!
この間、発動からわずか一秒。
発射されたドリルは、敵の魔物であるゴブリンの腹に直径三十センチの穴をあけて貫通し、そのゴブリンの後ろにいたゴブリンの下半身を貫通、ダンジョンの地面に衝突して消えた。
まさに、一直線の攻撃だった。
この『ドリル魔法』には、驚かされる。
さらにひどかったのは、伊藤拓也の散弾銃型の魔導銃から繰り出される「ドリル魔法」だ。残ったゴブリン三匹に対して魔導銃を構えて引き金を引くと、魔法の発動の仕方は同じだったのだがドリルの大きさが違った。
長谷川大輝のドリルが、直径三十センチだったのに対し、伊藤拓也の発動したドリルは直径一メートルだったのだ。
これは俺の予想だが、込めた薬莢型の魔力タンクの大きさの違いと銃身に刻まれていた魔法陣の違いが、このドリルの大きさの違いだったのではないか、と。
結果、発射された『ファイアードリル』はゴブリン三匹の上半身を抉り取り、ダンジョンの通路の壁に衝突して消えた。
……音もなく、ゴブリンの下半身が倒れる様は、何だか怖かったよ。
そういったこともあり、『ドリル魔法』の魔導銃をどうするか、俺は長谷川大輝に聞いてみた。
「伊藤さんも長谷川君も、今日は使ってないみたいだからさ」
「無限鞄の中には入っているんスけどね、これ、使う相手を選ぶってわかったっスから……」
確かに、あのドリルをゴブリンに対して使うのは過剰すぎる気がするし、かといってオークジェネラル見たな魔物はもっと下層になる。
「……購入、早まったっスかねぇ」
「いくらしたんだ?」
「金貨六十五枚っス」
金貨六十五枚?!結構するんだな……。
俺が購入した散弾銃型の魔導銃、例の『ショット系魔法』の奴は金貨三十六枚だったから倍近いか。
薬莢型の魔力タンクの購入も考えたら、早まったとなるのか?
そんなことを考えていると、壁側から重い物が引き摺られる音が響いてきた。
音のした方を見ると、壁が右へゆっくりスライドしていくところだった。
「隠し通路を見つけたんか?!」
「高橋さん、アンジェと一緒に見つけましたよ!」
「アンジェ、よく見つけたわね!」
「私にかかれば、軽い軽い」
どうやら、伊藤拓也とアンジェラさんが隠し通路を見つけたようだ。
二人の近くにいた、高橋健太とジャスミンさんが近寄って二人を労っている。他のみんなは、戦闘準備をしながら集まり始めていた。
俺は立ち上がると、装備を確認し長谷川大輝と楓と大塚詩織に声をかけるとすでに準備を終えていた。
「それじゃあ、行こうか」
「オー」
「オ、オ~」
楓と恥ずかしがりながら大塚詩織が返事をして、長谷川大輝は頷くだけだ。
少しグダグダだが、俺たちも隠し通路へ移動しはじめた。




