第65話 ポンプアクションタイプ
妹の楓と大塚詩織を連れて、俺は魔導銃専用の武器屋の店内を歩いていると、散弾銃型の魔導銃の展示の前で、長谷川大輝と伊藤拓也が何やらもめていた。
「伊藤さん、こっちが人気あるっスよ?」
「いや、こっちのタイプの方がカッコよくないか?大宮さんたちはそっちのタイプだったけど……」
「映画とかだと、よく出てくるのはそっちのタイプなんすけど……」
二人の手元を見ると、俺も使っている中折れタイプの散弾銃型の魔導銃とポンプアクションタイプの散弾銃型の魔導銃を持っていた。
どうやら、どっちがカッコよく見えるかでもめているようだ。
「長谷川君、伊藤さん、性能で選んでないんですか?」
「あ、本田さん。それに、妹さんの楓さんに大塚さんも」
「……三人で店内を見て回っていたんスか?」
俺の後ろにいた楓と大塚さんが、軽く会釈してあいさつをする。
俺は、二人の手元を見ながら先ほどの質問を繰り返す。
「で、性能はいいんですか?」
「こっちの中折れタイプは、本田さんと同じ『バースト系魔法』の散弾銃型の魔導銃なんだよ。でも、同じものが二つあってもね……」
「そんなことないっスよ!
伊藤さんの持ってるポンプアクションタイプの散弾銃型の魔導銃は、『ショット系魔法』っス。射程距離が短いから、危険っス」
ショット系魔法か……。
『ファイアーショット』『エアショット』『ウォーターショット』など、ショット系魔法が発動しているところを想像すると、確かに近距離からが思い浮かぶ。
「……確かに、ポンプアクションタイプは近距離魔導銃な感じだな」
「そうっスよね!ほら、伊藤さん。こっちの中折れタイプにした方がいいっスよ」
「……そうか……」
残念そうに、ポンプアクションタイプの散弾銃型の魔導銃を棚に戻し、中折れタイプの散弾銃型の魔導銃を長谷川大輝から手渡される伊藤拓也。
そこへ俺の後ろから、楓があるアドバイスをする。
「そのポンプアクションタイプ?が欲しいなら、違う系統の魔法にしたらいいんじゃないの?」
俺と長谷川大輝に伊藤拓也は、なぜ今まで気づかなかったんだという驚いた顔で楓を見た。……そう、確かに系統魔法を変えれば済む話だ。
「何?……」
「いや、楓に気づかされたことに驚いている」
「お兄ちゃん、ひどい!」
むくれる楓を無視して、長谷川大輝と伊藤拓也はポンプアクションタイプの散弾銃型の魔導銃の棚をじっくり見ていく。
俺は、楓の頭を撫でて慰めながら二人の行動を見守った。
「あの、本田さん、これは何ですか?」
長谷川大輝と伊藤拓也の魔導銃選びを見ていると、棚を眺めていた大塚詩織がCの形をした物を手に取り俺に質問してきた。
「ああ、これはポンプアクションタイプの散弾銃型の魔導銃の弾倉だよ」
「……弾倉ですか?」
「例えばこの中折れタイプの散弾銃型の魔導銃は、この薬莢を一つずつ装填し、撃ち終わると自ら排出するけど、ポンプアクションタイプはこのポンプを引いて薬莢を外に出してしまうんだ。
これだと、薬莢を使い捨てにしてしまうだろ?」
俺は、ポンプアクションタイプの魔導銃に、展示されていたサンプルの薬莢を込めて実際にポンプを引いた。
さらにもう一度ポンプを引くと、魔導銃の上にある排出口から薬莢が排出され床に落ちる。
「……確かに」
「これを作った人の趣味かもしれないけど、薬莢を排出するところまでこだわらなくてもいいと思うんだけどね……。
で、このCの形をした弾倉を投入口と排出口に取り付ける……」
俺は魔導銃にある下の投入口からはめて、排出口にカチッと取り付けた。
「ほら、これで排出された薬莢は弾倉の中へ入る。さらに、排出された薬莢が新しい薬莢を中で押して装填できる。
この弾倉の中がすべて使用済み薬莢になったら、この弾倉をそのまま外して交換もできるわけだ」
「へぇ~、うまくできているんですね……」
大塚詩織は、C型の弾倉を手に取って眺めながら感心していた。
すると楓が、棚にもう一つのO型の形の物を指さす。
「お兄ちゃん、こっちは?これも弾倉なの?」
「ああ、それは排出した薬莢を回収する専用の物だよ。排出口にだけ取り付けて使う物だ。何でも、自ら薬莢を込めたい人専用だそうだ」
「へぇ~、いろんな人がいるんだねぇ~」
棚に並ぶ弾倉を説明していると、伊藤拓也と長谷川大輝が購入する散弾銃型の魔導銃を決めたようだ。
お互い、選んだ散弾銃型の魔導銃を見て、ニヤニヤしている。
「長谷川君、何だいその魔導銃は。中折れタイプじゃなく、散々反対していたポンプアクションタイプじゃないか?」
「伊藤さんこそ、ポンプアクションタイプはあきらめたんスか?」
「フフフ、これはね『ロマン系魔法』の魔導銃なんだよ。こんなものがここにあるなんて、驚いてしまったよ」
「俺もっス!つい手に取ってしまったっス!」
自分の手にある、散弾銃型の魔導銃を見ながらさらにニヤついている。
……それにしても、どんな系統魔法の魔導銃を選んだんだ?
「あ~二人とも、どんな系統の魔導銃を見つけたんですか?」
俺が気になって質問すると、長谷川大輝と伊藤拓也は俺を見てニヤリと笑みを浮かべた。何だか、ものすごく鬱陶しい!
「見てくれ!この魔導銃、『ドリル系魔法』の魔導銃だよ!」
「ドリルは男のロマンっス!
この魔導銃の引き金を引くたびに、ドリル系の魔法が飛んで行くっすよ……」
二人とも、魔導銃を握りしめながら妄想の世界へ旅立っていった。
でも、ドリル系魔法か。
この世界には、面白い魔法があるんだな……。
「楓ちゃん、ドリルってロマンなの?」
「さぁ~、でも威力はありそうな気はするね」
俺の後ろで、楓と大塚詩織が不思議そうに妄想している二人を見ていた。
確かに威力はありそうだし、購入を検討してみようかな……。




