第64話 初心者と魔導銃
「いらっしゃいませ~」
魔導銃専門の武器屋に入ると、いつものように女性店員に挨拶される。
ここに来るたびに思うのだが、カウンターにいる女性店員以外見たことないけど他の店員もいるのかな?
「ほんなら、それぞれで購入するんやで。時間は……そうやな、今から一時間後までにここに集合すること。ええな?」
「了解っス!」
パーティーリーダーの高橋健太の提案を聞き、最初に返事をした長谷川大輝はすぐに店内へ消えた。
……ほしいものがあるのだろう。
「……長谷川君は、ええわ。ほんなら解散な」
そう言われて、解散しそれぞれで店内を見て回りながら購入するものを決めることに。まあ、支払いは俺たちでするんだから、それぞれで買い物しろってことだな。
俺は、初心者の楓と大塚詩織を連れて店内を回ることに。
「へぇ~、すごい数の銃だね、お兄ちゃん」
店内をキョロキョロと見渡しながら、棚に並べられている魔導銃を見て驚いているようだ。確かに、店内の魔導銃の数や種類は目を見張るものがある。
「銃じゃなくて、魔導銃だけどな」
「……どう違うの?」
「ここにある魔導銃は、全部魔法を撃つための銃ってことだ。だから、俺たちガンナーは魔法使いに分類されるんだぞ?」
「へぇ~」
楓の奴、ちゃんとわかっているのか?
俺たちガンナーという職種が、魔法使いに分類されるってことは、魔法耐性がある魔物が天敵ってことになるんだぞ?
現に、魔法耐性を持ったダンジョンオオカミに苦戦させられたしな……。
「……」
「大塚さん、さっきから黙っているけどどうしたの?」
「え?ああ、すみません。ここに飾られている魔導銃の値段が……」
大塚詩織が、戸惑っていたのは魔導銃の値段か。
まあ、安いものでも今の大塚詩織の所持金では購入できないからな。俺も最初は、購入をあきらめたものだ。
「うわっ、高っ!
お兄ちゃん、金貨六十二枚ってぼったくり価格じゃないの?」
楓が、値段を見て眉間にしわを寄せて文句言っている。
「はぁ、あのな?楓。
ここに並んでいる魔導銃は、俺たち地球から来た者たち専用に作られたものなんだ。この世界で魔法を使うには魔力が必要だが、俺たち地球から来たものは魔力を固定されているため魔法を使うことができない。
そこで潜在魔力を使わないで魔法を使う武器が、この魔導銃というわけだ」
本来なら、魔法が使えない俺たち地球から来たものは、剣とかの近接武器を使って戦わなければならないが、地球から来たものは貧弱なので使えないそうだ。
さらに、身体強化魔法が使えないことで、鎧なども身に着けることができない。
そんな地球から来た者たちにとっての救世主が、ステータスデバイスを開発した人物だ。この人が、魔導銃を開発してくれたおかげでダンジョンで借金返済という事業が成り立つのだとか。
「……じゃあ、強力な魔導銃を使えば無双できるんじゃないの?」
「どうだろうな……。
そんな無双ができるような魔導銃は、一点物になるから注文品になるし、それにお金が滅茶苦茶かかるぞ?
たぶん、購入金額よりも返済金額の方が早く貯まるだろうな」
「……意味ないじゃん」
一点物の魔導銃は、強力な魔法を放つことができる魔導銃のことだ。
確か、『核爆発』クラスの『エクスプロージョン』の魔導銃を作ろうとして、注文者が見積金額を見て気絶したのは有名な話らしい。
まあ、注文者が地球人であることは間違いないが……。
「とにかく、アホなこと考えてないで、購入する物を購入しておくぞ」
「それで、何を買うの?」
「ホルスターだよ。自動拳銃型の魔導銃をもらっただろ?
それを普段から後ろの腰につけておいて、自動小銃型の魔導銃と合わせて使うんだ」
初心者はまず、戦い慣れることと撃ち慣れることから始めないと。
楓も大塚詩織も、まだ魔物との戦闘経験がないそうだからな……。
「ほら、どこホルスターがいいか選んで。大塚…さん……も……?」
「……詩織ちゃん?」
俺と楓が、ホルスターが並べられている売り場から後ろへ振り替えると、じっと自動拳銃型の魔導銃が並べられている棚を真剣に見つめる大塚詩織がいた。
そして、すっと手を伸ばし棚に飾られていた自動拳銃型の魔導銃を手に取ると、流れるような動きで弾倉の着脱をし、両手で魔導銃を構えた。
それは素人の動きではなかった……。
さらに、魔導銃を構えたまま視線だけを動かし、右へ左へと魔導銃を向ける。
大塚詩織、絶対どこかで銃の訓練を受けていたな……。
「ふぅ」
大塚詩織が構えを解くと、楓が拍手しながらほめたたえる。
「詩織ちゃん、すごいっ!かっこいい!!」
「あ、ありがとう……」
顔を真っ赤にして、照れる大塚詩織に楓は近づいた。そして、抱き着きキャーキャー喜んでいる。
「大塚さん、銃の訓練を受けたことがあるの?」
「昔、アメリカで一年だけですけど……」
「すごいすごい!詩織ちゃんがいれば、ダンジョンの魔物なんて余裕だね!」
俺は、楓のおでこにデコピンを食らわせる。
「!!……痛い」
「戦闘を人任せにしてどうする。自分の借金は自分で返済しないといけないんだぞ?自分で戦って、自ら返済金を稼げ!」
「……は~い」
まったく、こんなんで大丈夫か?
楓は額を抑えながら涙目だ。それを、大塚詩織が慰めているが……。
そういえば、大塚詩織も多額の返済金を背負っているんだったな。
楓とこんなに仲がいいのは、同じような理由で借金をしたから……か?




