第60話 訂正と収入
「お待たせしました。ようやく査定が終わり、換金させてもらいました」
探索者ギルドの会議室で、チーム名について話し合っているとオークの魔石などの戦利品の査定と換金を任せた受付嬢が入ってきた。
少し待たされたが、ようやく終わったようだ。
「え~と、まず宝箱に入っていた金貨ですが、全部で二千二十三枚ありました。
後ほど、魔石などの換金と合わせたうえで十七等分してお渡しします。
次に、同じく宝箱の中にあった『ジェネラルシールド』ですが、こちらは地上のオークションへの出品ということでしたので、二週間ほどお待ちください」
金貨二千二十三枚とは、かなりあったな……。
これを十七等分すると、一人金貨百十九枚。日本円にして、一千百九十万円。
俺の借金はもうないから、これはそのまま収入となる。
この世界では、日本の納税義務もないからウハウハだ!
……あれ?十七等分?
妹の楓と大塚詩織は、オーク戦に参加してないから分け前がないのは分かる。でも、そうなるとうちのチーム人数は十九人になるはず。
確か、二十人以上でパーティーからチームへと格上げされるらしいから……。
「あ~、ちょっといいかな?」
「どうかなさいましたか?本田さん」
「あのさ、俺たちチームに昇格されたって聞いたけど……」
今まで対応していた受付嬢の後ろに控えていた、新人の受付嬢のシアが前に出てきて俺の質問に答えてくれる。
「はい、『戦乙女の盾』と『魔導ガンナーズ』が合流しましたので、併せて二十人でチームへと昇格しましたが……」
「あと一人は?」
「……え?」
俺の一言を聞いたシアは、少し考えると、慌てたようにすぐにそばに置いていた白い箱を持ち操作する。
すると、人数が間違っていたことが判明。泣きながら俺たちに謝ることになった。
「すみません、スミマセン、すみません」
「ええよええよ、謝らんでも。間違いは誰にであるさかい……」
「す、すぐに修正しますので」
リーダーの高橋健太をはじめ、俺たちは責めることはなかったが、後で先輩の受付嬢かギルド職員には叱られるんだろうな……。
少しかわいそうなことをしたかな?と思うが、こういう間違いは指摘しておかないと後で、俺たちが痛い目を見るからな……。
とにかくこうして、俺たちは合流パーティーとしてダンジョン探索していくことになった。ギルドにあるチームショップの利用もできないとのこと。
残念、魔道具の『どこ○○ドア』欲しかったな……。
「コホン、気を取り直して査定の続きといきますね。
皆様が討伐され手に入れたオークの魔石ですが、全部で六百八十一個ありました。オークの魔石は、一つ銀貨十枚ですので全部で金貨六十八枚と銀貨十枚となります。
また、オークジェネラルの魔石は、一つ金貨六枚で買い取らせてもらいました。
通常、オークジェネラルは二十階層以下で出現する魔物です。
これからも、探索を続けていかれると格上の魔物と戦うこともあるでしょうが、必ず生きて帰ってきてくださいね。
逃げることも、選択肢の一つと考えてください」
……やはり格上の魔物だったのか。
今回は何とか勝てたけど、オークジェネラルが複数出てきていたら確実に死んでいただろうな……。
そう考えると、俺たちは運が良い方なのかもしれないな。
「では、皆様には十七等分したものをお渡しします」
オークとの戦闘のことを考えていると、受付嬢のシアがパーティーメンバーの一人一人に手渡しで換金したお金を渡している。
そして最後、俺に小さな布袋に入ったお金を渡してきた。
「チーム登録の件、すみませんでした。今後このようなことが無いように、しっかり頑張ります。では、こちらをお受け取りください」
チーム登録のミスを謝罪して、手渡してくれる。
シアっていい受付嬢になるといいな……。
俺たちに換金したお金を渡すと、シアともう一人の受付嬢は会議室を出ていく。
すると、すぐに妹の楓が俺に近づきお願いをしてきた。
「あ、あのさ、お兄ちゃん。……お金、貸してほしいんだけど……」
「装備品とか購入するお金だろ?」
「う、うん。……ダメかな?」
二十五歳の妹が、上目遣いにお願いごとか?
……まあ、装備品とかポーションとか必要経費は出すつもりだったからいいけど。
「必要経費は出すから、安心しろ」
「ホント?ありがとう、お兄ちゃん!」
「あ、大塚さんのも俺が出しますので……」
「え、そ、それは……」
大塚詩織は、焦りながらも断ろうと必死になっている。
過ぎた施しかもしれないが、これは必要なことなのだ。講習会で渡される銀貨五枚では、満足のいく装備品は購入できない。
だからこそ死なないための、先行投資と思って受けてもらおう。
「ダンジョン探査をすれば分かりますが、浅い階層でも格上の魔物が出てくることがありますので、これは死なないための先行投資です。
後で返してくれればいいので、受け取ってください」
俺のお願いを聞き、大塚詩織は考えて受けてくれた。
たぶん、そのうち返すと思うが今は死なないために、生き残るために必要なのだ。
「ほんなら、次の探索のための準備をしとこっか」
「了解っス!」
返事をした長谷川大輝以外は、頷いてその場で立ち上がり、会議室を出ていく。
今日は宿に帰り、明日、魔道具屋と魔導銃専門の武器屋に行かないとな。
探索者ギルドを出ると、辺りは夕方のように赤い。
ダンジョンの中、ということを忘れてしまいそうな雰囲気だよな……。




