第58話 新たな借金
ダンジョンの二階層へ続く坂道を登ってきた俺たちは、そのまま探索者ギルドへ向かうと、ギルド入り口で言い争っている人たちがいた。
身に着けている装備から、おそらく地球から来た人たちだろう。
男性十人と女性二人に分かれていたが、言い合っていたのはそのうちの三人だけのようだ。
「いい加減にしなさいよ?!ここでパーティー解散なんて、どういうことよ!!」
「そのままの意味だよ、ここで解散して組みなおすんだ」
「それでどうして、私たちが外されるのよ!」
言い合っていた男性は、言い合っていた女性の側にいたもう一人の女性を下から上へと視線を向けて、フンとバカにしたように笑う。
「その姿を見れば、戦力にならないってわかるだろ」
「人を容姿で判断するなんて……」
「それにだ、あんたらの借金も問題なんだよ!
何だよ、二人ともに二千万越えって!俺たち全員の返済額を合わせても、まだあんたたちの返済額の方が上じゃねぇか!」
そう言われると、今まで喋っていた女性は黙ってしまう。
その側にいた女性などは、下を向いたまま震えているようだ……。
「おい信也、もういいだろ。とにかく、あんたたちは別のパーティーに行ってくれ。ちょうど探索者ギルドに来たんだ、ここで探せば見つかるさ」
言い争っていた男の後ろから、別の男が言い争っていた男を止めるとさっさと男たちは探索者ギルドから離れていった。
後に残ったのは女性二人だけ……。
「何スか?あれ」
「どうやら、ダンジョン町に着いてすぐに解散してパーティーを組み直したようね。私たち親子の時と一緒……」
「……どうするの?高橋さん」
その光景を見ていた長谷川大輝が、状況が分からず仲間のメンバーに質問すると、杉本美月が、自分たちを捨てたときの光景を思い出したようだ。
そして、何とかならないかと中川明日香が、リーダーの高橋健太に聞く。
高橋健太が答えを出す前に、俺は二人の女性に近づいていった。
「……どうして、楓がこのダンジョンに来ているんだ?」
「!お兄ちゃん!?」
俺が声をかけた相手、それは言い争いをしていた女性で俺の実の妹の本田楓だった。
楓は、俺が声をかけると驚いて振り返る。
「……えっと、これは、ね……」
「楓さん、こちらは?」
「あ、えっと、私の兄の本田誠司。
で、こっちが、講習会で知り合った大塚詩織さん」
バツが悪そうに、視線を逸らす楓だったが、大塚詩織から俺のことを聞かれ紹介してくれる。
俺は、紹介に合わせて軽く挨拶をすると、大塚詩織は頭を下げて丁寧に挨拶をしてくれた。
「コレの兄の本田誠司です」
「初めまして、大塚詩織と言います。この度は、私のせいで妹さんにはご迷惑をおかけしまして……」
探索者ギルドの前で、立ち話もというわけでギルドに入り会議室を使わせてもらうことにした。
まあ、オークの魔石や宝箱の中身のことでギルドを利用する予定だったので、ついでに楓たちの話を聞こうというわけだ。
楓の話によると、今回一緒になったパーティー仲間の男性たちは、ダンジョン町までは講習会で言われたとおりにパーティーを組んでくれたが、そこで楓と大塚詩織の二名をパーティーから追い出したそうだ。
理由は、大塚詩織の体型ではダンジョンでの戦闘に不安があるからとのことだが、魔導銃での戦闘に体型が関係あるとは初耳だ。
それと、楓と大塚詩織の借金額が他の男性陣に比べ多すぎることらしい。
「そういえば、二人とも二千万以上あるって言ってたわね……」
「「……」」
田辺美咲が、男たちが言っていたことを思い出し質問するも楓と大塚詩織は黙ってしまう。
そんなに借金していたのか……って、ちょっと待て!
「楓、俺がこっち来てから借金はちゃんと返済したはずだよな?」
「……あ~、そうなんだけど……」
「訳を言え、怒らないから…。二千万以上の借金、どうしたんだ?ん?」
俺が睨むように、楓を見て質問すると視線を逸らしながら答えた。
「実は、さ。高校の時の憧れだった人に頼まれたの……」
「頼まれたって、何を」
「……連帯保証人、ってやつ……」
連帯保証人。
確か、債務者が払えなかったとき債務者の代わりに払わなければいけない人、だったか?よくテレビなんかで、連帯保証人になってしまい大変な目にあった人を紹介していたが……。
「いくらだ?」
「え?」
「いくらの連帯保証人になったんだ?」
「……三千五百万円、です」
楓は、泣きそうな顔でぽつりと額をつぶやく。
さらに聞けば、その憧れだった人は債権者に返済ができないことを告げたため、楓のところにその債権者がきたそうだ。
で、何とかしようと弁護士に相談した結果、俺と同じようにダンジョンを利用することになったとか……。
それと、楓の隣に座っている大塚詩織も同じような理由だそうだ。
まあ相手はそれぞれ違うようだが、楓が連帯保証人になるとは……。
とにかく、身内を放っておくわけにいかないので、リーダーにお願いすることにした。
「高橋さん、この二人、パーティーに加えてもらえませんか?」
「ええよ」
「……いいんですか?そんなにあっさりと」
承諾が、早かったな。お願いされるのを待っていたようだ。
「放っておくわけにもいかんのんやろ?
本田はんは頼りになる男や、その本田はんのお願いを無下にはできん」
「ありがとう高橋さん」
こうして、あっさりと楓と大塚詩織がパーティー入りを果たした。
……しかし、三千五百万の借金か。俺が少し肩代わりするか……。




