第56話 別れ?
「サクラコ、行っちゃうの?」
「ノエル……」
一番悲しそうに鈴木桜子に話しかけるのは、魔法剣士のノエル。
どうやら、一番仲が良かったようだ。そして、少し青い顔をしながら悲しそうにする魔法使いのクリスティーナとリーダーのジャスミン。
突然の鈴木桜子による、俺たちのパーティーへ入りたいという告白に困惑しているようだ。
まあ無理もない。そんなことを今のパーティーメンバーの前で言ったのだ、居心地が悪かったと言っているようなもの。
どんな考えで、こんな告白をしてしまったのか……。
「私、うれしかったよ。リーダーに拾われて、みんなとパーティーを組めて。
……でも、戦力としては役に立てなかった。
私は、ポーターとしてリーダーに拾ってもらえたんだもの。戦力は期待されていないってのは分かってた。
そんな私でも、戦ってみんなを守りたかった。でも、毎回毎回後方で、みんなに守られて何もできない……」
鈴木桜子は、ポーターとしてパーティーにいたんだな……。
みんなに守られているのが、申し訳ないと思えるようになったと。
「そんなことない!サクラコはちゃんと戦っていた」
「そうね、私はいつもそばにいたけどちゃんと戦っていたわね」
魔法剣士のノエルと、魔法使いのクリスティーナが反論する。
彼女たちは、特に鈴木桜子と仲が良くいろいろと面倒を見てきたのだろう。クリスティーナに至っては、アイリスという弟子がいる魔法使いだ。
弟子と同じように、鈴木桜子をかわいがっていたのかもしれない。
「サクラコ、見ている人は見ているのよ。
あなたが、私たちパーティーの一員になろうと努力していたことや隠れて特訓をしていたこととかね?
まあ、アレを隠れてとは言わないだろうけど……」
リーダーのジャスミンは、鈴木桜子のことを見ていたようだ。
それに気にかけてもいてくれたようで、他のパーティーメンバーとの仲立ちもしていたらしい。
「私は、サクラコがいてくれると嬉しい、かな~」
「今まで一緒にやってきたメンバーにいなくなられるのは寂しいな……」
「……」
戦士のパメラや猫獣人のアンジェリカ、それに見習い魔法使いのアイリスも寂しそうに鈴木桜子を見ている。
「どうするの?サクラコ。みんな、あなたがいなくなると寂しいって言ってるけど……。もちろん、私も寂しいわ。でも、それを決めるのはあなただからね?」
最後に、エルフのナディアが鈴木桜子に優しく語りかける。
「……ありがとう、みんな。でも、私は彼らと一緒に行きたいの。
今回の彼らの戦い方を見て、ますますその思いが強くなった。私の持つ魔導銃の使い方や他の魔導銃の存在。
私に足りなかったものが彼らにはある。だから、学びたいのよ……。
みんなを嫌いになって離れるんじゃないの……それだけは……」
「いいのよサクラコ、自分で考えたんでしょ?
なら、それでいいのよ。このダンジョンからいなくなるわけじゃないし、会おうと思ったらいつでも会えるでしょ?」
「リーダー、ありがとう……」
鈴木桜子が、ジャスミンと抱き合うと、魔法剣士のパメラと魔法使いのクリスティーナが鈴木桜子の左右から抱き着いてくる。
抱き合っている四人は、少し泣いているかな。
その光景を、温かいまなざしで見つめる残りのメンバーたち。
「高橋さん、彼女たちで話が進んでるっスけど……」
「俺たち、蚊帳の外やな……。
それに、鈴木はんを受け入れることで話進んでるし……」
ジャスミンさんたちのパーティーでの話に、俺たちは金色の宝箱を挟んで眺めているしかできなかった。
何か、俺たちが口をはさんでいい雰囲気じゃなかったしな……。
「まあ、それでもこのままというわけにはいかんやろ。
……ああ、ちょっとええか?」
俺たちのパーティーのリーダーである高橋健太が、ジャスミンさんたちのパーティーの話に入っていった。
「ああ、ごめんなさい、私たちだけで話を進めて……。それで、何?」
リーダーのジャスミンさんは、自分の目元を軽く拭って高橋健太の話を聞くようだ。
……泣いていたのか?
「そちらの鈴木桜子はんのことは、受け入れてもええけど、しばらくは俺たちと合同で組まへんか?」
「……合同って、パーティーを一つにするってこと?
それは構わないけど、いいの?仲間の意見を聞かなくて……」
高橋健太はそう言われ、一回俺たちの方を見ると右手を軽く振り答えた。
「ああ、かまへんかまへん。パーティーメンバーが増えるのは大歓迎やし、それにアレのこともあるしなぁ……」
そう言って指さすのは、オークジェネラルを倒した後に出現した金色の宝箱だ。
今の今まで、ジャスミンたちは忘れていたらしく思いだして驚いている。
「そういえば、今の今まで忘れてたわね……」
「……中身は何でしょうねぇ~」
「楽しみ」
ジャスミンさんが照れながら反省し、クリスティーナさんとアイリスが宝箱の中身を楽しみしている。
そして、再び全員が金色の宝箱の周りに集まると、猫獣人のアンジェラが宝箱を開けようと座り込む。
罠はないと思うけど、今回の宝箱には鍵がかかっているんだよね。
見た目は、江戸時代の錠前って言ったか?そんな鍵がかかっている。
「……アンジェラなら、こんな鍵は簡単に開けられると思うわよ」
「それは、大助かりやな……」
アンジェラは鍵を手に持つと、服のポケットから取り出した金属の細い棒でカチャカチャと鍵穴を弄りだした。
それを俺たちは、心配そうにアンジェラの後ろから眺めている。




