第5話 ダンジョンを利用した返済方法
「まあそう落ち込むな、魔法が使いたかったら『魔道具』がある。
それを使えば、色々と魔法が使えるぞ?」
「ホントっスか!それは楽しみっス……」
グングニルの励ましに、気分を向上させる長谷川大輝。
しかし『魔道具』ということは、戦闘で魔法は無理かもしれないな。
「とにかく『魔道具』のことは後にして、まずはダンジョンの説明に戻るぞ~。っと、その前にお前たちの手元にある『スマフォ』もしくは『スマホ』だな。
こっちでは、『ステータスデバイス』って名前があるんだが、まあお前たち地球人のおかげで、こっちでも『スマフォ』もしくは『スマホ』で通用するようになってしまった」
へぇ、ステータスデバイス。
通称『ステデバ』かな?いや『ステバ』か?
……『スマフォ』と呼ばれるようになって、良かったかも。
「……で、その『スマフォ』だが、あとで使い方を記した取扱説明書を配る。
ここを出発する前に、しっかり読んでおくようにな。
そいつは、ダンジョン探査には欠かせない『魔道具』になっているから無くすなよ?」
……自分のステータスを確認する以外に、何か必要なことがあるのか?
気になるのは、借金額が表示されていることぐらいか……?
う~ん、分からないな。
取扱説明書を見ればわかるだろう……。
「では、ダンジョン探査の講習を始める。
全員、ここが異世界であることはわかっただろう。
この世界には、二十三のダンジョンが見つかっており、その中の一つ『クレスバールのダンジョン』と呼ばれているのがここのダンジョンだ。
『クレスバール』とは発見者の名前だ。
呼びやすいようにダンジョンには発見者の名前を付けている。まあ、他意は無い。
で『クレスバールのダンジョン』だが、現在75層まで探索が終了している。
お前たちが、その先の76層の最前線にたどり着けるかは分からないが、まあ頑張ってくれ。一応期待しておこう。
それと、他のダンジョンでもそうだが、ダンジョンの中に町を作って探索者の支援や探索で手に入れた物資などを売買している」
「それって、ダンジョンの魔物を倒したりして手に入れるものなんか?」
そういえば、ゲームとかだと魔物を倒した後にアイテムとか落ちていることがあるな。
創作物なら、魔物を解体してとかあるし、この世界はどうなんだろう……。
「そうだ、ダンジョンの魔物からは主に魔石が手に入る。
それを集めて換金すれば、お金に変えることが出来るから、お前たちの借金の返済に充てるといい。
ダンジョンの魔物を倒せば倒すほど魔石が手に入り、借金が減るというわけだ」
……借金が減る、のか?
……いやいや、こんなうまい話には何かあるのが世の常だ。
リアルはそんなに優しい世界じゃない。
「……借金が減るっス……」
「頑張ろう、葵ちゃん」
「うん、美咲ちゃん!」
みんな、やる気が出てきたようだけど大丈夫なのか?
俺たちまだ、ダンジョンの魔物との戦闘方法も教えてもらってないんだぞ?
俺が注意しようとすると、高橋健太が先に声をあげた。
「自分ら、気が早すぎやで」
「……え?」
「「……」」
「グングニルはん、魔石の換金価格はどないなってんのや?」
高橋健太のその質問に、グングニルが今日一番の笑みを浮かべる。
まさに、悪人のニヤリって顔だ。
「よく気が付いたな。
そうだ、魔石にはどの魔物の魔石かによって価値が違っている。
だが、魔石の価値で最低の『ゴブリン』でも銅貨一枚の価値はある。何百匹と倒せば、お前たちの借金もすぐにチャラになるだろ?」
何百匹って……。
ダンジョンの中に、そんなに『ゴブリン』っているのかよ!
ていうか、ファンタジーの定番のゴブリンって、本当にゴキ○○並みにいるんだな……。
「……銅貨一枚を日本円にすると、いくらや?」
「ここでは、銅貨一枚は10円だな」
「「「「じゅ、10円?!」」」」
10円って、俺の借金を完済するにはゴブリン65万匹を倒さないといけないってことかよ?!
……いや、ダンジョンでの生活もあるし、そう簡単には計算できないか。
「ちなみに、銅貨百枚で銀貨一枚と交換だ。銀貨百枚なら金貨一枚。
でもまあ、ダンジョンの魔物は『ゴブリン』だけじゃない。
『スライム』『石狼』『コボルト』と10階層まででもかなりいるからな。
とくに10階層までにしかいないと噂の『クリスタルスライム』の魔石は、金貨十枚の価値があるらしい」
金貨10枚!
え~と、銅貨一枚が10円なら銀貨一枚は1000円。なら金貨一枚は10万円か。
で金貨十枚だから100万円!
……いやいや、噂の魔物だ。
俺たちが見つけられるわけない、ここは確実を取るべきだな。
「で、話を戻すがお前たちがここを出て最初に目指すダンジョン町は、ここを出てまっすぐ進んだ先にある。
スマフォで方角を調べながら進むといい。
途中で現れる『ゴブリン』は、戦闘訓練にもってこいだろうからな」
ダンジョンの魔物を倒し、魔石を手に入れ町で換金……あ。
「魔石の換金場所は?」
「おお、本田が気づくまで忘れてたな。スマン。
ダンジョンで手に入れた魔石は、ダンジョンにある町の『探索ギルド』で換金してくれるはずだ。お前たちが持っている『スマフォ』でギルドに登録後、換金してくれる。
その時、借金返済に充てるか、現金でもらうかはお前たちの自由だ」
危ない危ない。
魔石の換金方法や場所が分からないと、借金が減らないではないか……。
「さて、ダンジョンについてやこれからのことについては以上か?
……ではお待ちかね、お前たちのダンジョンでの戦闘方法についてだ!
もう気づいている者もいるかもしれないが、お前たちに魔法は無理。
なら、剣などの武器を、となるわけだがステータスにスキル無しとあっただろう?
スキルってのは経験だ。
才能云々じゃない。剣術を習ったこともましてや剣を振ったこともない奴が、いきなり剣で戦えるわけがない。
では、どうするのか……。
それの答えは、これだ!!」
グングニルが左手をあげて叫ぶと、会議室の左手にあったカーテンが勢いよく開く!
そして、そこの壁に飾ってあったのは俺たちも知っている物。
「「「「銃っ?!」」」」
……いや、俺たちの知っている銃じゃない!
これは銃口が無い!魔導銃かっ!