第41話 こんなこともあろうかと…
「「うわあああぁっ!」」
「「「きゃああぁっ!」」」
大きな音をたてて回転した壁が止まると、その勢いで俺たちは回転した先の地面に投げ出された。
勢いよく投げ出されたためか、パーティーメンバー全員が地面に横たわっている。
「いたたた……」
「ひどい目にあったっス……」
ゆっくり立ち上がる俺たちの目の前には、真っ暗な空間があった。
どのくらいの広さなのかも、天井の高さも分からないほどの暗闇。
俺がその暗闇を認識したとき、誰かが俺の左腕を掴んできた。ギュッと抱きかかえるように掴むその感触は柔らかい。
そして、次に背後から声が聞こえた。
「明かりを持ってくればよかったな……」
その声は、中川明日香だ。
彼女の声が俺の後ろから聞こえるということは、左腕を掴んでいるのは別の誰かか。
俺はこのまま何もできないと危険と感じ、無限鞄の中からある魔道具を取り出す。
それは、魔道具屋で万が一を考え購入していたものだがこんなことで役に立つとは。
「今明かりをつける。全員周りを警戒してくれ」
「その声、本田さんっスか?明かりがあるなら、お願いするっス」
電球のような魔道具を持って、でっぱりについているスイッチを押し込む。
すると、ぼんやり光だし俺の頭上にフワフワと浮かんでいく。
そして、二、三メートルほど上に上がると空中に停止し、さらに光が強くなりパーティーメンバー全員が確認できるほど辺りを照らしてくれる。
「眩し!」
「お母さん?!」
「え?」
辺りが照らされてようやく、俺の左腕に抱き着いているのが杉本麻美ということが確認できた。
あたふたと、顔を真っ赤にしながら杉本麻美は俺から離れた。
「ご、ごめんなさい!
み、美月と間違えて、怖くて、思わず側にいた人に抱き着いて!」
「あ、あの、き、気にしないでください。
あの暗闇では、しょうがないですから……」
俺もドギマギしてしまった。
で、その光景を見て、ニヤニヤする高橋健太と長谷川大輝。伊藤拓也は、何故か少し羨ましそうに見ていたが……。
「そんなことより!魔物の気配が近づいてくるよ!」
気配ゴーグルを装着している小西葵が、表示されている光を見て叫ぶ。
どうやら、この頭上の光に吸い寄せられてきたみたいだ。
全員が気を引き締め、魔導銃を構えていると、魔物が姿を現した。
身長が二メートルちょっとの二足歩行の豚の魔物、オークだ!
しかも、それぞれ服を着て棍棒を構えている。
『ブオ?』
『ブガアァ!』
先に来たオークは、俺たちよりも光の正体が気になるのか上を見上げ、後ろから来たオークが、俺たちの姿を発見し雄叫びを上げる!
その叫びに驚き、俺たちは一斉射!
すると、後ろのオークが手前のオークの影に素早く隠れ俺たちの一斉射を逃れた。そして、全員が弾切れになると手前のオークの影から飛び出し、俺たちに襲いかかる。
「なっ!味方を盾にするんか?!」
「ま、まずい!弾倉の交換が!!」
俺は、すぐに左手で腰の後ろにあるホルスターにしまっていた魔導銃を取り出す。
それは、『壁魔法』の魔法陣が刻まれた自動拳銃型の魔導銃だ。
これで時間稼ぎを!と魔導銃を撃ち、オーク二体の目の前に壁を作った。
大きな衝突音に驚きつつも、俺たちは急いで弾倉を交換する。
「ナイスや、本田はん!」
「助かった!」
そして、再び魔導銃を構える俺たちの前で、再び大きな衝突音が何度も響き二枚の土の壁が粉砕された。
「今や!」
そして、再びの一斉射で手前にいたオークが光とともに消えた。
何とか倒すことができたようだ。
だが問題は、後ろのオークだ。さっきから、こちらの攻撃方法を観察していた。
『ブルル……』
鼻息荒く鼻を鳴らすと、手前のオークが消えるとともに襲いかかってきた。
俺たちが一斉射で、再び弾切れになったことを確信しての攻撃だ。
再び慌てだす俺たち、そして、壁を作ろうと魔導銃を構えると通路の横幅いっぱいを使ってジグザグと走りながら向かってくる。
「こ、これでは……」
これでは、オークの目の前に壁を作ることができない。
万事休すと覚悟した瞬間、オークの顔の額にいくつもの『ファイアーアロー』が突き刺さった。
撃ったのは、中川明日香と杉本麻美だ。
オークは向かってくる勢いのまま、光に包まれ消え魔石だけが転がってきた。
……危機は脱したようだ。
「……た、倒せた」
「……はぁ、はぁ、はぁ」
中川明日香と杉本麻美は、へなへなと力が抜けるようにその場に座り込んだ。
その二人に勢い良く抱き着いたのが、杉本美月と田辺美咲の二人。
「お母さん!」
「明日香さん、ありがとう!」
それから、二人の周りにパーティーメンバー全員が集まり、それぞれでお礼を言った。弾倉一つを丸々使っても倒せなかったオーク。
狙った場所が悪かったにしても、弾倉一つは使い過ぎだ。
動けない中川明日香と杉本麻美を、他の女性陣に任せて、俺たちはオークの魔石を回収してこの隠し部屋か通路か分からないので、調べ始める。
へたり込んでいた二人が立ち上がれるまで回復したころ、この場所が隠し通路であることが分かった。
真っすぐ続いていて、かなり奥まで延びていることが分かった。
が、その前に、オーク二体を視認できた場所に宝箱が出現していた。
「これ、オークを倒せたから出現したのか?」
「おそらく、そうだと思うわよ」
宝箱の周りに全員集まり、どうしようか話し合う。
……まあ、開ける以外ないと俺は思うけどね。




