第40話 回転
次の日、俺たちはダンジョン二階層で戦っていた。
前回のように、全員が『気配ゴーグル』を使わないように、今回は制限時間を設けての交代制とした。
「右から魔物が三体来ます!
移動速度から、ゴブリンと予想します!」
「了解や。杉本はん、本田はん、小西はん、頼むで」
俺たちは、その場に止まり高橋健太の指示で魔導銃を構えて魔物を待つ。
すると、予想通りゴブリンが右側の通路から姿を現すが、相手のゴブリンはまだこちらを認識していない。
―――――パパパッ!パパパッ!
―――――パッ!パッ!パッ!
俺と小西葵は、自動小銃型の魔導銃でゴブリンを打ち倒したが、杉本麻美は、自動拳銃型の魔導銃でゴブリンを打ち倒す。
「フゥ……」
「杉本さんは、自動拳銃型の魔導銃を使うのですか?」
「あ、はい。この魔導銃が使いやすいし狙いやすいので」
確かに、両手で魔導銃を持ち、よく狙って撃っている。
二階層に入って一時間くらいになるけど、外したところは見たことないな。
「油断しないで!次、左から五体の魔物が来ます!
移動速度から魔物はゴブリンと思えるけど、一体だけ移動速度が速い!」
「了解、長谷川君、田辺さん、美月さん、構えて!
高橋さんと杉本さんは援護を!」
今回は高橋健太ではなく、伊藤拓也の指示にみんな従って動く。
長谷川君たちが、左から来る魔物に対して自動小銃型の魔導銃を構えると、その三人の後ろに、高橋さんと杉本さんが援護のために魔導銃を構える。
魔物が姿を現すまでの間は、何とも言えない緊張感が漂う……。
そして、報告にあった一体だけ移動速度が違う魔物が姿を見せた。
「あれは!コボルトや!」
犬頭と呼ばれる魔物、コボルトが四足で走って向かってくる。
武器である槍は、背中に背負っているようだ。
そして、コボルトもこちらを確認すると二足で走り出し、背中の槍を構えて襲いかかってくる。
だがその時俺は、あの噴水の場所で現れたコボルトとは、若干動きが鈍く感じてしまった。
―――――パパパッ!パパパッ!
三人が一斉に魔導銃の引き金を引き、コボルトはあっさりとその姿を魔石へと変えた。少し呆気なく感じるも、すぐに今度はゴブリン四体が姿を現す。
『ギゲェェ!』
何かゴブリンが悲痛な叫び声をあげたような気がした。が、それを気にしている場合ではないので、三人は再び引き金を引く。
―――――パパパッ!パパパッ!パパパッ!
―――――パッ!パッ!
――――――パパパッ!パパパッ!
襲いかかってきた四体のゴブリンを、長谷川大輝と田辺美咲と杉本美月が打ち倒すも、一体のゴブリンが弾幕をすり抜けて近づいてくる。
だが、援護は万全だ。すかさず、杉本麻美と高橋健太が引き金を引き、すり抜けて襲いかかってくるゴブリン一体を打ち倒した。
「……大丈夫、今のところ反応はないわ」
「よっしゃ、戦闘終了。お疲れぇ~」
気配ゴーグルをつけた、中川明日香に魔物の反応を調べてもらい、襲いかかってくる魔物はいないと分かると高橋健太が戦闘終了を宣言した。
これでようやく、緊張が解ける。
俺は、ホッと一息はくと自動小銃型の魔導銃の弾倉を取り替える。
「あ、私も弾倉を変えないと……」
「俺もだ……」
その場にいた、中川明日香を除く全員が弾倉の交換をする。
ダンジョンでは何が襲いかかってくるか分からないので、交換できるときに交換しておくのが鉄則なのだ。
「ほんなら、進むで」
魔導銃を撃っていない中川明日香以外の弾倉交換が終わると、リーダーの高橋健太がダンジョン探索を再開する。
そう、俺たちは魔物と戦うためにダンジョンに潜っているわけではない。ダンジョンの探索をするために潜っているのだ。
もしかすれば、あの噴水の場所にあった宝物のように、まだ発見されていない宝物があるかもしれないのだ。
慎重に進むこと二時間、気配ゴーグルでの気配察知を中川明日香から代わった小西葵が通路の途中で立ち止まる。
ここは前へ進むだけの一本道だが、何か発見したのか?
「……あれぇ?変、です……」
「どうしたの?葵ちゃん。何が変なの?」
小西葵の呟きに、隣を歩いていた杉本美月が声をかける。
歳も近いせいか、田辺美咲と小西葵は杉本美月と友達になっていた。
「ここ、ここの壁の向こうに魔物の気配表示が出てるの。
二体だけの気配表示なんだけど、変だよね?ここ壁なのに……」
確かに、小西葵の指さす先には、壁しかない。しかも、この第二階層特有のレンガでできたような壁だけだ。
俺たちは、小西葵の周りに集まり、壁を見つめて考え込む。
「……もしかして、隠し通路があるとか?」
伊藤拓也が発言する。前あった、モンスターハウスの入り口っていう罠か?
でも、モンスターハウスなら魔物の気配はすごい数表示されるよな……。
俺が壁に近づき、あちこちをペタペタ触る。
壁から離れていたみんなに緊張が走る。もしかしたら罠が発動するかもしれないからだが、モンスターハウスでないならたいしたことはないだろう。
壁をあちこち触ってみるが、何も起こらなかった。
「何も無いみたいだな……」
「自分、勇気あるな。罠の可能性を考えんのか?」
「本田さん、勇気あるっス……」
高橋健太と長谷川大輝が何か言っている。
そういえば、モンスターハウス以外にも罠は存在していたんだった……。
自分の思慮の無さに顔を青くしていると、いきなり勢いよく、調べていた壁が忍者屋敷の回転壁のごとくみんなを巻き込んで回転した!




