表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/201

第4話 地球人の足枷




「待て待て、そう睨むな。

何もこれからすぐ向かってもらうわけじゃない。

この講習会を受けてからだ。

知識も装備もない奴らを、ダンジョンに放り込むことはしないから安心しろ」


……さ、最初のクエストを話しただけか。

この講習会が終わって俺たち八人が、まず何をするかってことか。


周りを見れば、俺以外もホッとしているようだ。



「ではまず、君たちの誤解を解いておこう。

君たちの中には、ここが地球の日本にあるどこかだと思ってはいないか?」


ん?あの店から扉一つ入った場所だから、雑居ビルの一室じゃないのか?

グングニルのその言い方だと……。


「もう察しがいい奴もいるな。

そうだ、ここは地球ではなく別の世界『異世界』だ。

だから………こんなふうに、魔法を使うことができる」


そう言うと、グングニルは右手のひらから光のボールを出した。

あれは多分、ファンタジー物の創作物に出てくる『ライトボール』とかいう光源だろう。


暗い場所では重宝する魔法だったか……。


「……つまり自分たちの入ってきた扉が、この世界への入り口ってわけか?」

「正解だ。高橋は呑み込みが早いな」


グングニルは光のボールを消すと、高橋健太に笑みを向けた。

……たぶん、褒めているのだろう。だが、もともとの顔が貫禄があるため少し怖い。


「あの、私たちも魔法が使えるんですか?」


少し遠慮がちに、小西葵が小さく手をあげて質問する。

でも、それは俺も聞きたいところだ。


グングニルは、俺たちにニヤリといやらしい笑みを向ける。

もったいぶらずに教えろよ!


「……残念だが、地球から来た人で魔法が使えた者はいない。

おそらくだが、地球の魔素が薄いせいでもあるのだろう。こちらの世界の人のように、生まれたときから魔素に触れてきてないため、体が魔法を使えるようにできていないらしい。

……だがまあ安心しろ、地球人も弱いとはいえ魔力はあるからな」


「……魔力があるなら、魔法を使うことができるんじゃないの?!」


小西葵の隣に座る、田辺美咲が少し強く抗議する。

確かに、魔力があれば魔法は使えると考えると思うが……。


「フム、みんな納得できないって顔だな。

……実際見てもらった方が早いか。どうせ、渡さないといけないものだしな」


そうグングニルは言うと、教壇の中から木箱を取り出した。

……あれって魔石が入っていた木箱、ではないな。

大きさが、こっちの方が二回りほど大きい。


「今から君たち一人一人に配るから、受け取ったら画面に手のひらを当ててくれ」


そう言って俺たちに近づき、中川明日香から順番に配り始めた。


「え?」

「これって……」

「うそ!」


何か、見たことあるようなものを配っているような……。

そして、俺の前にもそれが配られる。

それは今の時代、おそらく誰もが一台は所有している見慣れた物。


「ええ?」

「おいおい」

「なんや?」


みんな驚くもの無理はない、それはどこからどう見てもスマフォそのもの。


「行き渡ったら、画面に手のひらを置いて登録しろ?」

「グングニルはん、これスマフォちゃうの?」


「まずは、手のひらを置け。

それと、スマフォに似ているのは当然だ。

それを参考にして作った『魔道具』だからな」


グングニルは、まず手のひらを置いて登録しろと注意する。

そして、高橋健太の質問に答えた。


とにかく、グングニルが手のひらを置けというのだから、まずは画面の上に手のひらを置く。

しかしこの画面の部分、ガラスじゃないな。

感触が違う、どちらかというとプラスチックに近いかも。



『ピロリン♪』

軽い電子音とともに、スマフォが起動する。

そして画面には、俺のステータスが映し出されていた。


名前 本田 誠司

性別 男

年齢 32

職業 -

レベル 1

体力 89

魔力 15(固定)

スキル -

借金額 6,500,000円


…………何これ。

借金額?レベル?スキルがない?!

体力低くないか?!何、魔力固定って!!



「全員の音を確認したから、今それぞれのステータスが画面に出ているだろ?

そこに、魔力が表示されているはずだ。

魔力はそれぞれで数値は違うが、固定は地球人だからみたいだな。

昔、何故固定なのか研究した奴がいたが、そいつが出した答えがさっきも言った『体が魔法を使えるようにできていない』ってことだ。

魔法を使うためには、魔力が最低でも百は無いと発動させることもできないらしいぞ」


……なるほど、おそらく魔素を大量に取り込むことが出来ない体ってことなのだろう。生まれたときから大量の魔素にさらされて成長していないから……。


俺は、自分の表示されたステータスを見ながら、少し落ち込んだ。

魔法は使ってみたかったな……。



「本田さん、本田さん」

「……はい?」


俺の隣に座る長谷川大輝が声をかけてきたので、そちらに顔を向けると、高橋健太と伊藤拓也も俺の方を向いていた。


「本田さん、魔力の数値、どれくらいっスか?」

「魔力?俺は十五だったけど?」

「うわ、男性陣で俺が最低っスか~」


そう言って、残念がる長谷川大輝。

高橋健太と伊藤拓也は、ニッコリ笑顔になった。

……なるほど、俺よりも上ってことなのか。


女性陣も気になったので見ると、全員笑顔だった。

……レベルが上がったら増えないかな?


「グングニルさん、レベルが上がっても魔力って増えないんっスか?」

「残念だが、増えないみたいだな。

君たちの先輩の地球人たちも、どんなにレベルが上がっても固定は取れなかったみたいだからな……」


「そうっスか……」


長谷川大輝が、目に見えて落ち込んでいる。

残念だ……。


「でも、体力は増えるんですよね?」

「おう、体力はレベルごとに上がるぞ。

上がる数値は、今表示されている基本数値にレベルをかけた数値みたいだな。こちらの人のレベル一での平均が百前後だ。

今百ないものは、運動不足ということだ」


ということは、俺運動不足だったのか……。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 気になるところは主人公がステータスを見た時に体力低っ!となっていましたが周りの人のステータスを見てないのになぜか分かったことです。 この後の魔力を聞くときに体力のことです聞くことにすれ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ