第34話 相談と解決
探索ギルドにある会議室に、俺たち七人とギルド職員の男性が向かい合って座っていた。
「君たちが大事な話があるからと、こうして会議室を用意したけど、ダンジョンで何かあったのですか?」
この男性ギルド職員、俺たちがカウンターにいた受付嬢に相談があるというと、受付嬢の後ろから現れて話は私が聞こうとこの会議室まで連れてこられたのだ。
でも確かこの人、ゴブリンの集落討伐の時ギルドマスターと一緒に参加していた人だよな。名前は……聞いてなかったな。
「あの、その前に名前を教えてもらえますか?」
「……そういえば、名乗ってませんでしたね。
私は、探索ギルドの職員でコールマンと言います。以後よろしくお願いします」
コールマンさんか。少しぽっちゃり体型ではあるが仕事はできるタイプのようだ。
ギルドの制服もきちんと着こなしているし、清潔感もある。
とくに、この人なら信用できるって思えるのがすごいよな……。
「コールマンはん、それで相談てのはな………」
俺たちのパーティーの実質リーダーの高橋健太が、ダンジョンで手に入れたお金に関して相談する。
それと、例の曲がり角で聞いた話も付け加えて話しておいた。
「なるほどなるほど、それでそのお金をどうするべきか相談したと……」
コールマンさんは、顔の左頬に左手を付けて撫でて答える。
そのしぐさが、彼の考えをまとめるときの癖なのかな?
「ここは、皆さんにハッキリどうすればいいか言いましょう。
そのお金は、皆さんで山分けしてください」
「ええんか?」
コールマンさんの提案に、俺たちは驚いた。
ここはいったんギルドで預かって、真相を探るとかじゃないのか?
「皆さんは、私どもギルドがこのお金の持ち主を探すとでも考えましたか?
それとも、コボルト一匹倒しただけにしては高額すぎる、何か裏があるのではとか?」
そう聞かれ、俺たちは頷くとコールマンさんは笑い出した。
「皆さんは、受付に置かれている小冊子は読みましたか?
アレにすべて書かれていることですが、ダンジョンの宝箱から出てきたものはどんなものでも発見者の物です。
それが、ダンジョン探索におけるルールの一つですよ」
さらにコールマンさんは教えてくれる。
実は、ダンジョンで出てくる宝箱には二種類あるそうだ。
まずは、ダンジョン自らが用意した宝物。
これは、ダンジョンに人なり生命体をおびき寄せるための餌的なもので、たいてい高価なものや価値のあるものが入っている。
ただし、それは階層が深くなればなるほど価値が高くなる傾向にあるそうだ。
もう一つは、ダンジョンに潜った探索者たちの遺品や忘れ物。
ダンジョンの地面に直に物を置いていると、約一時間ほどでダンジョンに吸収されるらしい。
その吸収されたものの中に、生物以外のものは近くにある宝箱の中身として出される。
つまり、排出されるということだ。
「だから、宝箱の中から出てきたものであれば、どんなものであろうとみなさんのものということです。
そのお金は、皆さんで遠慮なく山分けしてくださって構いませんよ」
……今、俺たちは探索者ギルドのお墨付きをもらった気分だ。
これで、堂々と宝箱から出てきた金貨をみんなで山分け出る。それぞれが返済しなければならない借金の一部を払うことができる!
「あと話をしていた探索者ですが、おそらく『堅牢の牙』の人たちでしょう。
昨日、ギルドに人探しの依頼がありましたから間違いないと思いますよ」
人探しか、ダンジョンでは行方不明になる人もいるらしいし、そういう依頼があってもおかしくないか。
「その人探しっちゅうんは、女性なんか?」
「ええ、同じパーティーのメンバーで弓使いの女性です。
名前は、ジェニファーというそうです。
銀色の髪をポニーテールにしているそうですから、皆さんも見つけたらギルドに知らせてください。報酬も出ますので」
コールマンさんは、自身の持っている『ステータスデバイス』を見ながら依頼の内容の確認をして教えてくれた。
ホント、便利な『ステータスデバイス』だ。
「でも、どうしてそのジェニファーさんはいなくなったのかな?」
「そうね、葵の言うとおり、いなくなるのには何か理由があったんだよね」
「もしかして、それがあの会話での盗んだってやつっスか?」
田辺美咲と小西葵、それに長谷川大輝が加わって何やら盛り上がっている。
こいつら推理物が好きなのかもしれないな……。
「……では、問題も解決したようですし私は仕事に戻りますね。
それと、会議室を出るときは受付にひと言お願いしますね」
「ありがとうございました」
「おおきに、コールマンはん」
コールマンさんの退出を見送ったのは、俺と高橋健太の二人だけだった。
他のメンバーはというと、田辺美咲と小西葵に長谷川大輝の三人は今もいなくなった女性について話し合っているし、伊藤拓也と中川明日香は、宝箱の中から見つかった金貨を山分けしていた。
人数分の小さな布袋を用意して、それぞれに金貨八十一枚と銀貨五十枚を入れていく。
それが終わると、袋の口を紐で縛りみんなに配っていった。
「はい、本田さん。今回のダンジョンでの報酬です」
「あ、ああ、ありがとう中川さん……」
俺は中川明日香から、布の袋を手渡されたが少し複雑な思いだ。




