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ダンジョンで借金を返済することになった男の物語  作者: 光晴さん
ダンジョン探索

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第32話 宝箱の中




「た、助かった……」


噴水の中から出現したコボルトは、なんとか撃退に成功した。

そのために、中川明日香がケガをすることになってしまったが……。


俺が、倒れた中川明日香を介抱しているみんなに目をやると、田辺美咲と小西葵の二人が俺を睨んでいた。

そして、俺の視線に気づくと二人そろって俺に近づいてくる。


「本田さん!何やっているんですか!」

「あなたのせいで、明日香さんがケガを負ったんですよ!」


コボルトを防いだ土壁は、コボルトが倒されると自然に崩れ、床と同化している。

俺を守ってくれる壁はすでになかった。


「そ、それは……」

「謝ってください!」

「そうよ!明日香さんにきちんと、謝罪してください!」


そう責められ、俺が焦っていると起き上がった中川明日香が声をかけてきた。


「待って、二人とも。

確かに本田さんが罠を発動させたことで、私は魔物に襲われたけど、本田さんはちゃんとその魔物を倒してくれたわ。

それに、私のケガはたいしたことなかったし……」


「そんなことない!あんなに血が出ていたし……。

私たち、明日香さんが死んだんじゃないかって……」

「だ、大丈夫よ。

長谷川君のポーションでほら、この通り治ったしね」


話しながら中川明日香は、田辺美咲と小西葵に近づき、二人を一緒に抱きしめる。

そして、心配してくれたお礼を言うと田辺美咲と小西葵はすすり泣くのだった。


「二人とも、ありがとう」

「う、うう……」

「……」


そんな三人のやり取りをすぐ近くで見せられていた俺に、コボルトの魔石を拾ってきた伊藤拓也がそっと魔石を渡してくれた。


「気を付けてよ、本田さん」

「……すまない」


魔導銃をホルスターにしまい、その場に立ち上がると自分の荷物を取るため噴水に近づく。すると、噴水のコボルトが現れた場所に宝箱が置かれていた。

いや、出現したといったほうがいいのか。


「高橋さん、これ」


噴水の側に置かれた俺の荷物を取りながら、中川明日香が倒れていたところで長谷川大輝と話をしていた高橋健太を呼ぶ。


「ん?どないしたんや?」

「高橋さん、アレ宝箱っスよ」


ポーションの空瓶を持ったまま、噴水に現れた宝箱に気づいた長谷川大輝。

その声で、すぐに全員が噴水の側に集まった。



「これって、ここから出た魔物倒し倒したからでできたんやろな……」

「たぶんそうだと思います。

浅い階層は、探索し忘れが結構あるとギルドでもらった冊子に書いてありましたし」


高橋健太に同意する中川明日香。

彼女は、探索ギルドでもらった小冊子をしっかり読んでいたらしい。


「とにかく、開けてみますね……」


そう言って、宝箱の蓋に手をやる伊藤拓也。

そのまま、ゆっくりと宝箱を開ける。


「中身はなんや?」


宝箱のふたを開け、伊藤拓也が中を確認すると白い布の袋が一つあった。

その袋を取り出すと、ズッシリと重くしかも宝箱と同じぐらいの大きさがあった。


「めちゃくちゃ重いよ、コレ」


そう言って、限界が来ていたのか噴水側の地面に置いた。

置いたときの音から、中身は大量のコインのようだとわかる。

俺たちは、ワクワクドキドキしながら袋を開けて中身を確認する……。


すると、最初に開けた高橋健太が中身を見るとすぐに袋の口を閉じる。

そして、信じられないといった表情で、周りにいた俺たちを見渡した。


「中身見たら驚くで。信じられんもんが入っとる」


そう言うと、袋の口を開け俺たちにも中身を見せてくれた。


「「「………」」」

「………ウソ」

「な?信じられんやろ?」


みんな、俺も含めて言葉が出なかった。

袋の中身は、大量に入った金貨だったのだ。その数、金貨五百七枚と銀貨五十枚。

コボルト一匹倒しただけで、この宝箱は信じられない。


もしかして、ドッキリか?とあたりを見渡したのは、伊藤拓也と長谷川大輝だ。

大量の金貨に、目が離せずじっと見つめているのは中川明日香と田辺美咲に小西葵。


「これ、全員で山分けとなるといくらかな?」

「え~と、一人金貨八十一枚と銀貨五十枚やな。

日本円にして……こりゃすごい!八百十五万円や!借金減るで!」


そこまでのお金がこんな、第二階層にあるとは考えられない。

それに、今まで倒してきた魔物を考えればコボルト一匹でこのお宝も考えられない。


もしかしたら、何か裏があるのかもしれないな……。


「……どないしたんや、本田はん。

これだけあれば、本田はんの借金なんかすぐに返せるんとちゃうか?」

「それはそうなんですが……。

高橋さん、おかしいとは思いませんか?」


「おかしい?」

「そうです、こんな浅い階層のこの水場に、この宝物。

しかも、中身は金貨五百枚以上です。普通はあり得ません。

俺たちは、ゴブリンキング討伐も経験したんです。コボルト一匹にあの宝物は、おかしいとしか考えられませんよ」


顎に手をやり、考える高橋健太。

そのそばで、金貨の入った袋を自身の無限鞄へしまう伊藤拓也。

まあ、こんなところで山分けとはいかないし、今は預かってもらおう。


「……これは、ギルドに報告しといたほうがええやろな」

「ええ。もしかしたら、何かとんでもない事態に巻き込まれるかもしれませんし……」

「そうならないように、祈るだけやな……」


その後、この水場の部屋を見渡し、俺たちは出発の準備を終えるとダンジョンを引き返していった。








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