第23話 返済に有利な魔物
大宮さんは、ダンジョンの越えられない壁について話してくれる。
それは、ダンジョンの三十階層から牙をむく、ダンジョンの罠だ。
釣り天井に、床から突き出す槍。
壁から槍や矢に、定番の落とし穴。
さらに、転送床や回転壁の先がモンスターハウスなどなど。
地球人は、そのダンジョン罠を乗り越える能力を持っていないのだ。
もちろん、パーティーを組んで斥候が罠解除をしたとしても、なぜか地球人が通ると罠が復活するらしい。
このことは、二十九階層のダンジョン町では常識らしい。
そのため、三十階層からは仲間の安全のために地球人をパーティーから外すことが通例となっていた。
だが、地球人たちも黙って置いてけぼりを食っていたわけではない。
何とか先の階層に行こうと、地球人のみで挑戦するも散々な結果に終わり、そのうち地球人は三十階層から先に潜らなくなった。
「……そんな理由があったんですか……。
でも不思議ですよね、解除した罠が復活するなんて。しかも私たち地球人が通るだけ、でしょ?」
小西葵が、隣に座る田辺美咲に同意を求める。
「そうねぇ。でも大宮さん、二十九階層までしか行けなくて借金返済は大丈夫なんですか?」
「ああ、そこは問題ないよ。
二十階層からゴーレムが出現するからね」
田辺美咲の質問に、大宮さんがおかしな答えを出した。
ゴーレムが出てきて、何故大丈夫なのか?
「大宮はん、ゴーレムなんか?」
「ああ、実はダンジョンのゴーレムは倒すと、魔石と金属のインゴットを出すときがあるんだ。インゴットの中には、金やミスリルなんてものもあるからお金になるんだよ」
金やミスリルのインゴットか。
それなら、ゴーレムばかりを狙う人たちであふれそうだが……。
「そんなインゴットを出すゴーレムなら、出現階層は探索者でいっぱいなんじゃ?」
俺たち全員の気持ちを伊藤拓也が代弁した。
「ところが、魔物のゴーレムは固いんだ。
それに、他の魔物と一緒の時がほとんどで単独で発見することはない。
とくに、動物系魔物と一緒の時が多いな……」
単独でないなら、倒すのは大変だな。
固いということは、防御力があり物理耐性がある程度あるってことか?
「……まるで物語に出てくる、心優しいロボットみたいね」
「ああ、あの空飛ぶお城のアニメの庭園ロボット。
私あのアニメ好きなんですよねぇ~」
「私は、豚さんが飛行機に乗るやつだな~」
中川明日香の感想に、小西葵と田辺美咲がアニメの話にもっていってしまった。
今はそんな話をする時ではないぞ?
「ところで、大宮はんは借金返したんか?」
「俺はまだだ。元が高額であと二百万ほど残っている。
九条は返済終わっているが、パーティーの仲間が終わっていないらしく付き合っているらしい」
大宮さんは他にも、今後の予定とかも話してくれた。
「俺もパーティー組んでいる仲間がいるからな。そいつらと一緒に借金返済したら、別のダンジョンへ行ってみるつもりだよ。
他の地球人たちも、大半はこのダンジョンの外へ行くみたいだ。なぜかな」
……それは多分、今の地球に魅力が無いからかもしれないな。
生まれる前から、お金のかかる社会だし。
お金中心の世の中にしか見えないしな……。
大宮さんとの食事を終えた俺たちは、することがないので宿に帰ることに。
明日から、ダンジョンの二階層に行くことだけを決めて宿の入り口で解散となった。
「まずは、シャワーを浴びるっスよ。
ゴブリンの集落での疲れを洗い流すっス!」
「せやな、まずは洗い流さなな」
そう言って、部屋に入るなり、備え付けのシャワールームへ入っていく長谷川大輝と高橋健太。
俺と伊藤拓也は、自分のベッドに座るとショルダーバッグやポーチの付いているベルトを外した。
「それじゃあ、俺もシャワーに入ってきます」
「ああ」
そう言って、伊藤拓也もシャワールームへ着替えを持って行く。
俺は、無限鞄から『ステータスデバイス』を取り出すと、自分のステータスを確認する。
————ピロリン♪
画面に手をかざし、電子音でステータスが表示される。
名前 本田 誠司
性別 男
年齢 32
職業 -
レベル 12
体力 1,068
魔力 15(固定)
スキル -
借金額 6,500,000円
……レベルは、まあ分かる。
ゴブリンの集落を強襲して、あれだけのゴブリンにゴブリンキングまで倒したんだ。一から十二まで上がるのは、今回限りだろうが。
でも相変わらず、魔力は固定なんだよな。
しかし、相変わらずスキル欄は何も表示がない。
『異世界言語理解』みたいなスキルでも習得しているかと思ったのだが、そんなスキルは習得していなかった。
……でもそれならば何故、グングニルをはじめとする、この世界の人たちの言葉が分かるのだろうか?
その答えは、『ステータスデバイス』の取扱説明書の最後のページにあった。
実は、地球人に配っている『ステータスデバイス』には特別な仕掛けが施されており、使うたびにデバイスから魔法付与が発動されているそうだ。
それが、『言語翻訳』という付与魔法で異世界の言葉を理解できるようになる魔法だそうだ。もちろん、読み書きができる優れ物で効果は一日続くらしい。
『ステータスデバイス』を使うたびに掛けられるらしく、一日一回は使うように注意書きされていた。
時間の表示や自分のステータス、地図に仲間との通話機能まであるのだ。使わない日はないだろうな……。
……あと、借金額が減ってないのは、ギルドに申し出てないからだろう。
明日から本格的に、ダンジョンで頑張るつもりだし返済も考えていかないと……。




