第21話 報酬
「ゴブリンの魔石が百八十二個、ゴブリンキングが一個で……。
フンフン、全部で金貨五枚と銀貨一枚に銅貨八十二枚になるわね」
集落の端で、疲労困憊で座り込んでいる俺たち七人の側でギルドマスターのオフィリアさんが集めた魔石の数を数えて価値を教えてくれる。
これに緊急クエスト特別報酬が出るらしい。
後は、報酬を全員で均等に割ってそれぞれの取り分が決まる。
「それで、ギルドマスター。それぞれの取り分はいくらぐらいになるんっスか?」
「ん~、私とギルド職員の彼の分は引いて計算すると……。
緊急クエストは金貨一枚だから……あれ?割り切れないな」
何やらブツブツと計算するギルドマスター。
時々、地面に計算式を書いている。
「……しょうがない、銅貨四枚はギルドで出そう。
となると、一人あたり銀貨四十二枚と銅貨九十九枚になるわね」
「結構もらえるんスね……」
ギルドマスターは立ち上がり、地面に書いた計算式を消すと俺たちを見下ろす。
「それは当然でしょう。
ダンジョンの一階層とはいえ、ゴブリンの集落にゴブリンキングの討伐ですからね。この敵で報酬をケチるギルドマスターはいないわよ」
そう言うと、なかなかの大きさの胸を張る。
その揺れるギルドマスターの胸をガン見する長谷川大輝と伊藤拓也だったが、田辺美咲と小西葵の白い目で見ていることに気づき、すぐに視線をそらした。
俺は、早々に視線をそらし集落跡に目を向けると、大宮さんをはじめ九条さんや獣人の三人にエルフのシャロンさんが念入りに集落を更地に戻している。
ああしておかないと、他のゴブリンがまた集落をつくってしまうそうだ。
さすが、魔物の特性をよく知っている……。
▽ ▽ ▽
三十分ほどの休憩で、ようやく俺たちの体力が戻ってきたころ、集落を更地にした大宮さんたちが合流。
そのまま、全員でダンジョン町へ帰還することになった。
俺たち七人のほとんどが弾切れで、戦えないための処置だろう。
大宮さんと九条さんは、弾切れは最初のうちはよくあることだから気を付けるようにと注意してくれる。
先人の注意は聞いておいて損はないだろう。
ゴブリンキングを倒したからか、帰りは森の中も街道もゴブリンが出ることはなく安全にダンジョン町に入ることができた。
「待った待った。解散は、探索ギルドで報酬を受け取ってからですよ」
町に入って、すぐに獣人の三人がギルドとは違う方向へ向かうところをギルドマスターが注意する。
そういえば、探索ギルドは冒険者ギルドと違ってクエストが無かったな。
クエストが出るとしても、今回のような緊急のもののみ。
いつもは、ダンジョンで手に入れた魔石や宝物を売却するだけにギルドに寄るからな。獣人たちの行動も、いつも通りと考えればあり得るのか……。
「それにしても、今回の集落討伐はハードだったね」
「そうねぇ、これで銀貨四十二枚だっけ?
ねぇ本田さん、日本円にするといくらぐらいなんです?」
えっと、今回の報酬は銀貨四十二枚に銅貨九十九枚だから……。
「えっと、日本円で42,990円だな」
「安っ!」
「そうっスか?時給にしたら相当な金額っスけど……」
だよな。今回の討伐は急襲から後始末まで一時間ちょっと。移動の時間を入れても一時間半だ。何せ、昼前に帰ってこれたんだからな。
だとすれば時給約43,000円だ。
日本では、考えられない報酬だと思うが……。
「そうだな、妥当な金額だろう。
それに、俺たちの装備やら武器の魔導銃は与えられたもの。唯一購入したのは、昨日の弾倉を纏め売りしていた見切り品のみ。
それを考えれば、儲けたというものだ」
田辺美咲の驚きに、長谷川大輝と伊藤拓也が反論する。
その反論を聞いて、田辺美咲は黙ってしまった。
「あのなぁ自分ら、毎回こんな激しい戦闘なわけちゃうでぇ?」
「そうだよ美咲ちゃん。
いつもはもっと離れた戦闘になるって、九条さんが教えてくれたよ」
だろうな、毎回毎回あんな集落襲撃のような戦闘にはならないはず。
それを考えれば、今回のは特別ボーナスといったところ。
いつもいつもあんな戦闘をしてたまるか……。
▽ ▽ ▽
みんなで探索ギルドの中へ入ると、すぐにギルド職員の男性が魔石の入った無限布袋をもって換金室へと入っていく。
あそこで、魔石の価値などをちゃんと鑑定するそうだ。
換金室の前には受付があり、本来はそこへダンジョンで手に入れた魔石を持っていくことになる。
「……それにしても、ギルドに酒場が併設されていないなんて……」
また長谷川大輝が愚痴を言う。
どうやら、彼はファンタジー小説や漫画にアニメを信じすぎということか?
ダンジョンにある探索ギルドは、探索者のサポートを生業にするギルドだ。
冒険者ギルドのように、その町や村などに根付いた組織ではないので依頼を受ける必要もない。
それに、探索後の一杯ならギルド周辺に酒を商売にしている酒場は結構ある。
こんなギルドの中に併設する必要はないだろう……。
「長谷川さん、ファンタジー小説のような展開を希望しているなら、借金を返済したらダンジョンの外に出てみたらどうかな?」
「ダンジョンの外っスか?」
長谷川大輝の愚痴を聞いてしまった九条さんが、何やらアドバイスをしてくれる。
「ああ、ダンジョンの外の町にある冒険者ギルドなら、長谷川さんの希望する展開もあると思うけど」
「それって、登録しようとすると、怖そうな人が邪魔に入るとか?」
「うん、そんな展開もあるかもね……」
「それは楽しみっス……」
……いつの間にか目標ができたらしい、長谷川大輝であった。




