第20話 決着
ゴブリンキングの登場で、睨むだけで怖がって近づかなかった残りのゴブリンたちの士気が上がる。
あちこちから、持っている武器を掲げて叫び出した。
『ギャギャギャァァッ!』
『グギャァッ!』
『『『グギャァッ!!』』』
ゴブリン二匹分ぐらいある大きな斧を、ゴブリンキングは地面に叩きつける。
そして、醜い顔をニヤつかせ叫んだ。
『ギャギャッ!!』
その叫びを聞くと、ゴブリンたちが一斉に俺たちに向かってきた。
そして、ゴブリンが走り出した後、ゴブリンキングは大きな斧を肩に担ぐと大きな足音を出しながらゴブリンたちの後を追って走り出す。
「来たぞ!高橋さんたちはゴブリンをお願いします!」
「了解!」
俺たちは、魔導銃を構えると向かってくるゴブリンたちに向けて撃ち始める。
自動小銃型の魔導銃の弾倉を、すべて使い尽くした者たちは自動拳銃型の魔導銃を取り出し撃ち始める。
一発一発狙いをつけて撃つため、自動小銃型魔導銃の時より命中率が良かった。
ゴブリンキングの移動速度は遅かった。
あの大きな斧の重さもあるのだろうが、身長一メートル弱のゴブリンを三メートルぐらいに大きくしたゴブリンといってもいい外見は、速さとは無縁だった。
大宮さんと九条さんは、自動小銃型の魔導銃を肩掛けにした無限鞄にしまうと、代わりに別の魔導銃を取りだした。
それは散弾銃型の魔導銃。
弾倉は、薬莢型の魔力タンクを上下二連に差し込み引き金を引いて撃つようになっている。発射される魔法は、範囲攻撃魔法が多いそうで大宮さんの魔導銃には『エクスプロージョン』という魔法陣が刻まれている。
威力は、爆発系の魔法というだけあってかなりのもの。
また、九条さんの散弾銃型の魔導銃には『インパクト』という衝撃系の魔法陣が刻まれている。
ただ、この魔法は範囲攻撃魔法ではないのでゴブリンキングのみへの攻撃となった。
「ゴブリンキングを足止めするぞっ!」
九条さんが叫ぶと、ゴブリンキングに攻撃を仕掛けようとしていた獣人三人がその場を素早く離れた。
それを確認し、九条さんはゴブリンキングに照準を合わせて引き金を引く。
————パシンッ!
鞭でたたいたような音が響くと、『インパクト』の魔法がゴブリンキングに命中する。
左腹部に命中した『インパクト』は、ゴブリンキングの口から青い液体を吐かせ片膝をつかせる。
『ガ、ガブッ……』
「今だっ!」
そこへ、獣人三人が一斉にゴブリンキングの左右から襲い掛かった。
三人の獲物は二刀の短剣に、刃の部分が大きくなった短槍だ。
ゴブリンキングの体に次々と切り傷を付けるも、どれも致命傷とはいえない。
その証拠に、ゴブリンキングは膝をついたまま腕を振り回し、大きな斧を振り回して牽制している。
そこへ今度は大宮さんの声が響いた。
「魔法を撃ち込む!みんな離れろっ!」
その声を聴き、獣人三人は素早くゴブリンキングから離れた。
獣人たちが離れたことを不審に思ったのか、ゴブリンキングが目をキョロキョロするが大宮さんが引き金を引く瞬間を見ることはできなかった。
————パシンっ!
再び鞭で何かを叩いたような音が響いた後、ゴブリンキングの右肩と顎の一部が吹き飛んだ。
青い液体がゴブリンキングの後方に、激しくばらまかれる。
『ガバアァッ!!』
鈍い音とともに、ゴブリンキングの振り回していた大きな斧が地面に落ちる。
右肩が吹き飛ばされ、右腕がちぎれたためだ。
「……すごいな、まだ生きているぞ」
大宮さんは、散弾銃型の魔導銃を折ると、中に装填していた薬莢型の魔力タンクを取り出す。範囲攻撃魔法一回につき、薬莢型魔力タンク一つ使い切ってしまう。
そのため、その都度交換しなければならないのだが、俺にはどこかカッコよく見えてしまった。
「さすがゴブリンキングね。
アブル!顎の下からその短槍でとどめをっ!」
弓を構え、ゴブリンキングの周りのゴブリンを屠っていたシャロンさんは、ゴブリンキングに攻撃を仕掛けている獣人の三人の一人に叫ぶ。
その声が聞こえたのか、獣人の男の一人がゴブリンキングの懐に潜り込み構えた短槍を、一部が吹き飛んだ顎を下側から串刺しにする。
膝をついているとはいえ、獣人の男と同じくらいの高さがあるゴブリンキングが頭を顎の下から串刺しにされ後方にゆっくりと倒れた。
そして、そのまま光の粒子に変わっていく。
その光景は、残り少なくなったゴブリンたちを一時的に停止させる。
その隙を俺たちは見逃さず、すべてのゴブリンを全滅させることに成功した。
集落を強襲して、わずか三十分の出来事だった……。
▽ ▽ ▽
「このゴブリンキングの魔石で、最後ですね……」
ボーリングの玉ぐらいの大きさがありながら、岩のような歪な形をした魔石をギルドマスターの持っている無限布袋に入れて終わりだ。
これで集落にいるゴブリン、すべての魔石をみんなで集めきった。
「本田さん、弾倉残っているっスか?」
「いや、コレの弾倉があと一つだけだよ」
長谷川大輝が、疲れた表情で聞いてきたが、よく周りを見れば高橋健太をはじめとする俺たち七人以外は、そんなに疲れた表情をしていなかった。
俺は、自動拳銃型の魔導銃を無限鞄にしまいながら体力の違いを実感していた。
おそらく、これがレベルの違いというやつなのだろう。
いずれ、俺たちもこの領域に足を踏み入れないといけなくなるのだろうか?




