第16話 ギルドのお仕事
探索者登録を終えて、俺たちは応接室へ戻ろうとすると、長谷川大輝がギルドのロビーをキョロキョロと見ていた。
何か探しているようだが……。
「長谷川さん、何を探しているんですか?」
「いや、ギルドと言えばお馴染みのものがないんスよ……」
小西葵が、気になって聞いたのだがお馴染みのものとは何だ?
「何よ、お馴染みのものって」
「依頼書を貼っている掲示板っスよ。
魔物討伐や薬草採取とか、ギルドにはなくてならないものでしょ」
依頼掲示板か、確かにギルドと言えばそんなイメージがあるがここはダンジョンの中だ。魔物討伐はいいとしても、薬草採取はあるのか?
そんなことを話していると、俺たちを応接室へ案内してくれる受付嬢が声をかけてきた。
「あの、何かありましたか?」
「受付嬢さん、このギルドには依頼を貼る掲示板はないんっスか?」
「掲示板、ですか?」
「そうっス、魔物討伐や薬草採取とかの依頼を貼る掲示板っス」
受付嬢は、困った顔で長谷川大輝の質問に答えてくれた。
「えっと、あなたの仰っている魔物討伐や薬草採取などの依頼を貼る掲示板は、ダンジョンの外にある『冒険者ギルド』に行けばあります。
ここはダンジョンの探索をする人たちを支援するための『探索者ギルド』ですから、何かの依頼を出すことはありません。
それに、ここで取引されるのは魔石とダンジョンで手に入れたお宝のみ。
もし、素材などが欲しい場合や食料を手に入れたい場合は、ダンジョンの外から仕入れますから……」
探索者ギルドとは、基本ダンジョン探索者のサポートや支援を行うギルドらしい。
そういえば、ダンジョンの魔物は魔石だけを残して何も残らないんだよな。
後は、ダンジョン内で見つけたお宝を鑑定し買い取るぐらいらしい。
ダンジョンの中にお宝があるのは、ファンタジー物のゲームと一緒みたいだ。
それと気になることを、いくつか質問してみた。
まず、ダンジョンの地図は扱ってないそうだ。
なぜなら、『ステータスデバイス』の一度行った場所は記録される機能を使い、隅々まで探索する人たちが増えたかららしい。
だからどこまで探査できたか分からなくなるため、地図を買う人はいないらしい。
ただし、罠の場所などの情報は売り買いしている。
まあ、自分の生死にかかわる罠もあるそうだからお金には代えられないのだろう。
次に、ダンジョンの魔物の分布図や魔石の相場について聞いてみた。
ダンジョンの魔物については、ざっくりとしか分からないらしい。
何でも、どこの階層からどこの階層を縄張りにしているか分からない魔物が多いそうで、昨日は出てきたのに今日は出てこない魔物がたまにいるらしい。
そのため、分布は大雑把になり細かくは分からないそうだ。
魔石の相場に関しては、次のダンジョン町のある12階層までは、変動がないためこの探索者ギルドでは扱っていないらしい。
だから、変動の無い12階層までの魔物の魔石の価値を教えてもらった。
これで、ダンジョンで魔石を手に入れてもいくらで売れるか分かるだろう。
▽ ▽ ▽
応接室に戻ってくると、キャロルさんとミラさんが暇そうにお茶を飲んでいた。
どうやらまだ、ギルドマスターは戻ってきてない。
俺たちがソファに座り、お茶を入れてもらっている所へドアを勢いよく開けてギルドマスターが戻ってきた。
「お待たせ!ゴブリン集落の討伐は明後日に決まったわ!」
俺たちは全員びっくりして、入ってきたギルドマスターを見る。
ギルドマスターは、そんな俺たちを無視して色々と指示を出した。
「ここにいる全員はゴブリンの集落討伐に、強制参加してもらう。
……まぁ、集落の場所に案内してもらわないといけないからな。
それと、討伐が明後日なのは12階層から探索者を何人か呼んだからだ」
ダンジョンの12階層。確か、ダンジョン町がある階層だったな。
そこから探索者を呼んだってことは、ある程度強い連中が来るってことか。
「あの、このダンジョン町の探索者も参加するんですか?」
「ああ、ステータスデバイスで連絡している。
本当に、これを作った人たちは天才ですね。便利だわ~」
探索者ギルドからのお知らせ、とかでメールが来るのだろうか?
確か『スマホ』を参考に作っているってグングニルが言っていたような……。
「では、マスター。集合場所と日時は?」
「ん?キャロル、さっき言っただろ?
明後日討伐だって……」
「ですから、どこに何時までに集合かってことです」
ギルドマスター、明後日討伐しか言ってないことに気づいてないのか?
少し考えて、ようやく理解したギルドマスターは、少し顔を赤くして答えた。
「あ~、集合場所は外壁の門の前に朝八時までに集合とする」
ということは、明日は一日空くということだな。
キャロルさんとミラさんに、このダンジョン町を案内してもらおう。
後、今夜の宿も紹介してもらわないとな。