第14話 到着、ダンジョン町手前
「あら、あなたたち地球から来たの?ということは異世界人?」
「わぁ、私異世界人って初めてです」
「へぇ、そうなんだぁ」
ダンジョン町への案内をしてくれることになったキャロルさんとミラさん。
その二人と仲良くなった、田辺美咲と小西葵。
そして、その光景を見守る中川明日香。
俺たち男性陣は、その女性たちの後を付いて行くだけ。
「それにしても、ダンジョン町への街道があったなんてびっくりっス」
「ああ、グングニルは何も教えてくれなかったな……」
長谷川大輝がダンジョン内の道に驚き、伊藤拓也は事前に教えてくれなかったグングニルに対して、少し怒っているようだ。
森の中を通っている街道だが、あちこちからゴブリンが出現して結構危ない。
もちろん、俺たちはしっかりと対処して魔石をゲットしている。
また、田辺美咲も小西葵もすっかり慣れたのか、当初と違いゴブリン相手でも怯えることなく魔導銃を構え対処していた。
これには、中川明日香のおかげもあるが、最も大きいのはキャロルさんとミラさんの協力だろう。
街道を進んでいると、必ずといっていいほどゴブリンが姿を見せる。
それも何体も。
姿を現せたゴブリンを、キャロルさんとミラさんが引きつけ遠距離から田辺美咲と小西葵が撃つ。
しかも、戦いの最中もキャロルたちと声を掛け合っていたようで、それがゴブリンの怖さを緩和したようだ。
……それにしても、ゴブリンの出現回数が多い気がする。
「本田はん、ゴブリンの数多すぎやしない?」
「街道を歩いているのに、確かに多すぎますね。やっぱり集落の影響でしょうか?」
「せやろな。町に行ったら、すぐに知らせなあかんやろ」
ゴブリンの集落。
街道を進んでいる俺たちに、何度もゴブリンが襲ってくるのはそれが原因だろう。集落があるせいでゴブリンの数が急激に増えているみたいだ。
ダンジョンの魔物がどうやって増えるのか分からないが、もしかしたら集落の中にゴブリンを生み出す何かがあるのかもな。
俺はそんなことを考えながら、自動小銃型の魔導銃の弾倉を取り替える。これで交換は三回目だ。町までもてばいいが……。
「見えた、アレがダンジョン町の外壁だよ。町へ入るための門が見えるだろ?」
キャロルさんが、先頭でダンジョン町へと続く外壁を指さし教えてくれる。
確かに、重厚な城門が口を開けている。
その前には、三人の鎧を付けた兵士が守っていた。
「キャロルさん、あの兵士たちは?」
「ああ、あれはこのダンジョンの外から来た兵士で、ダンジョン町に常駐しているんだ。一応このダンジョンは、『フォルディール王国』の管理するダンジョンだからね」
フォルディール王国がこのダンジョンを管理しているということは、このダンジョンの外には迷宮都市といわれる都市が存在しているのか?
そのことをキャロルさんに質問してみる。
「ええ、このダンジョンのすぐ近くに迷宮都市はありますよ。
もっとも、その迷宮都市の中には別のダンジョンが存在してますけど」
……ん?ダンジョンがもう一つ?
迷宮都市の中にダンジョンがあって、さらにその都市の近くにこのダンジョンが存在している。
ということは、その迷宮都市は二つのダンジョンの恩恵を受けているってことか。
そう考えると、このダンジョンすごいって思っていたけど、ファンタジー小説なんかにあるダンジョンとそう変わらないような気がしてきた。
「さあ、もうすぐ門に着きますから、そこをくぐれば、ダンジョン町を確認することができますよ」
「門をくぐってすぐ町じゃないの?」
「美咲さん、町と外壁の間にはある程度の何もない土地があるんです。
何故だか分かりますか?」
ダンジョン町と外壁の間の何もない土地か。
俺たち七人に加え、ミラさんも同じように考えこむ。
何故、そんな場所が必要なのか……。
「……どうやら、皆さん分からないようですね?
正解は、ダンジョンの魔物が大量発生したときに起きるスタンピード対策よ」
なるほど、魔物の大量発生か。
確かに、ファンタジー小説なんかでは定番の災害だ。ダンジョンの中の魔物をある程度間引きしないと、起こる現象だったっけ。
「それで、この外壁は丈夫に造られているのか……」
いつの間にか、外壁のそばまで来ていた俺たち。
この外壁の側をある程度進めば門に出る。
門の前にいる鎧を着た兵士の一人が近づいてきた。
鎧は軽鎧のようで、あちこち鎧で覆われていない所があり動きやすそうだ。
さらに、顔も見えているのでどこか安心感がある。
「クレスバールのダンジョン町へよく来たな、歓迎するぞ。
キャロルとそっちは新人か?」
「ええ、うちのクランに入ったばかりの新人のミラよ」
「ミ、ミラです。初めまして」
この門兵と、キャロルさんは顔見知りのようだ。
ミラさんも、恐縮してあいさつをする。
「ああ、よろしくな。
俺は、フォルディール王国の兵士でケネスだ。それと向こうの二人は、右がデビット。左がアンソニーだ。
後ろのガンナーたちは、グングニルから連絡のあった地球人たちだな」
「はい、よろしゅうお願いします」
「……変わったしゃべり方だな」
しかし、グングニルって結構顔が広いんだな。
でもこれで、ファンタジー小説でありがちな身分証明云々は回避できそうだ。
「本田さん、アレ!あれがダンジョン町っスよね?」
「ああ、想像以上の町だな……」
門の中に見えるダンジョン町は、俺が想像していた中世ヨーロッパの街並みとはかけ離れていた。
いや、中世ヨーロッパな街並みも残しつつ近代化したって感じか?
ここからでも、いくつか高いビルが見えた。