第13話 探索者
「ミラ、私から離れないでよっ!」
「は、はい!キャロルさん!」
襲い掛かってくるゴブリンたちを、盾で防ぎながら剣で薙ぎ払っていく。
一緒に戦うミラも、ゴブリンに遅れは取っていない。
このクレスバールのダンジョンに来たのは、今一緒に戦っているミラに探索の経験を積ませるためだった。
新人を連れてこれるほど、このダンジョンは初心者向けだったのに、第一階層でこんなにたくさんのゴブリンに囲まれるのは初めてだ。
「ミラ、とにかくゴブリンに傷をつけること!
そうっ、すれっ、ば!こいつらは逃げていくからっ!」
「は、はい!」
ミラに説明している間も、次から次へ襲い掛かってくるゴブリンを薙ぎ払っていく。
私たちを囲んでいたのは五、六匹ぐらいだったのに、戦っている間に増えている?
「キャ、キャロルさん!入り口で騒いでいた男の人が言っていた、襲撃者ってもしかしてこのゴブリンたちじゃないですか?」
そういえば、このダンジョンに入るとき、町へ行く道すがらゴブリンに襲われて荷物を取られたって騒いでいたわね。
「おそらくそうでしょうね。ダンジョン町へ行く道から、私たちをこの森の中へと追い込んできたからね……」
「もしかして、このゴブリンたち……」
「ええ、おそらく集落を造っているわ」
「そんな……」
ゴブリンの集落がある。ということはこのゴブリンたちを統率している者がいるってことよね。キングかロードか……。
「ああ、またゴブリンたちが増えている……」
「チッ!少し距離を取ったのはそのためか」
私たちが戦えると分かり、少し距離を取っていたのは仲間を呼ぶための時間稼ぎか。ここからダンジョン町まではまだ距離がある。
ダンジョンの入口へも、素直に行かせてくれるとは思えない。
「クッ、ここまでか?」
そう私が言った途端、周りのゴブリンに襲い掛かる連中が森の奥から出てきた。
七人のパーティーの男女だ。
全員が魔導銃を持っているってことは、ガンナーのパーティーか!
▽ ▽ ▽
キャロルという女性が、諦めかけた言葉を発した瞬間、最初にゴブリンたちに襲い掛かったのは小西葵だった。
自動拳銃型の魔導銃で、ゴブリンの頭を五発で撃ち倒していた。
さらに、田辺美咲が撃ち、中川明日香が撃ち、高橋健太が撃ち、残りの俺たちも参戦した。
「中川はんたちは、彼女たち二人の側へ。後は、各個撃破や!」
「「「了解!」」」
そこからは早かった。
ゴブリンたちは、キャロルさんたちしか見ていなかったらしく俺たちがいきなり現れて、少しパニックになっていた。
それでも、態勢を立て直したゴブリンはいたが、すぐに倒されて魔石へと姿を変えていた。
そして、俺たちが姿を現してわずか十分もかからずに、ゴブリンたちを全滅させることができた。
「中川はん、その人たちに挨拶を。俺たちは、ゴブリンの魔石を集めるさかい」
「了解っス」
長谷川大輝だけが言葉で返事をし、俺と伊藤拓也は頷いてそれぞれゴブリンの魔石を集めに向かった。
俺が撃ち倒したゴブリンだけでも、六匹はいたはずだ。
ここにそれだけ集まってきたということは、集落の襲撃を引き返して正解だったようだ。どうやら、集落のゴブリンの数はかなりいるみたいだな……。
ゴブリンの魔石を集めて戻ってくると、高橋健太の所に長谷川大輝と伊藤拓也がゴブリンの魔石を渡していた。
「こっちは、五個あったっス」
「俺の方は、七つあったよ」
ゴブリンの魔石は、服を入れていたあの布の袋に集めておくようで、高橋健太が袋の口を開けて集めていた。
二人とも、その布の袋の中へ魔石を入れていく。
「俺の方も、七つゴブリンの魔石があったぞ」
そう言って、袋の中へ入れていく。
まあ、ゴブリン倒していたのは俺たちだけじゃなく、小西葵や田辺美咲も倒していたし、中川明日香も倒していた。
しかし、キャロルたち二人も倒していたようだが、それでも魔石が二十以上は多い気がする。やはり集落が原因なんだろう。
「高橋さん、彼女たちこれからダンジョン町へ向かうそうなの。この先ゴブリンが多いみたいだし、私たちも同行してはどうかしら?」
「……せやな、その方が安全やな。
みんなはどない思う?反対する者はおらへんか?」
高橋健太が俺たちの意見を聞くが、反対する者はいないだろう。
案の定、全員が了承とばかりに頷いる。
「中川はん、彼女たちに一緒に行くと伝えて」
「分かったわ」
「よし、それじゃあ彼女たちと一緒に移動するでぇ」
俺たちは、中川明日香に続いて、キャロルさんたちに近づいた。
そこであることに気づく。
そういえば俺たち、キャロルさんたちの言葉を理解しているよな。
異世界の言葉なんて、勉強したこともなかったはずなのに……。
そう思って、ステータスデバイスを確認するが、スキルの欄には何も表示されていなかった。それじゃあ、なぜ彼女たちの言葉が分かるんだろうか?
それとも、何か翻訳機のようなものでも持たされていたかな……。
これから先、俺たちがスキルを覚えるかどうかは分からないが、何かヒントのようなものを得られるかもしれない……。