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第12話 多勢に無勢




森の中をゴブリンの集落を見つけた場所まで進むと、ちょうど木々の間からゴブリンの集落を覗き見ることが出来た。

それは、森の中にあるちょうど開けた場所になっていて、そこをゴブリンたちが集まり集落となったようだ。


集落の周りを、ゴブリン三匹ほどがパトロールのためかウロウロしている。

他にも、三匹で一組のゴブリンがうろついているのを発見したので、集落を護衛するためにしているのだろう。


「集落襲撃するなら、護衛を何とかせなあかんな……」


高橋健太が、ゴブリンの集落を遠目に見ながら作戦を考える。

護衛のゴブリンたちを倒して集落を襲撃するか、ここで引き返すか。


「高橋さん、ここは引き返して別の方角からダンジョン町を目指した方がよくないかしら?」

「そうそう、この数は私たちじゃ無理だよ」


中川明日香が、ゴブリンの集落を自分の目で見て襲撃は無理だと判断する。

そばにいる田辺美咲も、数が多すぎると襲撃に反対する。

小西葵は何も言わないが、二人の意見に賛成のようで頷いていた。


「高橋さん、俺もこれは数が多すぎると思う。

ここから見て数えただけでも四十はいた。集落の周りをうろついているのは、ゴブリンの兵士のようだし、ここは引き返して応援を呼んだ方がいいと思う」


俺が、中川明日香たち女性三人の意見に賛成するような意見を言うと、伊藤拓也と長谷川大輝も襲撃を考え直し始めたようだ。


「……せやな、ここは回り道してダンジョン町へ急ぐか」


とりあえずのリーダーである高橋健太が、引き返すことを選んだ。

だが、これに不満の意見を出したのが長谷川大輝だ。


「やっぱ無理っスか?

こんな魔導銃を持っていても、あの数は無理っスかね?」


自動小銃型の魔導銃を構えながら、カッコつけているけどあの数のゴブリンはいくらなんでも無理そうだぞ?

戦いは数だよ、兄貴!とどこかの弟がいってたようだし。


「長谷川君、初心者装備ではあの数のゴブリンを何とかできないって。

少し考えたんだけど、さっき俺たちがゴブリン一匹倒すのに三発は当てないといけなかった。

しかも油断していたゴブリンに、だよ?

俺たちと対峙したゴブリンとだと、何発当てなきゃならないかな?」


そういえば、俺も五発ほど撃ったな。

全弾命中とはいかなかったみたいだし、職業がガンナーでも補正はないようだ。


「……分かったっス。ここはあきらめて、他の道を探すっス」

「ほんなら、移動するで。

その辺うろついているゴブリンに、きぃつけや」


高橋健太の忠告に従い、俺たちは来た道を引き返すことに。




引き返す道すがら、俺は長谷川大輝に最初のゴブリンがもめていた理由を聞いてみた。


「そういえば長谷川君、ゴブリンたちが何でもめていたか分かった?」

「ああ、それは……アレっスよ。

あの木の根元にある、布の袋をめぐってのものでしたっス」


長谷川大輝が指さす木の根元には、かなり乱暴に扱ったのか土で汚れていた布の袋が置かれていた。

中に入っていたのだろう、オレンジのような木の実が袋の周りにいくつか転がっている。


「……これって、どこかから盗んできたものかな?

それとも、小説みたいに人を襲って手に入れたとか?」

「さぁ、どうなんスかね?

でも、袋に血はついてないみたいっスから襲ったというのはないみたいっスよ」


となると、ゴブリンの気を袋に集めてそのうちに逃げたか、盗んできたか、だろうな。あのゴブリンの装備を見ていれば、こんな布の袋を持っているわけないし。


「しっ!」


布の袋をめぐって考えていると、先頭を歩いていた伊藤拓也が静かに!と短く言ってくる。どうやら何か見つけたようだ。

俺たちは、すぐに静かに伊藤拓也の周りに集まると、伊藤拓也の視線の先を追う。


するとそこには、二人の女性剣士がゴブリンたちと戦っていた。

二人とも剣を構えて、ゴブリンたちに対峙している。


一方ゴブリンたちはその数を利用して、女性剣士二人を取り囲んでいた。


「……ゴブリンが、七、八、九。九匹見えるな」

「どないする?ここは助けたほうがいいんとちゃうか?」


多勢に無勢、ここは助けに入るべきだろう。


「待つっス、彼女たちの実力も分からないうちからの介入はマナー違反っス」

「マナー違反って、これはゲームじゃないぞ?」

「でも、彼女たちだけで対処できるなら、介入は横取り行為っスよ?」


……これは困ったな。


「それなら、いつでも助けられるように準備しておきましょう。

美咲ちゃん、葵ちゃん、ここは小銃より拳銃の方がいいわ」

「「はい、明日香さん」」


田辺美咲と小西葵は、すっかり中川明日香を頼りにしているな。

まるで、学校の先輩後輩のようだ。


女性たち三人が、ショルダーバッグの無限鞄の中に入れている自動拳銃型の魔導銃を取り出し、構えるのを見て、伊藤拓也と高橋健太も同じように自動拳銃型の魔導銃を構えた。


俺と長谷川大輝は、装備したままの自動小銃型の魔導銃のまま構える。


俺たちが構え終えるのが合図となったのかは分からないが、比較的錆びの少ない剣を持って構えていたゴブリンが他のゴブリンへ合図を出す。

その合図を待っていたかのように、女性二人の周りのゴブリンが一斉に襲い掛かった!








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― 新着の感想 ―
[一言] 善意で他人を助けたいのに、マナー違反だとか、横取りだとかマジで呆れた。 それならいっそ助ける度に報酬を要求するか、無視するかの方が良い。 こういう面倒臭い人間関係は大嫌いだな。 どいつ…
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