52 協力関係
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平日の放課後、水樹宅。
リビングには水樹と楓、そしてもう一人別の人の姿があった。
その人の正体は向井春馬。水樹と楓と一緒のクラスで水樹の友達。
しかし今日の春馬はいつもの元気が感じられなかった。
「春馬、色々聞きたいことがあるんだが、まずどうして家に来た?」
時はほんの数分前に遡る。
楓が帰宅してすぐに水樹も自宅に帰ってきた。そして二人で夕食を何にするか話し合っている最中にインターホンが鳴ったのだ。そして水樹が玄関に出てみるとそこにいたのが春馬で、今のように心ここにあらずといった様子だったため仕方なく家に入れた。
そして今この状況。
「ああ、ちょっと相談があってな」
「相談?」
何か面倒そうだ、水樹はふとそう思った。
そしてその予想はある意味では的中することになる。
「実は俺…………未来と喧嘩しちまったんだ!!!!」
「あ~そうか」
「反応うす!!」
「で、相談はそれか?」
「ああ、俺仲直りしたいんだけどさ…………どうすればいいか分からなくてよ。こんなの相談できるのお前くらいなんだよ~頼むよ水樹~!!」
「そういわれてもな…………」
頭を抱える水樹。
正直、男女間の和解の橋渡しなど一度もやったことがない。正直何ができるか分からない。
だが、ここまで頼られて断ることも当然できない。
「わかったよ」
「本当か!?」
「ああ、何ができるか分からないけどな」
「それでもいい!取り合えず一緒に考えてくれればいいから!!」
「お、おう」
春馬のいつにも増した圧に水樹は驚く。
「まあその前にご飯作るわ。春馬も食べてくだろ?」
「いいのか?」
「ああ、話はそれからだな」
「じゃあ私、手伝います」
「おう」
そう言って水樹と楓はキッチンへと向かい、三人分の夕食を準備する。
そんな二人の様子を見て春馬はある事を口にした。
「二人って本当にここでは仲いいよな」
「「え?」」
「いや、だって学校ではほとんど話さないくせに、ここではそんなに近い距離で作業してんのな」
「まあ、な?」
そう言って水樹と楓は互いの顔を見合って、
「もう慣れたよ」
「はい。今は一番この環境がしっくりきます」
「そうですか」
「なんだよ、春馬」
「いや、何も。それよりどうぞ作業に集中してくださいな」
それから少したってからテーブルには三人分の食事が並んだ。
そしてそれらはすぐにたいらげられ、いよいよ本題へと移る。
水樹と楓が隣り合った席に座り、向かい側に春馬が座る形で始まった。
「で、どうして春馬と神田は喧嘩したんだ?」
「そ、それはだな…………未来が、その料理作ってくれたんだよ。この前に日曜に」
「この前って、引っ越し作業の次の日か?」
「ああ。それで、俺いつもみたいに冗談で作ってくれた料理『まあまあ』って言ったんだ。そしたら未来が怒って…………ってどうして二人ともそんな冷めた目を向けるの?」
「いや、それは聞く限りだとお前が悪い」
「私もそう思います」
「で、ですよね~」
「あの…………分かってるのなら謝らないのですか?神田さんはきっと謝れば分かってくれる方だと思うのですが?」
「それは俺も同感だな。神田なら誠心誠意謝れば許してくれると思うけど」
すると春馬はさらに深刻そうな顔を浮かべる。
「謝ったさ。メールでも、勿論面と向かってだって。だけど未来まともに話聞いてくれなくてよ。俺どうしたらいいか…………」
どうやら春馬は本気でショックを受けているらしい。
別に春馬が最低という人間でないことくらい水樹には分かっている。前向きで明るい、何事にも真剣に取り組める人間それが春馬なのだから。
「ん~だとしたら神田にも何か考えがあるとしか考えられないな」
「そうなんだけど、それがわかんねーだよ」
「あの…………私が聞いてみましょうか?明日学校で」
「いいの?水面さん」
「はい。私もお力になりたいですし、それくらいでしたら」
「ありがとう!!!」
「じゃあ取り合えず今日はこのくらいにしとくか。今後の方針は明日の内容次第で」
その水樹の言葉に楓と春馬は頷き、今日の話し合いはそこで終了となった。
そして翌日、何故か未来の姿が水樹の家にあった。




