44 デートが始まる
評価、感想ありがとうございます。
迎えた休日、千歳とのデートの日。
事前に来ていたメールでの待ち合わせ場所は最寄りの駅前。
デートプランも考える必要は無いと聞いており水樹は内心ほっとしていた。
それでも一応男子としてのたしなみとして集合場所には10分前に着くようにしていた。
そして待ち合わせの午前9時。
駅のホームから千歳がやってくる。
「あ、お待たせ!」
彼女の服装はチュニックにショートパンツを合わせた涼し気な格好。
ゆえに少し足の露出度も高く、容姿もいいので自然と周囲の視線を集めていた。
「お、おう」
「どうかな?この服装は」
「似合ってる」
取り敢えず女性の服装は褒めるべし。これはどこに行っても共通してやらなければならないことだろう。だがそうは言っても目の前にいる千歳は可愛く、水樹がお世辞で褒めているわけではない。
千歳はそんな水樹の褒め言葉に笑みを見せる。
「へへ!ありがと!水樹君、今日はセットしてないんだね」
そう言って千歳が水樹の顔を覗き込む。
一応、水樹自身も髪をセットするべきと思い準備をしていたのだが、生憎ワックスをきらしていた。どうやら未来の以来の写真撮影時に頻繁に使ってしまったせいで元々容器が小さかったこともあるが、中身がほぼからの状態だった。
「あーちょっとな」
「なーんだ、残念」
「なんかすまん」
「別にいいよ。水樹君は今のままでも」
「そ、そうか」
少し照れる水樹。そしてそんな水樹の様子に千歳はくすりと笑い手を取った。
「じゃあ行こっか」
「えっと…………どこに?」
「まぁ任せて!」
余りにも自然すぎる動作で手を繋ぐという行為をとった千歳。そんな千歳の行動に水樹は少しドキッとしたのだった。
「ここかな」
そうして電車とバスを乗り継いで千歳と水樹がやってきたのは最近できたばかりの大きなショッピングモール。中には沢山のレジャー施設は勿論、フードコートに映画館などを有している優秀なモールだ。
「最近できたばかりのショッピングモール?」
「そう!映画とか買い物してみたいなって思って」
それはいかにもデートっぽいプランだった。
本来なら男子が女子をリードするべきなのだろうが生憎水樹はそのようなスキルを有していない。
ここは千歳に任せようと水樹は思い二人は手を繋いだまま、というか水樹が手を引かれながらショッピングモールに入っていった。
「まずは映画なんでどう?」
「うん、いいと思う」
「じゃあ何見よっか」
普段映画を見ない水樹は現在何が上映されているのかを知らない。
ゆえにすぐに見たい映画を決めることが出来なかった。
「俺は何でもいいから冴枝さんは見たい映画ある?」
「う〜ん。私か.....だったらアレかな?」
そう言って千歳が指を指したのはミステリーを題材とした映画だった。
(ミステリーか。正直分からないかもだけど案外面白そうだな)
「どう?」
「いいんじゃない?俺も見てみたいし」
「いいの?完全に私の好みだよ?」
「いいよ。俺だって楽しめそうだし。何より冴枝さんが楽しまないとだろ?」
「あ、ありがとう」
「じゃあ見に行くか」
そうして二人は券売機で券を購入。
ついでに飲み物とポップコーンも購入し上映されるスクリーンのある部屋へ向かった。
「面白かったな〜」
「そうだね〜やっぱりミステリーものは自分で推理する楽しさがあるよね!」
「だな。でも俺犯人とか全然わからなかったわ」
「私も。まさか犯人があの人だなんてね」
映画館をでた2人は観た映画の共通の話題に花を咲かせていた。結論から言えば映画はとても面白かった。
ミステリーに興味があまりなかった水樹も楽しむことができ、デートはいい流れになっている。
「次はどうする?」
「そうだな〜時間も丁度いいしフードコートにでも行こっか」
「了解」
そして2人は昼食中も何気ない会話を楽しみ、午後からはショッピングを楽しんだ。
二人のデートはしっかりとデートとして成り立っていたのだった。