38 夏の思い出
本日二回目の投稿です。
「ど、どう真田さん?」
「えっと…………どうもお二人の表情が硬く見えます…………せっかく二人ともいい容姿をしているのに勿体ないというか…………」
「表情が硬い、か…………」
そりゃあ先ほどから少しカップルらしい仕草や動作で写真を撮り続けている。正直恥ずかしくないわけがないのだ。
「す、すいません!無理を言ってしまって…………」
水樹と楓が若干困った感じでいると真奈美が頭を下げる。
「い、いや…………こっちこそ上手くできなくてごめん」
「そうです。上手くできないのは私たちにも問題があります。…………ですがやはり急に恋人らしくというのも難しく…………」
やはり初心者の水樹と楓にとってはモデルになるというのは些かハードすぎたようだ。ましてや恋人という条件付きともなれば猶更である。
「そうですよね…………まだ時間もありますし、もう一度休憩しましょう」
「そうだな」
「はい」
こうして少し長めの休憩が設けられた。
一方の未来と春馬はこちらの気も知らず海に入ったり浜辺を散策とバカンスを楽しんでいるようだった。見るからに春馬はどうやら先程の水樹の言葉で一応は元気を取り戻したようだ。連れられる未来の顔も満更でもなさそうで水樹は内心安心した。
そして一方の水樹と楓は日差しを避けるため、準備されたパラソルの下で腰掛ける。
「意外と難しいものですね、写真のモデルというのも」
「確かにな。どうも羞恥が勝ってしまう」
「同感です」
お互いがお互いを意識して思ったような表情を作ることができない。
実際に自分がやってみて初めて人の苦労がわかる、そう実感せざるをえなかった。
「でも少し嬉しいです」
「何が?」
「恥ずかしいと思ってくれているということは一応1人の異性として見てくれているのですよね?」
「そりゃ、な」
確かにひとつ屋根の下手間生活する仲。近すぎる距離感は互いに異性と感じる気持ちをすり減らしていくだろう。距離の近さといえば幼なじみや兄妹なんかもそれに入るだろう。
「その、水面は嬉しいのか?異性と見られて」
「嬉しいか、と聞かれると分かりませんが悪い気はしません。でもそれは峰崎くんだからなのでしょうね」
向けられた無邪気な笑顔に俺は今までで一番大きく心臓が高鳴ったと感じた。
「そういうのを自然に口にするのはずるいと思う」
「そうですか?でしたらいい気味です」
「何が?」
「普段バカにされてるお返しです」
「何だそれ」
二人は声を出して笑いあった。少し大きめな水樹の笑い声、控えめで大人しい楓の笑い声。
そしてシャッター音。
「「え?」」
「す、すみません!!」
2人の至近距離に向けられる真奈美の持ったカメラのレンズ。謝りながらもいい写真が撮れたとまんざらでもない顔をしている。
「お前らやっぱお似合いだわ」
「そうだね。これなら最初っから自然体で良かったんじゃない?」
気付けばその場には未来と春馬もいて、水樹と楓の様子を見て互いに顔を向き合わせてくすくす笑う。
一方の水樹と楓は羞恥とやらで直ぐに距離をとった。
「おいおい、もっと楽しめって」
「私たちのことは気になさらず」
春馬と未来は生暖かい笑みを、真奈美はカメラのレンズを二人に向けるのだった。
「今日はありがとうございました。おかげでとてもいい写真が撮れました」
「そ、そう…………良かったね」
「はい!それも峰崎君と水面さんのおかげです」
日も落ちかけた浜辺で水樹は隣に腰掛ける真奈美と話していた。
視界の先には春馬と未来、それ混ざって楓が思い思いに遊んでいる。
「まあそうだけど、お礼は神田さんに言うといいよ」
「未来ちゃんに?」
「うん。そもそもこうやって写真の案を出してわざわざ家まで頼みに来たんだよ、神田さん。それもどれも真田さんの力になりたいからって」
「そうだったんだ…………」
真奈美が視線の先で遊ぶ未来に視線を向ける。
「私こういうのには縁が無くて…………」
「縁?」
「はい。こうやって沢山の人と休日に遠出したりすることです。だから写真部で夏らしいものの写真というお題が出されたときも風景しか撮ることができなくて…………先輩にもつまらないって…………」
「そんなの俺も一緒だよ」
「え?」
「俺だって自分から外出するほどアウトドアじゃない。それこそ…………水面と知り合ってからだよ。あいつがいて自然とキッカケができて気づけば周りに人がいて」
夏休みに入って夏祭りに出かけたのも、こうして海に行くのも水樹が楓と出会うまでは全く想像していなかったことだ。思い出してみればキッカケは楓だったのかもしれない。
「仲がいいんですね。水面さんと…………」
そんな水樹の話を聞いてか、真奈美はそういった。
その言葉に水樹は苦笑して答える。
「…………そんなことは無いと思う。最初の頃なんて一回盛大に喧嘩したことだってあるし、今でも時々考えてること分からないよ」
「そうですか?でも水面さん…………峰崎君と話しているときは他の人と話すよりも断然楽しそうですよ?学校で中々見せない顔だと思います」
「そ、そうなんだ…………」
普段とは違う、楽しそう、というワードに若干戸惑う水樹。
だが少しでも打ち解けられているのならそれは嬉しいと水樹は感じていた。初めこそお互いが急に接することになってぶつかったこともあったが、今ではある程度気が知れた仲になっているのかもしれない。
(あとはもう少し生活が良くなると嬉しいんだけどな…………)
水樹は未来に連れられる楓を目で追った。その間少し楓と目があったと感じたのは気のせいだろう。
そしてそんな水樹と真奈美に春馬が海の方から声を掛ける。
「お~い!水樹と真田さんも一緒に遊ぼうぜ~!!」
その声を聞き、水樹は立ち上がった。
そして真奈美に手を差し出す。
「真田さんも」
「わ、私は…………」
「縁がない?そんなことないだろ。神田さんがいて、今は周りに沢山の人がいて、楽しまないと損だろ?」
その言葉を聞き、少し戸惑いながらも真奈美は水樹の手を取った。
そして三人がいる方に水樹と真奈美は向かった。
気付けば水樹の身の回りには女の子が増えていた…………(想定外)
内容が少し変更になっています。ご了承ください。
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