25 元気過ぎるのも難点
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「相変わらずあんたって本当に料理得意よね〜」
春香はそんな事を呟きながらそうめんをすすった。
「で、何で春姉が一週間もここにいることになったんだよ。家はどうした?」
「ん〜大した理由はないわよ。ただ水樹も夏休みに入ったかな〜って思って顔を拝みに来ただけよ」
全く持って理由が不純すぎる。とても所帯を持つ人の発言には思えない。
「その、悪かったな水面」
「え?」
「いや、こんなうるさい人が居たら落ち着けないだろ?」
「い、いえ....そんなことは」
「そうよ!楓ちゃんも私の事お姉ちゃんって呼んでいいのよ?」
「いえ、それはちょっと...」
若干顔をひきつらせる楓。
「あら、それは残念。それで楓ちゃんはどのくらい家事ができるようになりたいのかしら?」
「えっと...独り立ちできるくらいには...」
「そう、だったら水樹に教わっとけば問題ないと思うわよ」
「はい。私も信頼してますので」
春香と楓の会話がクリアに聞こえてくる。
水樹は少し恥ずかしいと感じた。
「あらあら、本当にどうしてそれでくっつかないのかしら」
「春姉それは余計だ」
「何よ、可愛げがないんだから。それよりも水樹、あんたまさかそんなだらしない格好で外出してないわよね?」
春香が指摘するのは水樹の髪と服装だった。
「なんだよ、別にだらしなくは無いだろ?」
現在の水樹の服装はラフな部屋着。別に外出しても傍から見れば気にならない程度のものだ。
「あんた、勿体ないわよ?楓ちゃんも思うでしょ?」
「おい、急に水面に振るのはやめろ。困ってるだろ?」
「まぁいいわ。一週間もあれば好き放題できるし」
「あの、不安しかないのだが?」
「そんな警戒しなくてもいいわよ。私があんたも楓ちゃんも可愛くコーディネートしてあげるから」
言い忘れていたが春香は自宅勤務のコーディネーターだ。ネットで最新の服や髪型を調べ、流行のファッションを作り出す一風変わった仕事だ。
「あのな、別に料理を作るのは構わないけど俺たちの邪魔だけはしないでくれよ?」
「分かってるわよ。空いてる時間に楽しませてもらうから」
「あー不安しかないわ」
「まぁいいじゃない。それよりもご馳走様、美味しかったわよ」
「そうですか」
「夕ご飯は冷やし中華がいいなー」
「春姉は少し場をわきまえることを覚えたらいいよ」
「全く、可愛くない。それじゃあちょっと出かけてくるわね」
そう言って春香は食器をそのまま放置してリビングを出ていった。
「食器ぐらい片付けろよ.......」
水樹は部屋を出て行く春香の背を見ながら呟いた。
そして楓の方に体の向きを変えた。
「それよりもゴメンな急に」
水樹は初対面なのに馴れ馴れしく楓に接してくる春香の行動について謝った。フレンドリーが長所である春香でも流石に限度というものは存在する。
「いえ、私は構いません。それに明るい人なのですね」
「少しは自重して欲しいけどな」
「それよりも峰崎くん。私部屋を使ったままでいいのでしょうか?」
「あー気にしなくていいぞ?どうせ春姉はどこでも寝られるから。でもまぁ春姉が驚かない程度に片付けはしとくか」
「そうですね...」
「にしても帰ってくるなら連絡くらい寄越せよ..」
そう言って水樹はおもむろにスマホを取りだした。
「あ、そう言えば連絡先交換してなかったっけ」
「そ、そうですね」
楓はそっと目をそらす。
「あのさ、交換しとくか?」
「は、はい。そっちの方が楽ですしね」
少し気まずい空気の中でお互いが連絡先を交換した。
水樹のアイコンは街の風景。
落ち着いた雰囲気のアイコンだ。一方の楓のアイコンは猫だ。相変わらずクールなイメージからは想像がつかない。
互いに連絡先を交換した2人はじっとスマホの画面を眺める。
不意に水樹が楓の方に視線を向けると、少し笑ったかえでの姿がそこにあった。
(なんなんだか...)
恥ずかしくなった水樹は再び画面に視線を落とす。
そしてある事に気がついた。
(あれ?水面の誕生日...明後日じゃね?)




