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死に至る病

作者: 潮田ぶち

 ()()は、必ずしも不治の病ではなかった。

 ひとつ前提としておくならば、病としてまだ認められていない。

 だと言うのに、少なからずの大人たちが一度は罹患し、その多岐にわたる症状に苦しめられたはずである。あるいは自らが冒されていると自覚することなく、命を散らす者すらいたことだろう。

 多くの症例があるにもかかわらず、不思議と研究は発展しなかった。周囲のレッテルや冷遇を恐れて、罹患者は隠すからだ。そのため政府は依然として稀な病気であるという認識でおり、別段な措置も取られていない。どれほど英明な医師であろうと、診断も治療もままならず、ただ時代の変遷とともに収束するのを眺めているだけである。それが原因とは断定はできないが、世論でも未だに、この病を心の病気だとらすら言う始末であるのは、彼らが冗長しているといって過言ではない。


 研究を放棄されたこの病には、有効な治療法は確立されておらず、対症療法も存在しない。

 他者が差し伸べる手すら無力に、ただひたすらその病に身を弄ばれ、抗うことなどできず、しかし進行するほどに麻薬のような恍惚を生み出すのだ。その甘美な顔の裏では漲る生命力を貪らんと黒い沼を隠し持っている、そのことに気づいた賢明なる者は、その罠から逃れようと己を律し、病に打ち勝つだろう。

 惜しくもその芳しい手に掛かってしまった者は、最初は手の内にいるとも思わない。救いの蜘蛛の糸は確かにあるだろうが、潜伏期間から初期症状にある大半は隠し通そうとするのだから、蜘蛛の糸は己には不必要だと否定される。次第に黒染めの血の池に深く深く潜り込んでいるというのに。

 やがて、発症し、いわゆる急性期になると最早、辺りが暗闇に染まっていようとも多くの罹患者は怖れない。手を伸ばす先には、同じように罠に掛かりながらも自信溢れた声で笑う慢性期患者がいるから。

 この先は明るい、いや、長い暗闇すら楽しいぞ、と。


 その罹患者の多さはコミュニティ、世代を超え、漂う電波のなかで情報が錯綜する中、いつの間にか新造語になるほどに人々に浸透した。

 若人を食い物にするサブカルチャー界隈では、面白おかしく罹患者を描写することすらある。それもまた、罹患率を高める一助となっていると、どれほどの大人が理解しているのだろうか。それとも、理解していて、そのような者達から搾取するために、助長を蓮の池から見下ろしているのかもしれない。奈落の底で戯れる弱者たちを嗤いながら。


()に恐ろしき、その病の名は、厨二病という。

(社会的な)死に至る病

途中で飽きたけどそもそも膨らませる話でもなかったと思いましたどうもありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[一言] 何かとても文章が堅苦しかったので「これはオチが楽しみだな」とか思ってたら・・・ 「厨二病かよww 確かに難しく言えばそうなるけど!!」 とても面白かったです。
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