表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼姫異世界放浪記  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第参章 旅立ちの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/50

第参章  3-11

リーナが町の人たちを連れて返ってきたのは、出発した翌日の昼前だった。

町の自警団と駐在兵士で三十人。

その代表であるリーダーと町の役人に詳しい話をする。

フリーランス組合の証と依頼書を見せ、自分らがゴブリン退治に向っているのと入れ違いに村が襲われたこと。

それに気がついて返す刀で村に戻ってきたときはすでに遅く、村は全滅していたこと。

そして、村でのゴブリンとの戦い。

それらを説明し、村の外れに掘った穴にゴブリン、倉庫の中に村人の死体を安置している様子を見せる。

それらを見て、来た者の何人かは嘔吐し、気分を悪くするものもいたが、そんなことは私達には関係ない。

ともかく、依頼書にサインが欲しいというと、町の方に言ってくれと言われて私達は彼らの乗ってきた馬車の一台に乗って町の方へ戻る事となった。

町でも、町長や町の役員などに説明したが、すぐには信用されなかった。しかし、一緒に戻ってきた自警団の町の役人の話から間違いないことがわかると彼らは態度をころりと変えた。

それはそうだろう。

依頼を受けてゴブリンを殲滅したフリーランス組合の登録者に冷たく当たるわけにはいかないのだろう。

だって、物騒なこの世界では、いつフリーランス組合の人間にお世話になるかもしれないのだから…。

実に物騒な世の中だと思う。

まぁ、フリーランスの自分が言うのもなんだけど…。

ともかく、それでやっと町長のサインを貰い、私達は貿易都市アルミンツへの帰途に着いた。

あまり後味よくない結果だったが、まぁ、どちらにしてもハルカの秘密栽培という事もあるから、結果的には後味がよくなるという事にはならなかっただろう。

ただ、私達四人が互いの事を知り、信用できるということがわかったことだけもよかったと思うことにする。

ともかく、これで私達四人はきちんとチーム登録をするメドがたった。

ただ、もめたのはチーム名だ。

それぞれ意見が合ったが、結局は『アキホがリーダーだから、あなたが選べ』と言われた。

こういうのは好きじゃないんだけどなぁ…。

自分としては…。

結局、迷った挙句、『シャイニング・アロー』というチーム名にした。

『輝く矢』と言う意味だが、どうもこの世界では意味合いが違うらしい。

まぁ、言語が違うのだから仕方ないところだ。

だから、私が異世界から来たと知っているミルファは別して、リーナとノーラの二人には、私の祖国の言葉だと伝えてある。

二人とも少し考え気味な表情だったが、まぁ納得したみたいだった。

まぁ、それぞれの意見が合ったからなぁ。

ちなみに、リーナは「カウラカンサ」、ノーラは「サラウキサン・ドラウ」というチーム名の意見をだしていた。

「カウラカンサ」は、古い神話にでてくる有名な竜の名前で、悪神を倒してこの世界の闇を切り開き、光を導いたという。

「サラウキサン・ドラウ」は、以前ノーラがいた傭兵団の一人が言っていた伝説の武器の名前で、その武器を持つものは負けなしと言われていたらしい。

二つとも、なかなかいわれのある名前だったが、イマイチピンと来なくて却下となった。

まぁ、帰り道での時間を有効に使えたうえ、互いの事をもっと知りえたのはよかったと言う事にしておこうかな。

ともかく、帰って来てすぐにフリーランス組合に行き、依頼の書類の提出と結果の報告。

その結果の確認の為、依頼料の支払いは待ってくれといわれたこと以外は、時間がかかったものの、予定内の範囲であった。

まぁ、村が全滅しちゃったからなぁ。

支払いはないかもと思っていたが、一応、依頼金は前払いだそうだ。

だから、確認しだい支払うとの事。

よかったタダ働きにはならないようだ。

少しほっとした。

なお、、ハルカの実と葉の件については、フリーランス組合には話さなかったが、リーナがブローラントの方に資料と報告をあげて説明をしている。

こっちもブローラントが動いてきちんと裏を取るらしい。

まぁ、後は私達がいろいろする必要性はない。

そんな感じで、なんとか全てを終わらせて私達は『湖畔の女神亭』に帰って来た。

「お帰りっ。無事だったみたいだねぇ…」

そう言って出迎えたくれたのはミリーだった。

しかし、いきなり抱きつかれたのは驚いた。

どうも、嫌な予感がしたらしい。

ミルファ曰く、ミリーの嫌な予感はよく当たるらしく、今回の程度で済んだのはまれだという話だった。

しかし、実は私達の知らないところでこの事件の余波は広がっていたのだ。

それも最悪な形で…。



薄暗い部屋の中、十人のフードを被った人影が丸いテーブルを囲むように座っていた。

わずかにあるろうそくの炎がゆらゆらと揺れて人影がまるで幽霊のように揺れている。

顔が見えないこともあり、実に不気味な雰囲気だ。

そして、壁に大きくかけられている蜘蛛のような紋章が刺繍された旗。

それ以外の装飾品もなく、がらんとした部屋だ。

そして、その中の一人が立ち上がって報告している。

「なに?ハルカの秘密栽培をしていた村の一つがゴブリンの襲撃を受けて壊滅したと?」

その報告にイライラしたような声で座っている一人が呟くように言う。

「はい。ただ、末端の小さな村なのでたいした被害にはならないかと…」

「そうか。なら問題はない。そんな小さな事を報告するな」

また別の誰かがそう言う。

しかし、報告者の言葉はそれで終わらなかった。

「実は…この件で気になることがございまして、今回の議題に上げさせてもらいました」

「気になること?なんだそれは…」

「実は、この村の依頼でゴブリン退治にフリーランス組合が動いていたのですが、その組合に派遣されたチームに少し気になる点があったのです」

「だから、何だ、気になる点と言うのは?」

イライラしたような声が聞き返す。

「はい。その派遣されたチームのうち、二人がナグモの関係者だったので…」

その言葉に、いや正確に言うと『ナグモ』という単語に、その場にいた全ての人たちの口からため息とも取れる呼吸が漏れた。

「『ナグモ』か…。確かに議題に上げる必要性はあるな…」

さっきまでイライラしたような声で聞き返した男が疲れたような声で言葉を漏らす。

彼らにとって、『ナグモ』と言う単語は無視できない存在であった。

「それで…関係者と言うのは?」

別の声が聞いてくる。

「はい。アキホ・キリシマと言う名前のナグモの血縁者と、ナグモの部下でミルファ・エントレシス。この二人です」

「ミルファと言うと…」

「はい。あの爆炎の悪魔と言われるミルファです」

「そうか…。あの危険人物の一人か…」

「もう一人のアキホと言う人物は?」

「残念ながら、そちらはまだ情報が集まっておりません。なんでも、ナグモの血縁であり、ナグモと同じような黒髪を持つ独特の雰囲気の女らしいとの事です」

「あのエルフが一緒についてまわっていると言うのなら、かなりの重要人物か、或いはなかなかの手腕の人物と言うことだろうか?」

「さすがに、まだ情報がほとんど入ってきていない為、なんともいえませんが…あの『ナグモ』の血縁でございます。気をつけるにこした事はないかと…」

「確かに…」

「そのとおりですな…」

「調べておく必要はあるな…」

「よろしい。では、情報収集を続けたまえ。必要なら、連中のチームに接触することも許可しょう。ともかく、不安要素は徹底的にチェックしていくんだ」

リーダーらしき人物が話をまとめる。

「はい。了解しました」

「よいか、決して我々が動いている事を悟られぬように…」

「仰せのままに…」

そう返事をして立っていた人物は椅子に座った。

そして、別の男が報告の為に立つ。

「えー、それではエルシフルの密売の件でございますが…」

話し合いは、まだ終わりそうにない。

議題や報告は山のようにある。

それほどこの組織は大きいのだ。

だが、その場にいる者にとって、それは苦痛ではない。

彼らは、自分らの欲望によって蠢いていているのだから。

そして、その会合は深夜、いや朝方まで続いた。

そう、この世界では、悪いやつほど眠らないのだ。

これで第参章、終了でございます。

次の第四章も近々、投稿する予定です。

お楽しみに…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ