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少し不思議なもう一つの世界へ!―魔法と宇宙と俺幼女―  作者: ヤマト・シアキ
もう一つの世界
2/22

転生のご案内

 目が覚めると市役所の受付みたいなところに座っていた。


「どこだここ? 俺マジで死んだのか?」


 体の痛みは綺麗さっぱり消えており生前より調子いい……かな? 隣にズラーっと並んだ受付に、まばらに人が座っているのが見える。


「では瀬尾(せお)マサト様、これより転生手続きとなりますがよろしいでしょうか」


 不意に声をかけられ体が跳ね上がる。いつの間にか目の前の受付にスーツ姿の男が座っていた。


「えーっと、ここって天国……でいいんですか?」


冷静に考えるとアホ丸出しである。市役所でこんな質問とか頭を心配されるに決まって――、


「えぇこちらは天国魂転生案内所。瀬尾(せお)様が生前に天国と呼んでいた場所でございます」

「うそぉ」

「この度は大変お気の毒でございました。私、天職員の鈴木と申します」


 深々と頭を下げられこちらも反射的に頭を下げてしまう。それから、その男は俺に対して、さまざまな確認をしてきた。死亡原因、遺言書の有無、終活はしていたかなど、おおよそ高校生にする確認ではなかった。


「ご協力ありがとうございました。瀬尾(せお)様のカルマ値でしたらまた同じ世界での転生となる確立が高いですのでご安心ください」

「えーっとそれってつまり赤ん坊から――」

「そうなりますね。転生でございますから」

「記憶とかはー、やっぱり抹消?」

「そうなりますね。転生でございま……どうしました?」


 別のスーツの男が、話をしていた鈴木さんに耳元で何かを伝える。少しの間、目の前で話し合いは続き、終わったかと思えば鈴木さんはこちらに向き直りこう言った。


瀬尾(せお)様失礼致しました。瀬尾(せお)様にお会いしたいという御方がお見えになっております」

「え? ま、まさかヨシフミ達まで死んじまったっていうんですか!?」

「いえいえ、ご安心ください。稲葉(いなば)ヨシフミ様と長谷(はせ)カズミ様、どちらもご健在でございます。そしてお会いしたいという御方なのですが、世界の管理を任されております神様でございまして」

「え? カミサマ? なんで高校生の俺なんかを?」

「さぁ、こちらとしてはさっぱり……とにかく直接お聞き頂けますでしょうか?」


 そう言われて案内された部屋は小奇麗な談話室だった。部屋の真ん中にテーブル、それを挟むようにソファが2つ置かれており、部屋の隅には観葉植物が置いてあった。とりあえずソファに座る。


 今から神とご対面するのに供え物とか生贄用意しなくていいんだろうか? なんて事を考えているとドアが開き始めた。

 正直、期待している部分はある。何せ神様だ。高校生になっても中二病は治らなかったよ! 女性であれば美しさや妖艶さ、男性であれば威厳や尊厳を感じられることだろう。ちょっとワクワクしている自分を抑えながらドアの方向を見つめる。

 そして、ドアが開ききりそこに立っていたのは、

キメ細かい波状の巻き髪、黄金率を想起させる綺麗にカットされた口ひげ、宇宙を思わせるほど星が散りばめられたスカジャンにジーパン、全ての光を吸い込みそうなサングラスに太陽を感じさせる黒い肌――。


エ○ィー・マー○ィに似ていた。


「ハロー! マイネームイィズ、エイディィィィィィ!」


 名前も若干似ていた。

 予想外の神の容姿に驚いているとその神は俺と反対側のソファにドカッと座り話を切り出してくる。


「突然だが異世界転生に興味は無いカい少年」

「Hi……えっ? い、異世界ですか?」


 英語の授業なんて真面目に受けたこと無かったからまずいなーと思っていたら日本語だったのでちょっとびっくりした。


「そうさ異世界ダ。生前の世界でも夢物語としてあっただロ! 他の世界で産まれ直シテ記憶そのまま、能力をもらってその世界で大活躍すル! その異世界転生サ!」

「まぁ、興味がないかと聞かれるとすごい興味がありますね」


 当たり前だ。異世界といえば剣と魔法、そしてハーレムと、現実社会に疲れきった日本人なら必ずと言っていいほど食い付く代物だ。


「そこでだ。実は今、私が引き継いだばかりの少し不思議な世界があるンだが、これの管理が上手くいっていなくてネ。その世界が不安定になっていル原因を取り除いてほしいんダ」


 少し不思議な――なるほど剣と魔法のファンタジー世界か。


「えーっと、その世界で俺は何をすれば?」

「ウム、それなんだが……ある男を捜して『神核』を取り返してきてほしイ」

「神核?」


 エデ○ー・マ――神様はゆっくりと立ち上がり、俺に背を向ける。


「『神核』とは神の力の源。世界を創造し、管理するために絶対に必要なモノなんダ。それがある男に奪われてしまったのサ」

「なるほど、で、その男の居場所とかは――」

「一切不明!」

「はい?」

「実は奪われた神核のせいで君が行く予定の世界は一切、覗き見ることができなくなってしまったんダ! だから1から探してほしイ!」


 予想外の神ングアウトに冷や汗が止まらなくなってきた。正体不明の男を異世界に行って捜して来いとかアバウトすぎないか?


「頼むヨー、君が行ってくれれば少なくとも君から見た世界は見れるんだヨー」


 あれ? これ結構マジで危ないヤツでは? 異世界に飛んでよっしゃラッキー! とかの雰囲気ではないな? 


 流石の俺だって危機管理ぐらいはできる。危ないものには近寄らない。基本中の基本だ、断ろう。


「すいませんやっぱこの話なかったことに――」

「あぁそうだ、どうせ異世界に飛ぶんダシ、よければ君の望みの容姿に変えてあげよう。何かなりたい自分とかのイメージってあル?」

「『ピース・ゼロ』ってゲームなんですけど、一番上のセーブデータでお願いしまぁぁぁぁぁぁぁす!」


 高校生なんだから何も考えずに答え出る事もあるさ。まだ人生がペラッペラなんだから。これから行くのはハーレムウハウハの異世界でしかもイケメンになれるんだぜ。乗るしかない。

 でも、俺はこの言葉をこれから始まる生涯の間ずっと忘れない。()()()


「いい返事ダ! ミスターセオ! やはり私の目に狂いは無かっタ! では早速、転生の間に行くゼ! ヒアウィゴー!」

「ウーイエー!」


 神様がリズムを刻みながら、廊下を練り歩き、その後ろをハイテンションな高校生が歩いているだけなのに何故かすれ違う人? 天使? 全員が可愛そうなモノを見る目でこっちに視線送ってくる。なんでだろう。

 神様はズンズン進んで行き一番奥の扉を勢いよく開けた。中は薄暗く照明も無かったが、中央の魔方陣らしきものが薄く、そして青白く光を放っている。

 天国来てから始めてファンタジーなものでてきたな。


「では準備はいいナ! ミスターセオ! これより君は異世界へ転生する! 転生後は一番上のセーブデータの姿でよかったナ!」

「イエッッッサー!」

「では魔方陣の中央ニ立つんダ」

「この辺ですか?」

「そうそうソコソコ。ではイクゾォー!」


 神様が指パッチンすると、魔法陣が強い光を放ち始め俺の体を包み始める。

 気合を入れなければ。これから俺は剣と魔法のファンタジー世界を救う旅に出るんだ。そして、イケメンにしてくれる神様に報いなければならない。


「がんばってきます! 神様!」

「アァ! 期待しているぞミスター……アーいや、これからは()()()()だな! シーユー!」


 今この神なんつった?


「えっ神様今なん」


 シュゥンッという音と共に魔方陣の光は部屋の中を全て照らすほどに光り輝き、光が収まると、部屋の中には神様以外誰もいなくなった。

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