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少し不思議なもう一つの世界へ!―魔法と宇宙と俺幼女―  作者: ヤマト・シアキ
惑星アルスア
14/22

ショッキング幼女

 ゼイクスは階段をニヤケながら下る。その手には地下室で待つ、幼女のための昼食であるパンが握られていた。階段を下りきると狭い通路を進んでいき扉の前に立つ。

 軽く咳払いをしてこの先で待つ幼女を思い浮かべる。あの柔らかい肌、歳不相応のふくよかな胸、そして愛くるしい顔立ち、ゼイクスは今にも弾けそうな性的興奮を抑えながら小窓を開けた。


「はぁーいお嬢ちゃーん、メシの時間だ――――――!」


 小窓を開けた先に広がっていたのは――惨劇。


 壁一面、床一面が赤色に染まり、部屋左側の隅に血だらけの幼女が横たわっていた。


「なん、なんだよこれぇ……どうなってんだよォ!」


 ゼイクスは急いで鍵を開けて中へと入り、幼女に駆け寄る。


「おい! 生きてるよなぁ!? 死んじまってないよなぁ!?」


 幼女の肩を掴み、強く揺さぶるが目を閉じて口を開ききったままで反応はない。全身血だらけで怪我をしている箇所もわからない。ゼイクスはどうしていいかわからずそのまま幼女を抱き上げた瞬間、幼女の手から小さな短剣が零れ落ちた。煌びやかな装飾の付いた短剣で一見すると玩具の様に見えたが、確かな重みのある音で床へと突き刺さった。動かない幼女を一旦、その場へ置いて短剣を引き抜く。それは紛れもなく本物の剣だった。


「う、ウソだろ……自殺……? お、俺のせいか……? 俺の相手をするのが死ぬほど嫌だったってのか? ど、どうすんだよコレ……カイネとボーロになんて説明したら……」


 ゼイクスは震えながら考える。たとえ手を出したとしても生きてさえいれば売れると考えていた。多少値が落ちたとしても、それぐらいなら少し叱られるだけで終わると思っていたのだ。あわよくば全員で楽しんでから売ってしまってもいいと。しかし、死んでしまってはどこも買い取ってはくれない。カイネとボーロに対する言い訳を何とかひねり出そうとする。そして、言い訳を必死に考えるあまり、ゼイクスは次に起こる出来事に反応するのが遅れてしまった。




――――死んだと思った幼女が立ち上がり、部屋の出口へと走ることに。


「……は!?」


(よっしゃあ! 引っかかりやがった!)


 狭い通路へと出た俺は混乱しているゼイクスへ向き直る。残念だったなぁトリックだよ。声が出せないので精一杯の侮辱を込めて舌を出し、人差し指で右目の下瞼を引き下げる。古より伝わる伝統侮辱法あっかんべーである。


「こ、このガキァ!」


 顔を真っ赤にして、こちらへゼイクスが向かってくる。そして通路へと出てきて俺を押し倒そうとする。


「もう我慢ならねえ! 今ここで()ってやるよォ!」


 そう激昂するゼイクスに俺は手を突っ込んだままのポーチを差し出す。そしてゼイクスが飛び掛ってくると同時に手を引き抜いた。


(出でよ! クマッフィー!)


 ポーチから取り出したのは家具アイテム『クマッフィーのぬいぐるみ[ウルトラビッグ]』。ゲーム内マスコット『クマッフィー』というクマのような見た目のぬいぐるみなのだが、とにかくデカイ。ゲーム内キャラクターの身長を2(メートル)に設定してもその2倍はあるかというデカさでゲーム内の自室を圧迫する。女性プレイヤーには人気だったが男性プレイヤーからはデカ過ぎてキモイ、邪魔、爆破するに限る、など散々な扱いを受けた不遇な家具アイテム。


「な、なんじゃこ――!? グッ、うぉぉっ――――ぷぎゅっ……」


 ポーチから不自然な膨らみ方で噴き出したそれは、ゼイクスの体を受け止め、持ち上げながら、なお膨らみ続ける。最終的にゼイクスは天井とぬいぐるみに挟まれ、埋もれてしまった。ヨシ! 目撃者は消えたな!


(あー、しかし脱出するためとはいえせっかく買ってもらった服がグッチャグチャだぁ……洗濯して取れるかなぁこの()()()


 そう、何を隠そうあの部屋や、この体中の赤い液体、先ほど取り出した『中級レッドメイト』である。壁や体中に手で塗りたくり、床にこぼしまくって、最後に使えない短剣武器を握って倒れていればお手軽ショッキング自殺現場の完成である。ね、簡単でしょ?


 階段を駆け上り、ロビーに人がいるか確認する。幸い人影はなく、出口も開いたままだった。物音を立てないように慎重に、歩みを進める。


「ゼイクスー、手は出すなって言っただろうが」


 突然、2階へと続く階段から声がした。カイネだ。しかし、下りてくる様子はなくそれ以上声がすることもなかった。


(あ、焦ったー。今あの通路を見に行かれでもしたらマズイ。さっさとここから逃げよっと)


 そしてようやく出口へ辿り着き、ガッツポーズをとりながら出口をくぐる。やったぜ、これで俺は自由の身。さっさとニーナさんのところまで戻ってここであったことを事細かに説明しなければ――。


「おいガキ、なんで外に出てんだ」

(ん?)


 声がした方へ顔を向けると、俺に嵌められている首輪と同じ物を持ったボーロが立っており、目が合う。あっ、コイツいるの忘れてた。


「カイネ! ゼイクス! ガキが逃げてんぞ!」

(あぁぁ! せっかくうまくいってたのに!)


 カイネがボーロの声を聞き、階段を駆け下りてくる。俺は誘拐犯の魔の手から逃れるため無我夢中で走り出した。

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