上
書きたかったシーンを書くために書き始めたものです。
Twitterで全て一度上げました。
それを少しだけ変えております。
平和な時が流れていた。
大陸には四つの国が同盟を組んでいた。
花ノ国。鳥ノ国。風ノ国。月ノ国。
四つの国は、微妙なバランスで保たれていたが、一番力を持つ月の国の当主が、病死した。
それを機に、四つの国のバランスが崩れてしまった。
今か今かと四つの国、全てを我がものにしようと、目論んでいた鳥ノ国が、月の国に侵攻してきたのだ。
当主を失ってすぐの月ノ国の結束力は、皆無に等しく、国の半分以上の領地を奪われてしまった。
領地を取り戻そうと、月ノ国は当主を立て、鳥ノ国と戦争を始めた。
その戦争に花ノ国、風ノ国も巻き込まれてしまったのだ。
戦いを好まない風ノ国は、すぐに鳥ノ国に降伏をし
、風ノ国は無くなった。
花ノ国も戦いは好まない。しかし、この国を無くしたくないという思いで、当主のフジシロは戦いことを選択した。
花ノ国は、カラクリ作りが盛んに行われていたため、カラクリよる国の守護を主にしていた。
そのカラクリに目をつけた鳥ノ国は、花ノ国に必要以上の襲撃を繰り返していた。
当主、フジシロは疲弊していく兵士達を思い、この戦いに終止符を打つことを考えていた。
しかし、国の民たちは、国を守り続けたいと更なるカラクリを作り、兵士も増員していった。
そんな折、フジシロの側近であった、トラフジとイチフジ、他家臣数名が、鳥ノ国へ離反したのだ。彼らの離反に激震が走るが、フジシロは気にしていない様子だった。だが、二人とともにフジシロを守っていたミツフジは、戦場で二人を見つけると、斬りかかっていった。
鳥ノ国との戦争が、一年四ヶ月過ぎた頃、海を越えた大陸を統治する雪ノ国からの使者が来た。
兼ねてより、同盟を結ぼうとしていた雪ノ国から、花ノ国の民たちの避難を提案してきたのだ。
「殿、この土地を守るのなら、鳥ノ国に降伏する方が……」
家臣の言葉に、フジシロが首を振る。
「鳥ノ国にいる間者からの報告を聞いた。鳥ノ国に降伏した風ノ国の話だ。国の土地は焼け野原となり、風ノ国の民たちが、皆殺しにされたらしい」
「そんな、酷いことが……」
「ですが、雪ノ国も安全とは限らないのでは?」
「そうじゃな。しかしな、儂は雪ノ国を信じてみたいと思う」
ーー雪ノ国を統治する当主は、花を美しいと言ってくれたーー
フジシロはそれを信じたいと言った。主君のその言葉に、異論を唱えるものはいなかった。
その日から、民たちを雪ノ国に、避難させる方法の話し合いが始まった。
それから二ヶ月。
雪ノ国へ行くには船で海を渡る必要があった。しかし、その船の定員も限られている。花ノ国には、海を渡る術がないため、全て雪ノ国に頼むしかなかった。
そのため、避難に時間が掛かってしまっていた。そして、花ノ国の民たちの大半が、雪ノ国へ避難することが出来た頃、事態は急変した。
突如、鳥ノ国の侵攻が花ノ国へと、侵攻してきたのだ。まだ避難が出来ていなかった民たちが殺され始めたのだ。
「……すぐに、民たちを安全な所へ」
「殿も民たちとお逃げください!」
「儂は民を守る」
「……ですが、殿が居なくなれば、花ノ国自体が無くなります」
「……そうじゃな。ならミツ、お前が守ってくれ」
「……はい。この命に代えても、殿を守り、国を守ります」
膝を付き、心臓に手を当てる。
「この城が最後の砦じゃ。民たちを守り、共に生き抜くぞ」
「御意」
家臣たちが、一斉に城の守りを固め始める。
侵攻してくる鳥ノ国の兵士達。
あと少し、あと少しで、民たちが国を出ることが出来る。民たちの脱出までの時間稼ぎのため、後方ではあるが、フジシロも戦場へと出ていた。
「花ノ国当主、フジシロ!! その首頂戴する!!」
鳥ノ国の兵士がフジシロに襲いかかるも、圧倒されてしまう。当主という立場ではあるが、剣術の腕は確かなもの。つい最近まで、農民であったような者には、負けるはずがなかった。
そして、トラフジ、イチフジと共に剣術を磨いてきたミツフジ。普段はカラクリをいじることを、得意としているが、トラフジとの喧嘩は専ら、剣であった。
互角の腕前で、毎度、イチフジが二人を止めていた。そして、三人の腕は買われ、フジシロの側近護衛を任された。
だが、そんなトラフジとイチフジは、今はいない。首から下がる三人の大切なペンダントを、握りしめる。
「信じていたのに、三人で誓いを立てたのに」
ミツフジの瞳には怒りが込められていた。しかし、そのペンダントは捨てられずにいた。心のどこかで、まだ信じているのかもしれないと。
家臣から民たちが全員、船へと避難出来たと報告が上がってきた。城から船の留まる浜までは、少し距離がある。いざと言う時に作っておいた、地下シェルターに利用しようと、ミツフジは提案した。
フジシロを含めた家臣たちが、浜を目指すために、城に入った。
その瞬間、城に火が放たれた。