5話
「ちょっと大丈夫?
拓人飲み過ぎたんじゃない?」
「ああ。久しぶりだったからつい、わりぃな送ってもらって」
「いいよ、全然。みんな変わってなかったでしょ?」
「ああ、変わってなかったな、相変わらずで良かったよ」
「…けど拓人は大ピンチなんじゃない?」
「は?」
車を降りるとライトで目が霞む
紀乃が手を貸してくれフラフラの状態で何とか状況を理解しようとした
「言うの忘れてたんじゃない?」
家の前で立ち尽くす愛桜が俺を睨んでいる
「忘れてた。悪いな紀乃、また」
如月先生が車に乗り込み、拓人さんが手を振った
振り向いて視線があった時にはもう、泣きそうなくらい苦しかった
「ごめん、言うの忘れてた」
酔ってるのがひと目でわかるほど拓人さんはフラフラしていた
「お酒くさい」
「え?そんなに匂うか?結構飲んできたからな」
っと笑いながら壁に持たれる
「……………」
そんな拓人さんを私は笑えないでいた
「愛桜?」
「やっぱり、10歳も離れてたら楽しい基準も会いたいって基準も全然違うんだね」
「どういう意味?」
「全然私のことなんか解ってくれてない!」
「何が?」
「どうして付き合ってるのに女の人が居る所に行くの?私は我慢してるのに」
「我慢って何?」
「遊びに行くのも、デートするのも、いつも後回しだし、みんな仲良くいろんなところへ行ってるのに」
「行きたいとこあるなら連れてってやるって言ってるだろ?」
「違う、そういうのじゃなくて」
「はあ、せっかく楽しく飲んできたのに、はっきり言えよ」
イライラしてるのがわかる
でもそんな言い方しなくてもいいじゃん
悪いのは拓人さんなのに…
「もっと大切にしてほしい」
「俺は俺なりに愛桜を大切にしてるつもりだけど。
愛桜にとっての理想って俺じゃ無理なんじゃない?」
「え?」
「誰と比べてんのか知らねぇけど、そんなに嫌なら他の奴のとこ行けばいいだろ?」
「酷い」
ハッとした時にはもう、愛桜の頬には涙が流れていた
「悪い、み」
「もういい」
言葉を遮れ視線がぶつかる
「もういい、別れるよ!」
「おいっ愛桜!」
私の腕を掴む拓人さんの手を払い家に走って帰る
解ってるよ。
追いかけたりしないし、心配して電話をくれたり
そんなこと拓人さんはしないって
愛されるって何?
大切って何?
付き合うって何?
嘘といい忘れを肯定する拓人さんがもう解らなくなっていた