13話
カラカラン
「いらっしゃい。拓人」
「ちーすっ…
やっぱりここか」
居酒屋に入り奥の席を除く
「…拓人、どうしたの?」
気まずそうな顔をした紀乃の横に座った
「店長、生一つ」
「はいよ」
「久しぶりだな拓人!翔貴と優梨と千晃は遅れてくるぞ」
そう言って笑う稜と紀乃の顔を交互に見る
「言い訳…今なら聞くけど?」
ため息をつきながら二人にそう問いかけた
「言い訳って?」
「こないだのことは謝っただろ?」
「紀乃はともかく稜
…どうして愛桜に意味わかんねぇこと言ったんだよ?」
「稜が愛桜ちゃんに?」
「…いや、だって腹立つだろ?俺らはずっと二人を見守ってきて大学の時から応援してたのに
いきなり出てきて彼女です
って納得できねぇって思ったんだよ」
「…正直私もどうして愛桜ちゃんに気持ちが傾いたのか知りたい。それまで好きとか何も言ってなかったのに。本命が居てるとかそんなことも聞いたことなかった。
流されてるだけなんじゃない?」
「…周りがなんと言おうが愛桜は俺の女だ
理由なんて…」
「それじゃ納得できねぇって言ってんだよ。
このままじゃ俺たちの仲まで壊れそうだぞ」
「愛桜ちゃん依存してるだけじゃない?
いざ自分から離れると思ったら嫌みたいな…」
ガチャン
勢いよく立ち上がった拓人は
「紀乃、いい加減にしろ
前にも言っただろ?
俺が愛桜を好きなんだって」
そう強くいい放った
「拓人…」
カラカラン
「やっほ~遅れてごめん」
「何みんな辛気くさい顔して?」
優梨と千晃が顔をのれんから顔を出した
「拓人に言ってやってんの!俺たちの仲壊すなって」
「稜、お節介」
「優梨の言う通りだよ?
別にいいじゃない。今拓人が幸せなら…」
「どうして?私は拓人が好きなの!捕られたくなかった!」
立ち上がり泣き出す紀乃をみんなが唖然と見つめた
「…紀乃」
拓人の声に紀乃は話し出した
「ずっと待ってた。振り向いてくれるの
なのにもう可能性もないなんて嫌だよ」
「…………」
沈黙を破ったのは、俺らの中でいつも冷静に物事を見てくれる千晃だった
「どうしてその子を選んだの拓人は?」
「………」
「ちゃんと話してくれなきゃ、優梨も頭ぐちゃぐちゃのまま」
2人は穏やかな顔で俺を見ていた
「愛桜は…産まれたときからずっと一緒に育ってきた、妹みたいな幼なじみなんだ
昔から俺になついて、俺の後ばっかついてきた
本当にこないだまで特別な存在なんかじゃなかったんだ…」
拓人はゆっくり思いを暖めるように話し出した
「けど俺はいつだって愛桜中心で生きてたんだ
お前らと言ったサークルの旅行中も、愛桜が高熱をだしたって聞いて飛んで帰った
愛桜が告白された時も…
同級生の男と遊ぶ愛桜を見た時も…気づけば体が動いてた」
「それって重症じゃない?」
千晃は笑いたいのか唇がヒクヒクしている
「笑うなよ。俺知らない愛桜の一面を見るたび心の中にある黒い部分が愛桜を傷つけそうで、ずっと臆病になってたんだ。俺を好きな愛桜が当たり前で、自惚れてたんだ
俺のために何時間も雨に打たれても待ち続けた
こんな事言ったら怒られるかも知れねぇけど、
ただその事実が正直嬉しかった
俺のことすげぇ好きなんだって今となっては心底嬉しい
だけど俺はずっと愛桜を傷つけてばっかで、大人なはずなのに愛桜を笑顔にできないで居るんだ
情けねぇよな…
泣かせてばっかなのに愛しててほしいなんて。
けど俺は変わらねぇし譲るつもりもない
愛桜をずっと大切にしたい
もしお前らが愛桜を傷つけるなら…俺は」
「拓人!それ以上は言わなくていいよ
もう充分伝わったから…」
千晃はそう言って俺の肩を叩いてくれた
「ねぇ拓人ってそんなに熱い男だった?」
優梨がまじまじ俺を見つめる
「愛桜ちゃんがあの幼なじみだったのか。
ごめん。俺わりぃことしたな」
「いや、俺がずっと中途半端だったから」
ガタン
「私帰る」
「紀乃!」
ガラガラ ピシャン
「ねぇ拓人…紀乃はずるかったけど、一生懸命拓人を愛してたよ?
彼女の振りしながら紀乃はずっと泣いてたの
自業自得って部分もあるし、拓人は何回か断ってたから紀乃が諦めなきゃダメだったのに好きで居たのも間違ってたと思う
でも…」
千晃は紀乃から聞いてたのかずっと知ってる風だった
「翔貴から聞いてたから知ってた。もういいよって何回も伝えたけど俺も甘えてたから」
「けど止めなかった紀乃の気持ちは解ってるの?」
「ああ。解ってる」
「そう、今すぐに好きじゃなくなるなんて無理だから。紀乃の事は私と優梨に任せて」
「悪いな」
「っつかなんで俺に言ってくれなかったんだよ?」
「稜と優梨は苦手だろ?嘘をついたりこういう関係が」
「そうだけど」
「私は聞かなくて良かったって思ってるよ
知ってたら耐えれなかったかも、すぐ本当の事言っちゃうから、それでサプライズ何回も潰しちゃったしね」
「あの嘘のおかげで拓人のハーレムはだいぶ減ったけど、しつこい子はやばかったからね」
「稜も良かったんだよ、聞かなくて、私と稜はサプライズぶち壊し組でしょ?」
「いや、まあ、そうだけど。
それより本当にごめんな、愛桜ちゃん傷ついてるよな」
「ちゃんと話すから大丈夫
迷惑ばっかかけて悪いな」
俺達が始めた嘘は大人になっても縛られてしまうものになっていた




