10話
「……今日本当に嬉しかった
知らない拓人さんを知れる気がしたの。
大学の時は寮だったから今みたいに、『会いたい』って思っても中々会えなかったから…」
「…」
「そんな大学生活で私の知らない拓人さんが居て、
少し悔しかった。大好きだから知ってたかった。
如月先生と拓人さんにはいろんな理由があると思う。どんな理由で付き合う振りしたのか私は知らないよ。
でも今彼女は私で私の事好きって信じてる
信じてるけど、不安だよ……」
俺には愛桜の気持ちが本当に解らなかった
「それって信じきれてねぇって事だろ?」
「…………」
「信用ねぇな俺…紀乃とは本当に何でもねぇし、ただ昔は言い寄ってくる女がうっとうしくて、振りしてもらってたってだけだろ?居酒屋に居た奴らはずっと何年も信じてたからあのタイミングで言えなかっただけだ。
もうちゃんと言ってきた」
「あのタイミングって何?
そんなの拓人さんの勝手じゃん」
「特に紀乃はみんなにいろいろ聞かれていろいろ嘘ついてくれてたから、あの状況で言えば傷ついただろ?」
もう我慢出来なかった
拓人さんの好きは私とは違う
「如月先生が傷つくのは嫌だったの?私は?」
地雷だって解ってる
でももう止まらなかった
「その考え方辞めろって!変わりに愛桜を傷つけてなんて思ってねぇから」
「どうして伝わんないの?」
肩を震わせ泣く愛桜に胸が痛む
小さい頃から泣くのは当たり前だったから
こんな風に泣いている理由が俺だなんて苦しかった。
離れていた方が愛桜は笑顔でいれるのか…?
「しばらくゆっくり考えろ」
俺にはその選択肢しかなかった
「えっ?」
「俺も考えるから…」
「考える?」
「このまま続けてていいのか?って」
「…酷いよ、拓人さんは」
そう言い捨て走り出した愛桜
ダン!っと強く壁を殴れば
歯がゆい距離に怒りを宿した
「どうしろって言うんだよ」




