ー大罪人でもヒーローにー
初投稿になります
楽しんで頂ければ幸いです
あ、死ぬんだ
僕はそう実感したし、実感せざるを得ない状況である事は言うまでもない。
さっきまで白かった床も紅く染まっている。
あの子は大丈夫だろうか…
僕は最後の力を振り絞り、周りを見渡す。
………………
「お……よ…優」
ん?
「起きてよ、優。」
あれ?
僕は周りを見渡す。
白い壁紙に好きなアニメのポスター
それにパソコン
そして僕の上に乗っているのは…
妹の真依だ
少し考えた後、結論に至る
「あぁ、夢か…」
「何言ってんの?それより早く起きてよ。ご飯出来てるよ」
「あぁ、すぐ行くから先に降りてて」
妹を部屋から出した後、少しの間何も無い空間を見つめつつ、夢の内容を思い出す
あぁ、嫌な夢だった…
……だけど、あのまま死ねていたら。
そんな事を考えてみたり。
おっと、また真依にまた怒られてしまう。
そろそろ登校の準備をしよう。
さて、自己紹介をしておこう。
僕の名前は 加藤優
家はそこそこ裕福だし、
近所でも有名なエリート一家だ。
ただし、その「エリート」の中に僕は含まれていない
僕は運動が得意な訳じゃない。寧ろ苦手だ。だからと言って勉強が得意って訳でもない。
顔はブサイクって訳じゃないがイケメンって訳ではない……と思う。
性格は友達いわく典型的なコミュ障気味のオタク、らしい。そんな自覚は無いのだけど…
彼女が出来たことも……無い。
俗に言う底辺、ってやつだな
まぁ、一つ自慢するとしたら、頭は良い方だ
勉強には全く役に立たない方向で。
つまり、この世界では役に立たないって訳だ
僕の妹である加藤真依はと言えば、
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、元気でリア充
そう、僕とは真反対のような人間だ。
そんな妹がいたら、まぁ比べられない方がおかしいが、何かと僕は妹と比べられる
僕という人間は妹という人間ではないのだから、比べられても困るのだが…
だがそんな妹の事は嫌いではないし、妹も僕の事は嫌いではない…と信じたい。
あぁ、神様
僕が生まれ変わるとしたら。
そう、そうだ。
あのアニメの主人公の様に最高のスペックにしてくれると嬉しい
そんな馬鹿な事を考えつつ、学校へ登校していく。
学校については…まぁ何も言うことは無い。
これといった友達もいないし
自分で言うのもなんだが、僕は「ぼっち」ってやつだ
死にたい。
まぁ、死ぬなんてそんな事、勇気のない僕には出来っこ無いけどね
さて、今日最後の授業が終わった。
友達もいないし部活も入ってない僕は、ホームルームが終わるとすぐに帰宅…なんてことはしない。
僕は必ず帰る前にある店に寄る事にしている。
「こんにちは」
そういって僕は暖簾をくぐる
ここは喫茶店「威風堂々」
この店の「宇治抹茶チョコレートバナナパフェデラックス」は僕の生きている意味と言っても過言では無い
この店の店員とは長い付き合いだが、声を掛けた事は無いので会話などをする訳では無い。
さて、パフェも食べ終わったし、帰るとするか
あぁ、今日も家族以外の誰とも話さずに一日終わっ……………
僕の体に鈍い衝撃が走る
あっ、死んだ
何も分からないが、その事実だけは分かる。
呆気ないものだ。夢の中ではもうちょっとドラマチックだったのに。
本当にあれがドラマチックだったのかはさておき
あぁ。僕は思った。
何でこんなつまんない事を考えているんだろう
…まぁいいや
僕は何に殺されたんだろう…
僕は僕を殺したものを視認しようとする
その瞬間、僕は気付く
何も見えない
何も聞こえない
何も感じない
そういえば痛みも、感じない
あれ?そういえばまだ死なないのかな?
その瞬間、僕は考えてしまった
その瞬間、僕は気付く
その瞬間、僕は気付いてしまう
この世界は、死後の世界?
…あぁ
僕は絶望した
この世界が死後の世界であるなら?
僕はこの先ずっと、1人で居なければいけないとしたら?
様々な可能性が僕の頭の中を高速で回転する
そして
さらに絶望する
あぁ…死ななきゃ良かった
死にたいなんて思うんじゃなかった。
もっと注意して歩くんだった…
あの時、「威風堂々」の店員に声を掛けていたら…
あの時、あの子に声を掛けていたら…
様々な後悔がを僕を襲っていた。
そんな中
僕に誰かが声を掛けた
「どうしたの?」
「どうしてここにいるの?」
「…何かの手違いかな?」
「…ヒト、はここにいるべきじゃ無いんだけどなぁ」
「でも、元の世界に戻すには遅すぎるなぁ」
「君はどうしたい?ここにいたい?それとも、別の世界でやり直してみる?」
僕の思考は絶望から希望に変わった。
これって、あれじゃないか?
あのアニメみたいに、異世界に転生されるんじゃないのか?
あのアニメみたいに、あの最強のキャラみたいになれるんじゃないか?
そう思った僕は願った
そう思った僕は、強く願った
(他の世界で、やり直したい)
「それが君の選択だね。」
「分かった。他の世界でやり直させてあげる。」
その瞬間、僕は激痛に襲われた
そして、気が遠のいていくのを感じた
「いってぇ…」
あれからどれだけの時間がたったのだろうか
そんな事を考えるよりも先に僕は思った
目が見える
音が聞こえる
手に土の感触が伝わる
…転生は成功したのだろうか
その瞬間、僕の頬に涙が伝っていく
草木の心地よい香りが漂う
あぁ、生きてる。
生きてるって、素晴らしい
僕は初めてそう思った
しばらく感傷に浸った後、僕は自分の体を見てみる。
美しい剣に、立派な盾。
服は…まぁ、ノーコメントだ
あれ?これってあれじゃないか?
勇者ってやつじゃないか?
僕は感動していた
勇者じゃない、なんて考えは僕の頭には既に無かった
あぁ、勇者になれたんだ
そんなことをかんかそんなことを考えているといると、遠くから
「探せ!早く探せ!逃がすな!」
と言う声が聞こえてくる
あぁ、人だ。
幸いにも言葉は僕の世界と同じようだ。
そうだ、この声の主に会えばここがどこか分かるかも知れない
そんな事を考え、僕は声の主の元へ近づく。
これが間違いだった
声の主は騎士だった。
そしてその騎士は、僕を見るなり仲間を呼びつけ、僕を捕らえた。
おい、なにするんだ、僕は勇者だぞ
そう抗議しようとした瞬間、僕を捕まえた騎士はこう言った。
「罪人 ユウ を確保!」
僕は絶望した
あぁ、そういう事か…
誤字、脱字があった場合申し訳ありません
皆さんに楽しんでいただけるような作品にしていきたいと思っています
よろしくお願いします