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序章
棚幡の祭について訪ねられた。 牽牛星と織女星の伝説を私は答えた。宮中では「しちせき」と呼び親しまれ、今宵はきっと桃や豆をこの夜空に祭っているのだろう。
「これは中国でのやり方だが、笹に願いを込めた和歌を吊るすと、願い事が叶うらしい」
傍らで微笑む美しき式神は、首をかしげる。「神頼みなのですか?」
私は頷く。「神に頼まなければ叶わない願いもある」
天一貴人の表情はなにも変わらない。短冊をひとつ取り文を書く。
「では晴明。我らにどうか願いを言ってください。私たちはそれを叶えるために使役されています。願いを叶えるために、力を尽くします」
「 ...私の願い。それは...」