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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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貴方がいなければ生きていけない

 目を覚まして始めて見るのは貴方。

 すやすやと無防備に眠っている顔はいつもより穏やかで幼いようなあどけなさ。


 可愛いです。


「綺麗」


 貴方を見つめていられる。触れられて、言葉を交わせて、愛し合えて、一緒にいられる。


「君の方が綺麗だ、砂姫」


 開かれた瞼から意志の強い瞳に私だけを映した。柔らかな眼差しと強い渇望。


「ひゅっ!?」


 驚きすぎて思わず変な声があがりとっさに口を手で覆った。


 いつもならまだ眠っているのに。

 熱くて茹で上がりそう。


 時より私より早起きした氷雨様はこうした寝たふりをしていたりするから心臓に悪い。


「ふふ、真っ赤。可愛いな」


 抱き締められる。

 苦しくて仕方がない。


「からかわないでください」


 何故、貴方が。

 氷雨様が私を気遣い心を痛めなくてはならないのか。


 ふわりと身体が浮き上がるような感覚がして氷雨様の身体の上にいた。そっと腕だけが置かれた背中の重み。


「柔らかくて美味しそうだ」


 食欲が強い。

 食べる量は人の何十倍。それに血にはすぐ気づいて私は恥ずかしい気分になる。

 それ以前に鼻がよく効くし、耳も目も良い。


「ずっと一緒にいられる」


 私は本当に愛されている。

 優しくて強くて綺麗。


 ありのままの貴方に愛されたなら私は壊れてしまう。

 力を失った貴方だから私は壊れない。


「氷雨様」


 私のわがままです。

 私は触れていたいのです。


 貴方を見つめて、触れて、身体を重ねたいのです。


「大丈夫です」


 痛くないから。


「私は消えたりしません。そもそもそういう約束じゃないですか」


 あの人は約束してくれました。

 私と貴方は決して離れない。


 この件で二人の関係が壊れることはないと言ってくれました。


「そうか。なら、いい」


 ギュッと力を込められて身体がさらに密着してふわふわとする。


 暖かい。


「辛くないならいいんだ」


 目が覚めて悪夢は消える。

 貴方に抱かれ、愛を囁かれる。それだけで私は辛いことも悲しいことも忘れられる。


 全て塗り換えられ、今の幸せに胸をときめかせることができます。


「私は幸せです」


 絶対に世界一の幸せ者です。

 貴方のためなら何でも出来ます。


 どんなことでもしてあげたい。


「氷雨様」


 好きなんです。

 どうしようもなく、大好き。

 狂おしいほどに愛おしく、貴方を…。


 氷雨様を愛している。


「砂姫」


 キスをして、私を抱きしめて。

 氷雨様の好きにしてほしい。


 話すより行動した方が早い。


「氷雨様」


 その薄い形良い唇に自分のそれを重ねた。

 ありったけの想いを込めて、氷雨様に乞い願う。


 私を永遠に愛して欲しいと。



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