白金の魔女の秘薬
私は素直に氷雨様との新たな人生が嬉しかった。
「はぁ…それにしても、君は未だに新しい肉体に慣れないのだね。まあ、確かに複雑な肉体だろうが、君の献身的な働きで早く自立してくれると考えていたのだが少しばかり計算違いをしてしまったようだな、どうやら」
そう不適に微笑みを浮かべる魔女を見て氷雨様は眉間に僅かにシワを寄せる。
未だに話すことが出来ない氷雨様の瞳だけはよく感情が見え透いていた。その目はしっかりと出ていけと言っています。
「まあ、そんな君に朗報だ。強制的に手っ取り早く発声させられる薬があるのだが、どうだね、喜ばしくはないかね?」
その言葉は妙に引っかかります。
「まあ、君の肉体なら耐えられるし、君に害があるとは思えないがね。残念ながら、君を毒殺しようにも耐性が半端なモノではないから一生心配ない」
「あ、あの」
毒にはならない。
それは氷雨様限定でということでしょうか。心配で仕方がなかったのですが、氷雨様は目を細めて狙いを付けていました。
選択肢は薬を使うしかないみたいです。
期待するように魔女の取り出した小瓶に目が釘付けで、胸がむかむかします。
ぎゅうっと氷雨様に抱きつきますが、全くこちらを見てくれず、私は情けなくて涙目になってしまいました。
思わず魔女を睨みつけましたが、当然のごとく気にした様子はありません。
「今なら暴れる心配もないのだ。ある意味、計算違いには感謝すべきかもしれないと言うべきだろう」
「氷雨様に、害は本当にないのですか?」
「ああ、ない。心配する必要はない。君達の肉体は人間の型に嵌まってはいるが、やはり人間の肉体と全く同じだとはとても言い難いのだ。君達の肉体は私が一から創りあげたモノで、自然に産まれた生き物の形とは違う」
長くなりそう。
小瓶を何気なくふり、ガラス製の瓶からたぷたぷと中身が揺らめく。
その色合いをまじまじと見るととても使ってしまっていいのかと躊躇してしまいそうなモノが揺らめいている。
とても身体に良いものとは思えない。
「それは本当にお薬ですか?」
「本当に薬だ。特別な特効薬さ」
生理的に受け付けられない色合いの薬にだんだんと自分の血の気が引いていくのがわかりました。
「そう顔色を変えることはない。君が飲むものではないのだ、楽観的に考えるといい」
無理。
私が飲まないとわかっていても受け入れられないと思っていたら、魔女は素早く蓋を開けて氷雨様の口に得体の知れない液体を流し込んでしまいました。
「~っ!」
言葉にならない悲鳴を上げて必死に氷雨様を見つめます。
「…さ、き」
掠れた小さな声が私の名前を呼ぶ。ただそれだけのことなのに、初めて聞いたその掠れた低音の声に胸がうるさいほどに高鳴る。
ああ、氷雨様に会えてよかった。
ですが、あの薬、本当になんの後遺症はないのでしょうか。
じっと見てみましたが、異変はありません。心配です。
今年はこちらをメインに更新したいです。




