真実の愛
貴方と二人きりでいると全て忘れてしまう。何もかもが霞んで、貴方しかいらなくて、貴方だけいればきっと。
「砂姫」
甘い。
どこまでも甘い。
氷雨様とずっと一緒にいたい。
「楽しいか?」
「はい。とても」
迷子にならないように繋がれた手。ギュッと指と指が絡め取られたその手は頑ななほどに放さないと言わんばかりに痛くない程度に力強く握られている。
熱い。
繋がれた瞬間から身体が火照るように、徐々に徐々に熱を持て余すようになる。
身体が求めて疼く。
はしたない女だと思われてしまう。
ついて早々に宿でそれなりの柔らかな寝具でゆっくりと疲れを癒したが、氷雨様とは何もすることなく深い眠りについてしまった。氷雨様はあの竜の素材をお金に替えに行ったりとしていたのに、私は言われるがままに寝入ってしまった。
目が覚めてもぐっすりと眠っていた氷雨様もやっぱりとてもお疲れなのだと思い大人しく腕の中に納まる。
悪い夢を見なかったからきっと遅く来たわけではないと思いますが、やっぱり先に寝てしまわなければ良かったと後悔してしまいました。
「どうかしたのか、砂姫?」
身体を拭い終えた氷雨様は上半身裸のまま私に近寄って視線を合わせる。下も下着だけで、カッと熱が集まる。
「砂姫も身体拭うだろ。待ってろ、今、水変えてくる」
「私がやります」
「大丈夫だ。ゆっくり休め。旅の時は疲れただろ」
素早く衣服を着込んだ氷雨様はさっさと部屋から出て行ってしまったのを見守ってから私は身悶えた。
柔らかく微笑んだ氷雨様に胸がどきどきと忙しなく動く。
誰が見ても美しい笑みだと思えるその微笑みは私だけに向けてほしい。私だけに見せてほしい。
誰にも見せたくない私だけの氷雨様の微笑み。
どうしたら私だけのモノになるのだろうと考えても、思いつかない、わからない。
ぼんやりと思う。
きっと最初の方が私達は近かった。べったりとくっついても今のようなぎこちないような、恥ずかしいようなものがあまりなかった。
それがだんだんと恥になる。
変に意識をして、触れ合うことが気恥ずかしく、人の目を気にするようになる。
形を手に入れて久しく思い出すそれらが私を氷雨様から引き剥がす。いえ、きっと私が溝を作る。
人前では恥ずかしくて距離が出来る。でも、女の人が氷雨様を見ていると嫌だから手を絡ませる。
「どうした、砂姫」
「へ」
「疲れてるなら、変わりに拭いてやろうか」
ぽふんとその言葉に熱が集まる。いやいやと首を振り、ギュッと自分の身を抱きすくめる。
汗はじっとりと掻いている。
「汗臭いですから」
「そんなことない。砂姫はいい匂いだ」
旅の時は気にならなかったことが今になると気になってしかたがない。周りに迷惑を掛けてはいけないと、氷雨様の足手まといになってはいけないと、がむしゃらに頑張りました。
ここには沢山の綺麗な女の人がいる。綺麗に着飾って汚れ一つない。
だから尚更、恥ずかしさがあった。こんなにも気になっていたたまれなくなる。
多くの人と出会えば出会うほどに離れてしまう。
「砂姫、俺は君以外はどうでもいい。だから、変に考えんな」
その言葉に私は頷いた。
自分に自信がない。だけど、氷雨様は嘘をつかないと知っているから。
貴方が私を愛してくれる限り、私はこの幸せを噛み締められる。
なんか変だ。
バグを引きずっているからだろうか。
本当に変なら下げよう。




