私だけを見ていてください
氷雨様はとても強いです。
誰もが貴方を尊敬してしまう。
「むぅ」
だからだろうか。
私は嫉妬してしまう。
「ん、どうした、砂姫」
大きな亜種の竜。
私にはよくわらないが、氷雨様はいそいそと馬車に押し込むように売れる素材を積めている。
ピリピリした護衛の人達も今は手のひらを返したように氷雨様を見ている。
氷雨様が一人でちょっと先行ってくると馬車から大きな剣といくつか荷物を背負って行ってしまった。しばらくすると大きな雄叫びがして、もう少しすると甲高い悲鳴が響いた。
護衛の人達が数人が様子を見に行き、一人だけやけに興奮したように帰ってきて先に早く来いとまくし立て走っていった。
「おいおい、砂姫ちゃんの旦那は規格外だね。こりゃ、護衛にほしいわなぁ」
私より先にいる恋次さんは呆然とした声でそういった。私も少し小走りでずっと先にいる氷雨様を見つけた。
私の視線に気付いたのか氷雨様は振り向いて笑ってくれました。
無傷そうな氷雨様にほっとしながら地面に転がっている大きなものに気付いたんですが、それが何なのか私にはわかりませんでした。
魔物は海のものが精々です。そういえば陸の魔物はあまり見たことがなかったです。
凄いのでしょうが、なんといえばいいのか。
「砂姫、何もなかったか?」
「はい。あの、それはなんですか」
「竜の亜種だ」
一番大事な解体を済ませて、後は手伝うと言い出した護衛の人達や商人の方々がせかせかと動いている。
「余すことなく売れる。まあ、もう乗れる場所はなくなっちまうが、砂姫は乗り物酔いするから」
ちょうどいいな、と続けながら丁寧とはいえない仕草で積んでいる。
私達の荷物は一度降ろして後から乗せることになっているけど乗るのだろうか?
ちょっと寂しい。
憧れが入り混じった眼差しを向けられる、氷雨様が煩わしくなって睨みつける。それが、チクッと胸を痛める。
私だけの氷雨様に、誰かが寄り付くのは嫌。
氷雨様には私だけを見ていてほしい。誰も氷雨様を知らないでいてほしい。
だって私が氷雨様を一番知っているんです。誰かが氷雨様の心に巣くうなんて嫌。
嫌だ。
「砂姫?」
「ひゃふっ!」
目の前に氷雨様の顔があって変な声を上げてしまった。慌てて口元を手で押さえても顔はとても熱いし、こんなことで隠せるはずもない。
チラリと氷雨様を見上げれば私を見て優しく目を細めていた。
「砂姫、そんなに不安げな顔して。妬いてたのか?」
「…氷雨様」
呆れてしまうのだろうか。
女の人は他にいない。私以外はみんな男の人で、焼き餅を妬く要素なんてどこにもない。
「俺には砂姫だけだ」
腕の中に囚われる。
私はそれが好き。
「他に興味なんてない。砂姫だけを見てるから、心配すんな」
その言葉に私はただ頷いた。




