君はどんな夢を見る
本来なら砂姫に野宿なんてさせたくはない。俺は風邪を引いたことはないが砂姫は一度だけある。
あの時は砂姫が死んでしまうのではないかと思った。汗を掻き、苦しそうに顔を歪めて熱い吐息を吐き出し、喉を痛めるほどに咳を繰り返していて、俺は死ぬほど心配した。
「寒くないか、砂姫」
「とても暖かいです」
毛布に身を包んだ砂姫を腕に収めて俺と一緒に毛布の中に収める。
急く心臓の音が聞こえる。どっちのが自分のなのかわからないくらいだ。
頬を赤く染めてはにかむ砂姫は可愛くて綺麗だ。
「氷雨様、あの…お休みなさい」
「うん、お休み」
視線が鬱陶しい。
ピリピリとした苛立ちではない、そわそわしたような気配と鬱陶しいくらいに輝かせた瞳。
正直、俺は砂姫にしか興味はない。だが、砂姫の所の仕事仲間の女は頼りにはしている。風邪で狼狽える俺を叱咤して対処の仕方を教えてくれたから、俺にできる範囲なら手伝うことにしている。
この旅での収穫は亜種の竜を倒せたことだ。そのせいで馬車はいっぱいになったが、高く売れる。
俺が竜種を倒してからだ。前にいる護衛どもが変な視線を寄越すのは。
「……」
もうすやすやと寝入った砂姫。相も変わらず可愛い寝顔だ。
暖かい。寒空だと言うのに暖かい。
まあ、近くで燃える焚き火が消えないように乾いた枝を放って暖を取っているのもあるが、やはり、砂姫といると寒さはあまり気にならない。
周りに人がいなきゃな、と思いながら目を瞑る。たまにはこんな事があってもいいのかもしれないな。いや、もう二度とごめんだ。
旅は二人旅がいい。
その方が何も気にせずに済むし、砂姫も可愛らしく俺を頼ってくれるだろう。
やはり野宿は砂姫には辛いだろうし、だいたいは俺が走れば手短な村なり街につけるだろう。まあ、砂姫に止められるだろう。
「ん…ひさめさま」
ふっと目を開けて砂姫を見たがむにむにと唇を動かし俺にすり寄るが、やはり眠っている。規則正しい寝息を立てているから、俺の夢を見ているのか。
「砂姫」
可愛いな。
暖かな温もりに肌を撫でる風がまた何とも気持ちがいい。
「愛してる」
額に唇を寄せて俺も再び目を閉じて、魔物を警戒するために耳を澄ませる。まあ、砂姫を感じていたいという想いの方が大きいが。
それにしても、君は夢でどんな俺の夢を見ているんだろう。




