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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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旅は道ずれ

 初めて乗る馬車に酔いました。

 とぼとぼと馬車には乗らずに歩く。


「まぁ、落ち込むな」

「ですが」


 吐かなかったのが奇跡でした。

 氷雨様は優しく励まそうとしてくれます。でも、落ち込まずにはいられない。


 馬車は揺れで気分は悪くなりますし、お尻も痛かったです。


「砂姫、どうせ歩いてる連中がいるんだ。気にするな」

「そうですが」


 氷雨様との二人旅も良かったのですが、やはりあんなに必死で引き止められると引きます。

 私としたことがあまりの気色の悪さに頷いてしまいました。あれは粘り勝ちです。


 氷雨様はとても怒っていた。


「文句があるなら、俺がシメてやるからな」


 非常に好戦的で隙あらば実力行使してしまいそうなのでとても困る。困るんですが、ちょっと可愛らしくて嬉しいです。


 商人の方達は非常に好意的ですが、その護衛に雇われた方々はピリピリとしていて怖いです。

 どうも私達が目障りのようです。


「あー、お二人さん。いちゃいちゃ中なんか申し訳ないんだけどさ」


 いちゃいちゃ。

 そんなつもりはなかったのですが、手しか繋いでいませんし。


 そして、この人はおば様の息子さんで失礼な恋次さんです。おば様達が私達が護衛を引き受けて行くならこれも連れて行きなと差し出されたのです。


 正直、いりません。


 馬車は魔物の売れる部分を乗せるには役にたちますし、おば様達と丹誠込めて作った果物や薬草や私達の荷物を積んだ馬車はまだ沢山の空きがあります。

 きっと帰りは沢山の荷物が乗るでしょう。


「昼にするみたいだよ」


 そう言うと馬を止めていて、前を見れば馬を止めてお昼の準備を始めていた。


 小枝をいそいそと集めて軽く魔物を狩ってきた氷雨様は処理したお肉を差し出して来た。お仕事が早いです。

 魔法で火をつけ、水も魔法で出し、持ってきたあまり日持ちしない物から調理していく。


「あー、氷雨さんって結構食べる人なのか?」

「はい。美味しいと作った物は残さず全て食べてしまいます」


 二日目が美味しいという料理だって作ったその日に完売です。大きな寸胴鍋に沢山作ったのに。


「砂姫の料理は美味しいから」

「氷雨様」


 ぽっと頬が赤らむ。

 周りに人がいることを思い出して後は懸命に料理をする。そんなに時間を掛けられないから優れた魔力を無駄遣いして簡単料理をする。


 数十分すればそれなりの品数が出来た。肉が多めになってしまったが、しょうがないと諦め、三人で食事をし始めた。


「うん、美味しいけど味が薄いね」

「そ、そうですか?」


 氷雨様もそう思っていたのでしょうかとチラッと見ると優しくほほえんでくれました。


「ちょうどいい」

「薄口派か。獣人や魚人と気が合うんじゃないかな」


 私は元が人魚ですし、それに私達は魚人種の部類ですから。


「口に合わないなら食うな。俺が全部食い尽くす」


 渋々と恋次さんが食べることを許した氷雨様が静かにそう言った。そこには怒りがにじみ出ていました。


「そんなことないよ。いやぁ、砂姫ちゃんの手料理食べられるならこんな旅も良いなぁ!!」


 はは、と冷や汗を流しながらもそんなことを言った恋次さんは正直、凄いです。



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