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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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舞台『魔女狩り』

 もう遥か大昔の話だ。

 大いに脚色されてしまったかもしれないが、まあ聴いてくれ。


 魔女との契約は魔女の娯楽というのが多く、遊び半分などがあるがそれは本来の魔女の契約を紛らわせるためのものだ。

 魔女契約とは魔女を辞めるための条件をクリアしなければならない。


 人から魔女は産まれる。

 魔女からは人は産めない。いや、生命を宿せず、死なず、生き続ける契約が最初から成されている。


 だから、魔女の姉に人間の妹という可笑しな話が出来上がったりしてしまう。魔女契約を破るには誰かの望みを叶えて奪わなければいけない。


 まあ、魔女を殺すことは可能なのだが、その場合には相手は子々孫々に呪いがかかる。

 だからだ、魔女狩りを行い魔女を殺せた者の血族は不幸しか訪れない。栄誉は与えられるはずがないのだ。


 魔女狩りは魔女の力と美貌を妬み始まったモノだと誰かが言ったが、事実は私にはわからない。知りたいなら赤灰の魔女を訊ねるのが一番いいだろう。


 私も魔女として産まれ、魔女狩りの時代をやり過ごした。多くの同朋と無実の犠牲が散り、多くの人間の血が穢れた。


「姉様ぁ」


 私の妹も魔女狩りで死を迎えて人の血を犯した。子々孫々に安らぎを与えず苦痛を、幸せなど絶対に掴めないよう、血を憎んだ。


 私達姉妹はどちらも魔女として生を受けた。とても珍しい例だったろう。


「私は人が好きよ」


 そう笑っていた私の妹は人に殺された。大切な同じ痛みを知る血を分けた姉妹。

 愛だ何だと囁いていた男に妹の命は散らされた。普通では死なない魔女。


 だが、魔女を殺すのは案外に簡単だったのだ。魔女として不完全であればあるほどに死にやすく脆い。


 魔女としての心構えがなかった者は死ぬ。


 魔女は愛されている。

 私はその理不尽な愛の寵愛を受けてしまった哀れな女の一人。


 殺されれば呪う。

 それは勝手に玩具まじょを奪われた腹いせのようなものだ。


 人間の男に愛された妹は、あの人は死んでしまった。あまりの虚無感に言葉も涙もでなかったのは、私が魔女であるだけではないような気がした。もっと別の何かが胸の奥底で目覚めて蠢いた。


 魔女に唆され、妹を殺めたその男の血は息絶えたが、一族が絶えたわけではない。

 長い月日を重ねて息吹き返すその姿は腹が立つ。また同じ用なことを繰り返すならなおのことだ。


 魔女の舞台に立たされた滑稽な姿はいつ見ても道化で、無様。


 私は魔女。

 魔女に情はない。


 理解はしても、していない。知っているだけ。


 不意に私は考える。

 魔女が魔女を殺したら果たしてこの身は滅ぶか否か。


 魔女が魔女を気にかける。それ自体はあまり珍しくはない。

 ただどうなっているか気になるだけだからだ。敵意はないだろうし、ただの興味本位だ。


 魔女が魔女を殺した話は一切聞かない。

 もしかしたら話さないだけかもしれない。そして話せなくなっただけかもしれない。


 魔女が魔女を殺したらどうなるか否か。


「君は気にならないかい?」



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