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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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舞台『彼は彼女を愛してました』

 私は人間が好きだ。

 全ての人間を愛していた。


 等しく生物を慈しみ愛でることを生き甲斐にしていたはずなのに、私の中にいる何かがそれを許さない。


 愛している。

 ただ白金の魔女をただただ一途に想い、敬い、愛する。


 他などいらないという感情が押し上げ迫る。


 私は人が好き。

 好きだと確信している。


 だけど、私は。


「私は、私は…愛しているのだ、  」


 言葉にならない。

 愛する愛しい名前を口にしていた。


 愛しくて仕方がない。愛してやまない。病的な程に求めてしまう。俺を愛せ、見ろ、求めろ、必要としろ。


 私の思考がグチャグチャと気持ち悪く掻き回され、乱され、吐き気を催すような激しい視界の歪みに眩暈が起きる程に歪で穢らわしい。


「私は、俺は、小生は」


 影でしかない。

 何者でもない酷く中途半端な生き物。実体がないから幽霊のような存在なのかもしれない。


 不確かだが、確かに其処にいて、曖昧に認識できる。


「俺を信じて、私を忘れないで」


 酷い。

 まるで二つの思考がぐちゃぐちゃと混ぜられたような不確かで曖昧な言葉が頭の中で重なり、気持ちが悪い。


 人ではないから、私は小生を愛せない。俺は  が好きで、人間を愛して、それ以外必要無く、他はゴミくずに等しい、愛すべき人。


 グルグルと回る思考はとても自分のモノだけとは思えないほどに矛盾しきっている。


「姉様」


 生き物の形をしていない。

 化け物。


「俺は」


 なぜ、こんな形をしていたのだろうか。

 私はどうして、なんで。


「生きたい」


 生きてしたいことがある。

 守ってあげたい。


 全て護る。


 嗚呼、そうだ。

 また思い出して、そして忘れる。


「そんな所で何をしているんだい」


 呆れたような笑みを浮かべて黄金色の瞳を柔らかく縁取る。

 私は人が好きで、また、この人も愛している。


「何にもしていないわ」

「そうかい?」


 なら、いいさ。

 そう口にしたのに、見透かしたように苦笑いをして、私の中の誰かを眺めて愛おしげに微笑んだ。


 まるで鏡を見ているような感覚になる。その姿は酷く見に覚えがあり、それでいて薄ぼんやりとした不確かなくらいに美化されているその人を知っている感覚もある。


 私は影だ。

 特に何の影でもないが、私の中には底知れぬ闇が巣くいその中には多くの魂がさ迷う。


 頭が変になりそう。


「妄想は止めたまえ。また、愛しい魂を喰らう気かい」

「そんなつもりは」

「ならば何もしなくていい。それ以上を喰われると私は困るのだ」


 食事ができなくなるのか。

 白くなってから、腹を空かせてばかりなのに、この魔女は私を餓死させる気か?


「私の私物を喰らうキミがいけないのだよ」


 腹が減るだろう。


「自我を喰われても食欲を失わないのは素晴らしいが、食い合わせが悪すぎたな。まあ、感謝しているのだが」


 この魔女は本当に生きていないのに、美しい。我が主もこの境地にたてるのだろうか。


「キミは生きてくれるだろうな」


 薄ぼんやりとする思考はお決まりの言葉を紡がせる。



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