閑話『あっち向いて』
どうして、こんな目に遭うんだ。
真愛、虚愛に対した意味はない。僕達が勝手にそう言うだけだが、命愛だけは違う。人型をしたモノにとってそれは憧れに近いモノがある。
何故、僕は白雪を盲目的に愛したのだろうか。ちゃんとこの人しかいないと感じて愛しくて仕方がなかった。
魔女は警戒すべきだが、重宝する存在もいる。魔女は我々をよく見て、魔女でしか成せない魔力と術でそれを成す。
だからこそだったのかもしれない。
人の意識や行動、言動を我々でも少なからずは魔法を使った操ることはできるが、はっきりと操られた本人に気付かれる。
長く続かないというか、欠陥だらけの魔法にしかならない。
魔女にはそう言った違和感がなく、永続的に実行されるのだろう。僕がはっきりと覚めたのは、どういったことかはわからないが、特定の条件を満たすことで解けてしまったと思ってもいいのだろう。
いや、どれほど言おうが言い訳でしかないと、もうどうしようもないとわかっている。お互いに結婚している。
振り向かせようとしても絶対にこっちは見てくれないだろう。あの男がいる限り僕は近づくことすら許されず、彼女に愛されることもない。
もどかしい。
欲しい。
僕は何としても彼女が欲しい。偽物じゃない、僕の命愛の人。
僕だけの命愛の人。
何かで押さえられた反動のように止められない想いが沸々と湧き上がり、自分ではどうしようもなくなる。
まるで自分か自分ではなくなるような感覚。
僕が愛しているんだ。
僕だけの命愛の君。
自分のモノにしたい。
何をしてでも、この得体の知れないモノを埋めてしまいたい。
酷い渇望で死んでしまいそうだ。
魔女さえいなければ、こんなことにはならなかった。
僕だって彼女を、砂姫を見つけられなかったなんてことはなかったはずだ。
愛し合えたはずだ。
あんな男に取られず、こっちを見てくれただろう。
こっちを見てくれたはずだ。
あっちを向いて、僕を見ないなんてことはなかったはずだ。
話す機会がなかった。
なんとか会いに行ってもあの男が邪魔で、そしてその男に向けられる砂姫の笑みが本当に幸せそうで楽しそうで、愛に満ち満ちていて、美しい微笑み過ぎて。
僕は腹立たしく、憎しみに満ちていく。嫉妬で狂いそうになる。
あの女のせいで、あの女のせいで、あの女のせいでッ!
砂姫はあっちを向いてばかり!
決して彼女は僕を振り向いてなどくれない。
こんなにも愛しているのに。
こんなにも僕は愛しているのに。
肝心な彼女はあっちを向いて。
僕などに振り向いてくれないッ!
狂おしいまでの憎しみが溢れる。
あっちを向いて。
あっち向いて、あっち向いて。
こんな僕を見ないで…




