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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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私は貴方の名前も知らない

 知らない。

 知らない知らない。


 貴方はとても優しくて暖かい。そして、知っているという思いがわからない。


 ただただ、優しい。

 貴方を見る目も触れる身体も持ち合わせていない。


 優しい想いが私に話しかけてくる。

 見えない私は貴方の優しさに包まれて生きている。


 暖かい。

 そして私をどこまでも貴方は連れ出してくれる。ずっとさまようだけで、暗く闇しかない世界に貴方は光をくれた。


 とても綺麗だ。美しい。

 その言葉を聞くだけで、ドキドキする。私に言われているのではないかと錯覚してしまう。


 自惚れだ。

 愛されていると思いたい。愛されたいと願うからそう思いたい。


 いつから私は貴方を愛していたの。

 切なくて甘酸っぱい恋で、真実の愛。きっと私は貴方の為にこの世に生を受けた。


 私は恋に恋していなければ、私がもっと早く気付いていたら、私は貴方を見つめることが出来たのだろうかと思うときりがない。


 もうどうしようもない。

 全ては終わってしまった。


 でも、貴方はこんな姿になった私を見つけてくれました。ただの泡でしかない小さな私を見つけてくれました。


 見つけて、私を、一人ぼっちから救ってくれました。


 姿もわからない貴方が愛しくて仕方がなかったんです。

 私の声が貴方に届いたらどれほど幸せなのだろうかと、この想いが伝わったらいいのにとずっと思ってた。


 きっとこうなったから、貴方を私は愛せたのでしょう。色々なことがあったから、私は貴方を愛せたのです。


 私は貴方に語り掛ける声がありません。貴方に触れられる肉体がありません。だって、私は泡になってしまったから。


 自業自得ですね。

 でも、私はとても幸せです。


 私だけを見ている。

 私だけに語りかけてくれている。

 そう感じられるだけで、私の心は満たされる。


 王子様に恋した時には感じられなかったモノ。あの時に私が何もできなかったのは、彼に何の執着も独占欲もなかったからじゃないか。


 いいえなかった訳じゃない。

 だけど、そこまでする必要がなかった。


 簡単に諦めてしまえたのはそこまで好きではなかったから。人を殺してまで私は生きていたくなかったか、悲劇の主人公になるたかっただけ。


 王子様と結ばれなくて良かった。

 私は泡となり、貴方と過ごすこの時こそが、私の幸せ。


 貴方の名前も知らない。

 それでも私は貴方を愛することが出来る。それはとても幸せです。


 貴方の名前も姿も知らないけど、全てを失った私は貴方を愛することが出来て、心が満たされて、幸せなんです。



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