君を殺した夢を見た
自分のしたことに血の気が引いた。
どうして、こんなことになってしまったのかがわからない。
生暖かな紅が流れて、身体がだんだんと冷えていく。血の気が引いて、青ざめた白い肌。
私は氷雨様を愛しているのに、自分よりも大切で大事で…
それなのに、私は刺してしまったのだ。
悪夢。
まさにそうだ。
私は刺してしまった。
氷雨様を。
王子様を刺さなかったのに、氷雨様は刺してしまった。
心から貴方を愛していた。
そこに嘘偽りはない。ただ、あの時のように貴方まで失いたくなかった。
貴方には私だけに微笑みかけてもらいたい。私だけを見ていてほしい。そう思ったら姉様に渡された一振りの短剣が私の手にあり、刃は全て余すことなく氷雨様の身体など吸い込まれるように刺さっていた。
理解した時に声にならない悲鳴を上げた。
視界が暗くなった。
「き、さ…っ、砂姫っ!」
「うっ」
私の名前を呼ぶ声に誘われるままに起きる。ぼんやりとする目を開けようと努力して、心配そうに私を見る氷雨様と目が合う。
「魘されてた」
「…怖い夢を、見たんです」
「どんな?」
そうとても怖い夢。
だって、あれ。
それは、どんな夢だったのでしょう。
思い出そうと努力しても全く思い出せない。先程までは鮮明に覚えていたはずなのに、どうして。
「泣くな。俺がずっと傍にいる。怖い夢見ないように手を繋ごうか、砂姫」
「氷雨様」
どこかほっとした。
身体を起こし私を見下ろしていた氷雨様は毛布を被り直して横になると余計な空気が入らないからか暖かくなった。
大きく手が頬を添え指の長い手で私の涙を拭うからくすぐったくて自然に笑みが零れる。そっと比べると小さな私の手を差し出せば、長い指を絡ませ繋がれる。
悪い夢を見ないようにと腕枕までついた私には豪華な眠り。普段よりも寄り添うような形が恥ずかしいような気がするけど安心する。
海の香りがする。
ふと上を見上げれば漆黒の瞳と目が合う。柔らかな瞳が真っ直ぐと私を見つめる情熱的な眼差しに顔に熱が集まる。
「可愛い反応すんなよ」
柔らかな微笑みとは逆の獲物を狙うように鋭く変わった瞳に射抜かれる。
「もう少しで夜も明けるって言うのに」
「ひ、氷雨様っ」
「ふふ、我慢してやるから。早く寝ろ、砂姫」
チュッと額に唇を押し付け、胸元に抱き寄せられる。優しい氷雨様に頬が緩み、嬉しくて繋いだ手をギュッと握る。
きっと今度は良い夢が見られる。




